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■(6月29日) 「第1回 バイオ医薬EXPO」でバイオ医薬特許の講演をします。


6月29日(木)に、「第1回 バイオ医薬EXPO」で講演させていただくことになりました。
バイオ医薬EXPOのサイトは「http://www.biopharma-expo.jp/」です。

講演タイトルなどは下記の通りです。

■タイトル
バイオ医薬品の特許出願動向と最新の特許訴訟・無効審判・異議申立事例

■講演者
SK特許業務法人 徳重大輔

■講演内容
最近話題のバイオ医薬品をいくつか取り上げ、製品毎にどのような特許出願がされているかを解説する。さらに、ここ1~2年のバイオ医薬品の特許訴訟、無効審判、異議申立の事例を解説する。取り上げるバイオ医薬品としては、抗体医薬(抗PD-1抗体など)が半分以上で、残りは核酸医薬、iPS細胞などを予定している。

■日時等
・日時:2017年6月29日(木) 14:00-15:00
・会場:東京ビッグサイト
・受講料金:3000円

■サイト
バイオ医薬EXPOのセミナー一覧 
PDFデータ
申込みのページ


過去にバイオ医薬品特許のセミナーをしたことがあるのですが、そのときは明細書作成とか、OA応答とかの権利化実務に直結した内容でした。ただ、これだとバイオ医薬EXPOの趣旨とは合いにくいかなと思い、今回は特許の訴訟・無効審判・異議申立関係の内容をメインにしました。
資料はほぼ全てこれから作る予定です。訴訟や異議の件数の話ではなく、具体的な事例を挙げて、無効理由・論理構成などの具体的な内容に踏み込んだ話にしようと思っています。あと2ヶ月以上あるので、何とか時間を空けて資料を作ろうと思います。

バイオ医薬EXPOは、インターフェックスジャパン(http://www.interphex.jp/)やBIO tech 2017(http://www.bio-t.jp/)などの展示会と同日に開催されます。展示会への参加は無料です。セミナーは有料と無料があるようです。
各セミナー・基調講演への講師紹介割引もありますので、ご興味のある方はご連絡ください。

皆様のご参加を心よりお待ちしております。


▼関連ページ
(2月25日) バイオ医薬品特許のセミナーを開催します。


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■書籍「先端治療技術の実用化と開発戦略」に核酸医薬特許の論文が掲載されます。


今月末に、私が一部執筆を担当させていただいた書籍が発売されます。
タイトルなどは下記の通りです。

■書籍タイトル
先端治療技術の実用化と開発戦略
(核酸医薬、免疫療法、遺伝子治療、細胞医薬品)

■発売日等
発刊予定日:20174月末
体裁:A4判 約470
定価:80,000(税抜)
出版社:()技術情報協会

■サイト
出版社ホームページ
PDFデータ


執筆者は70人もいるそうです。
私が担当したのは核酸医薬の特許に関する部分です(第111節)。
担当部分の目次は下記の通りです。

 11節 核酸医薬品に関する特許実務上の留意点
 1.基本特許
 2.審査基準・審査ハンドブック
 3.核酸医薬特許の種類と実務上の留意点
  3-1. 基本構造限定型
  3-2. ターゲット限定型
  3-3. 製品配列限定型
 4.審査・拒絶対応事例


RNAi
関連特許の事例をいくつか紹介しつつ、出願、権利化する上での基本的事項と留意点について解説しています。
過去に知財管理誌で抗体医薬特許とiPS細胞特許の論文を書きましたが、今回はもう少し一般的な書籍なので、知財管理誌ほどは難しすぎず、かといって簡単すぎず、かつネットや過去の論文にない情報を入れるというイメージで書きました。
これを書いたのは昨年の3月だったので、約1年越しの発売となりました。無事発売されてよかったです。

このような機会を与えてくださった関係者の皆さまありがとうございました。


▼関連ページ
「知財管理」6月号にiPS細胞の製法特許の論文が掲載されました。
「知財管理」11月号に抗体特許の論文が掲載されました。



■最高裁 マキサカルシトール製法特許の「均等侵害」認め、中外製薬が勝訴


<判決紹介>

マキサカルシトール製法特許の均等侵害の最高裁判決がでました。 DKSHジャパンらの上告は棄却されました。 最高裁では均等の第5要件(特段の事情)のみ判断されました。

中外製薬のニュースリリースはこちらです。

オキサロール®軟膏の特許権侵害訴訟における最高裁判所判決勝訴のお知らせ
http://tyn-imarket.com/pdf/2017/3/24/140120170324426840.pdf

判決はこちらです。

▼平成28年(受)第1242号 特許権侵害行為差止請求事件
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/634/086634_hanrei.pdf

原審の知財高裁大合議は下記で紹介していました。

マキサカルシトール製法特許侵害訴訟、知財高裁大合議も均等と判断
http://biopatentblog.blog.fc2.com/blog-entry-159.html


■カゴメ 対 伊藤園のトマトジュース特許訴訟


カゴメ 伊藤園の訴訟を朝日新聞が報道し、ネットで話題になっています。

▼Yahooニュース
カゴメ、伊藤園を提訴 トマトジュース製法特許めぐり
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170302-00000088-asahi-soci

記事を読むに、経緯は下記のようです。

伊藤園のトマトジュースに関する特許が2013年に登録された。
カゴメが無効審判を請求した。
特許庁が有効審決をした。
カゴメが知財高裁へ審決取消訴訟を提起した。

特許番号は報道されていませんが、おそらく下記と思われます。


-------------------------------------------------------------------------------------
・特許5189667
・登録日:2013.2.1
・出願日:2011.4.20
・発明の名称:トマト含有飲料及びその製造方法、並びに、トマト含有飲料の酸味抑制方法

(登録時)
【請求項1
 
糖度7.013.0であり、糖酸比19.030.0であり、グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が、0.250.60重量%であることを特徴とする、
トマト含有飲料
【請求項8
 
少なくともトマトペースト(A)と透明トマト汁(B)を配合することにより、糖度が7.013.0及び糖酸比が19.030.0となるように、並びに、グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が0.250.60重量%となるように、前記糖度及び前記糖酸比並びに前記グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量を調整することを特徴とする、
トマト含有飲料の製造方法。
【請求項11
 
少なくともトマトペースト(A)と透明トマト汁(B)を配合することにより、糖度が7.013.0及び糖酸比が19.030.0となるように、並びに、グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が0.250.60重量%となるように、前記糖度及び前記糖酸比並びに前記グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量を調整することを特徴とする、
トマト含有飲料の酸味抑制方法。

(訂正後)
【請求項1
 糖度が9.410.0であり、糖酸比が19.030.0であり、グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が、0.360.42重量%であることを特徴とする、
トマト含有飲料。
【請求項8
 少なくともトマトペースト(A)と透明トマト汁(B)を配合することにより、糖度が9.410.0及び糖酸比が19.030.0となるように、並びに、グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が0.360.42重量%となるように、前記糖度及び前記糖酸比並びに前記グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量を調整することを特徴とする、
トマト含有飲料の製造方法。
【請求項11
 少なくともトマトペースト(A)と透明トマト汁(B)を配合することにより、糖度が9.410.0及び糖酸比が19.030.0となるように、並びに、グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量の合計が0.360.42重量%となるように、前記糖度及び前記糖酸比並びに前記グルタミン酸及びアスパラギン酸の含有量を調整することを特徴とする、
トマト含有飲料の酸味抑制方法。
-------------------------------------------------------------------------------------


本件特許の実施例には、12人のパネラーによる官能評価の結果が記載されています(評価は下の6行です)。

itouen_20170303.jpg

報道記事によると、

「カゴメ側は2日の弁論で「『濃厚な味わい』などの具体的な定義が不明で、裏付けるデータも少ない」と主張。伊藤園側は「トマトジュース市場に新たな分野を開拓した、意義がある発明だ」と反論した。」

そうです。
審決をざっと見た感じでは、実施可能要件/サポート要件違反の主張の中で濃厚な味わいを問題にしているようです。


話がずれますが、じつは私はトマトがあまり好きじゃないので、トマトジュースは基本飲みません。野菜ジュースはできればトマトっぽい味の無い(薄い)ものが好みです。
以前、野菜汁100%と書いてあるものをいくつか飲み比べてみたことがあるのですが、伊藤園の「1日分の野菜」がトマトっぽい味が薄くて飲みやすかったです。

itouen_yasai_20170303.jpg

と、トマト嫌いの偏った立場からみると、「濃厚な味わい」じゃない方がよいような気もします。むしろ参考例7の方が甘みがあっていいんじゃないかっていう。。。
ググってみたところ、「濃厚なトマトジュース」、「・・・のトマトジュースは濃厚です。」みたいな記事がたくさんヒットしました。どうやらトマトジュース業界では「濃厚」って推しキーワードのようです。
なるほど。



<3月22日追記>

下記のカゴメのニュースリリースによると、5/16発売予定だった野菜ジュースの発売が10/3に延期になったらしいです。
このタイミングなのでまさかと思って見てみましたが、理由は”現在、トマトジュースの需要が急拡大しており、商品供給能力を大幅に上回る受注に対して、十分な出荷ができない状況となっております。”とのこと。

http://www.kagome.co.jp/company/news/n_pdf/170322999.pdf




■「延長された特許権の効力」の知財高裁大合議判決

 
<判決紹介>
・平成28(ネ)10046号 特許権侵害差止請求控訴事件
・平成29120日判決言渡
・知的財産高等裁判所特別部 設樂隆一 清水節 髙部眞規子 鶴岡稔彦 寺田利彦
・控訴人:デビオファーム・インターナショナル・エス・アー
・被控訴人:東和薬品株式会社
・特許3547755


コメント:
新薬 vs ジェネリックの侵害訴訟。
延長された特許権の効力」についての知財高裁大合議判決です。

ヤクルト社(専用実施権者)は先発品のエルプラット点滴静注液50,100,200mg(一般名:オキサリプラチン)を販売しています。
東和薬品は後発品のオキサリプラチン点滴静注50,100,200mg「トーワ」を販売しています。

デビオファーム社は先発品をカバーする製剤特許3547755を有しています。
この製剤特許は、延長登録出願により、最長で2020/1/29まで存続期間が延長されています。
クレーム1は下記の通りです。

「【請求項1
濃度が1ないし5mg/ml
B  pH
4.5ないし6
オキサリプラティヌムの水溶液からなり
医薬的に許容される期間の貯蔵後,製剤中のオキサリプラティヌム含量が当初含量の少なくとも95%であり,
該水溶液が澄明,無色,沈殿不含有のままである,
腸管外経路投与用の
オキサリプラティヌムの医薬的に安定な製剤。」



一審(東京地裁)でデビオファーム社は、上記の延長された特許権の効力が東和薬品の後発品に及ぶと主張し、後発品の生産等の差止め及び廃棄を求めていました。それに対して、一審判決は、延長された特許権の効力は後発品に及ばないと判断していました。
一審判決は下記ページで紹介しています。

2016/4/20 平成27()12414号 特許権侵害差止請求事件

本件は、デビオファーム社が一審判決を不服として控訴した事案です。



本件で、知財高裁大合議は、後発品が、
本件処分の対象となった物と実質同一なものに含まれるということはできないと判断し、延長された特許権の効力は後発品に及ばないと判断しました。 控訴棄却。

さらに、そもそも後発品は本件特許発明の技術的範囲に属さないとも判断しました。技術的範囲に属さないということは、それだけ本件特許発明と後発品は別物であったということでも
あり、「実質同一か否か」の観点に関しては、今後、技術的範囲に属する場合の侵害訴訟が提起された場合には、もう一歩踏み込んだ判断が必要になると思います。
後発品メーカーの戦略として、製剤特許を取得しておいて、実質同一ではない根拠を作っておくっていうのも一考だと思います。



裁判所の判断は下記の通り。

「第4 当裁判所の判断
 当裁判所も,存続期間が延長された本件特許権の効力は,一審被告による一審被告各製品の生産等には及ばず,本件請求は理由がないものと判断する。
 その理由は,以下のとおりである。
1
68条の2に基づく延長された特許権の効力の及ぶ範囲について
・・・。

イ 上記アによれば,相手方が製造等する製品(以下「対象製品」という。)が,具体的な政令処分で定められた「成分,分量,用法,用量,効能及び効果」において異なる部分が存在する場合には,対象製品は,存続期間が延長された特許権の効力の及ぶ範囲に属するということはできない。しかしながら,政令処分で定められた上記審査事項を形式的に比較して全て一致しなければ特許権者による差止め等の権利行使を容易に免れることができるとすれば,政令処分を受けることが必要であったために特許発明の実施をすることができなかった期間を回復するという延長登録の制度趣旨に反するのみならず,衡平の理念にもとる結果になる。このような観点からすれば,存続期間が延長された特許権に係る特許発明の効力は,政令処分で定められた「成分,分量,用法,用量,効能及び効果」によって特定された「物」(医薬品)のみならず,これと医薬品として実質同一なものにも及ぶというべきであり,第三者はこれを予期すべきである(なお,法68条の2は,「物についての当該特許発明の実施以外の行為には,及ばない。」と規定しているけれども,同条における「物」についての「当該特許発明の実施」としては,「物」についての当該特許発明の文言どおりの実施と,これと実質同一の範囲での当該特許発明の実施のいずれをも含むものと解すべきである。)。
 したがって,政令処分で定められた上記構成中に対象製品と異なる部分が存する場合であっても,当該部分が僅かな差異又は全体的にみて形式的な差異にすぎないときは,対象製品は,医薬品として政令処分の対象となった物と実質同一なものに含まれ,存続期間が延長された特許権の効力の及ぶ範囲に属するものと解するのが相当である。

ウ そして,医薬品の成分を対象とする物の特許発明において,政令処分で定められた「成分」に関する差異,「分量」の数量的差異又は「用法,用量」の数量的差異のいずれか一つないし複数があり,他の差異が存在しない場合に限定してみれば,僅かな差異又は全体的にみて形式的な差異かどうかは,特許発明の内容(当該特許発明が,医薬品の有効成分のみを特徴とする発明であるのか,医薬品の有効成分の存在を前提として,その安定性ないし剤型等に関する発明であるのか,あるいは,その技術的特徴及び作用効果はどのような内容であるのかなどを含む。以下同じ。)に基づき,その内容との関連で,政令処分において定められた「成分,分量,用法,用量,効能及び効果」によって特定された「物」と対象製品との技術的特徴及び作用効果の同一性を比較検討して,当業者の技術常識を踏まえて判断すべきである。

 上記の限定した場合において,対象製品が政令処分で定められた「成分,分量,用法,用量,効能及び効果」によって特定された「物」と医薬品として実質同一なものに含まれる類型を挙げれば,次のとおりである。

 すなわち,
①医薬品の有効成分のみを特徴とする特許発明に関する延長登録された特許発明において,有効成分ではない「成分」に関して,対象製品が,政令処分申請時における周知・慣用技術に基づき,一部において異なる成分を付加,転換等しているような場合,

②公知の有効成分に係る医薬品の安定性ないし剤型等に関する特許発明において,対象製品が政令処分申請時における周知・慣用技術に基づき,一部において異なる成分を付加,転換等しているような場合で,特許発明の内容に照らして,両者の間で,その技術的特徴及び作用効果の同一性があると認められるとき,

③政令処分で特定された「分量」ないし「用法,用量」に関し,数量的に意味のない程度の差異しかない場合,

④政令処分で特定された「分量」は異なるけれども,「用法,用量」も併せてみれば,同一であると認められる場合(本件処分12,本件処分5ないし7がこれに該当する。)

は,これらの差異は上記にいう僅かな差異又は全体的にみて形式的な差異に当たり,対象製品は,医薬品として政令処分の対象となった物と実質同一なものに含まれるというべきである(なお,上記①,③及び④は,両者の間で,特許発明の技術的特徴及び作用効果の同一性が事実上推認される類型である。)。

 これに対し,前記の限定した場合を除く医薬品に関する「用法,用量,効能及び効果」における差異がある場合は,この限りでない。なぜなら,例えば,スプレー剤と注射剤のように,剤型が異なるために「用法,用量」に数量的差異以外の差異が生じる場合は,その具体的な差異の内容に応じて多角的な観点からの考察が必要であり,また,対象とする疾病が異なるために「効能,効果」が異なる場合は,疾病の類似性など医学的な観点からの考察が重要であると解されるからである。



エ 最高裁平成10224日第三小法廷判決・民集521113頁(ボールスプライン事件最判)は,・・・
 以上によれば,法68条の2の実質同一の範囲を定める場合には,前記の五つの要件を適用ないし類推適用することはできない。

オ ただし,一般的な禁反言(エストッペル)の考え方に基づけば,延長登録出願の手続において,延長登録された特許権の効力範囲から意識的に除外されたものに当たるなどの特段の事情がある場合には,法68条の2の実質同一が認められることはないと解される。
・・・。



2
本件についての検討
 以上に基づいて,延長登録された本件特許権の効力が一審被告各製品の生産等に及ぶか否かについて判断する。
・・・

 延長登録された本件特許権の効力は,本件各処分の「成分,分量,用法,用量,効能及び効果」によって特定された「物」についての「当該特許発明の実施」の範囲で及ぶところ,本件各処分の「成分」は,文言解釈上,いずれもオキサリプラチンと注射用水のみを含み,それ以外の成分を含まないものである。
 これに対し,一審被告各製品の「成分」は,いずれもオキサリプラチンと注射用水以外に,添加物としてオキサリプラチンと等量の濃グリセリンを含むものであり,その使用目的が安定剤であることは,前記第22(4)イのとおりである。

 そうすると,本件各処分の対象となった物と一審被告各製品とは,少なくとも,その「成分」において文言解釈上異なるものというほかなく,この点の差異が,僅かな差異又は全体的にみて形式的な差異であるとして,法68条の2の実質同一といえるのか否かを判断すべきことになる。
 この点,一審原告は,一審被告各製品がいずれもオキサリプラチンを唯一の有効成分としているから,本件各処分の対象となった物に当たる旨主張する。しかし,政令処分が医薬品医療機器等法所定の医薬品に係る承認である場合,当該政令処分を受けることが必要であったために実施することができなかった物を特定するための事項としての「成分」が有効成分に限られないことは,前示のとおりであって,採用できないというべきである。

(2)
一審被告各製品が本件各処分の対象となった物と実質同一なものに含まれるか否かについて
 一審被告各製品と本件各処分における「成分」における上記差異が,僅かな差異又は全体的にみて形式的な差異であり,実質同一の範囲内の差異か否かについては,本件発明の内容に基づき,その内容との関連で,本件各処分において定められた「成分,分量,用法,用量,効能及び効果」によって特定された「物」と対象製品との技術的特徴及び作用効果の同一性を比較検討して,当業者の技術常識を踏まえて,これを認定判断する必要がある
・・・。

 これによれば,本件発明においては,オキサリプラティヌム水溶液において,有効成分の濃度とpHを限定された範囲内に特定することと併せて,何らの添加剤も含まないことも,その技術的特徴の一つであるものと認められる。

 以上によれば,本件各処分と一審被告各製品とにおける「成分」に関する前記差異,すなわち,本件各処分の対象となった物がオキサリプラティヌムと注射用水のみからなる水溶液であるのに対し,一審被告各製品がこれにオキサリプラティヌムと等量の濃グリセリンを加えたものであるとの差異は,本件発明の上記の技術的特徴に照らし,僅かな差異であるとか,全体的にみて形式的な差異であるということはできず,したがって,一審被告各製品は,本件各処分の対象となった物と実質同一なものに含まれるということはできない。

ウ よって,一審被告各製品は,作用効果の同一性などその余の点について検討するまでもなく,本件各処分の対象となった「成分,分量,用法,用量,効能及び効果」によって特定された「物」についての本件発明の実施と実質同一なものとして,延長登録された本件特許権の効力範囲に属するということはできない。



(3)
技術的範囲の属否について
一審被告各製品が本件発明の技術的範囲に属するかについても判断する。
 本件発明の特許請求の範囲の記載の「オキサリプラティヌムの水溶液からなり」との構成要件Cは,オキサリプラティヌムと水のみからなる水溶液であるのか,オキサリプラティヌムと水からなる水溶液であれば足り,他の添加剤等の成分が含まれる場合も包含されるのかについて,特許請求の範囲の記載自体からは,いずれの解釈も可能である。そこで,構成要件Cについては,本件明細書の記載及び出願の経過を参酌して判断する。
・・・。

 以上によれば,本件発明の特許請求の範囲の記載の「オキサリプラティヌムの水溶液からなり」(構成要件C)との文言は,本件発明がオキサリプラティヌムと水のみからなる水溶液であって,他の添加剤等の成分を含まないことを意味するものと解さざるを得ない
 これに対し,一審被告各製品は,オキサリプラチンと注射用水のほか,有効成分以外の成分として,オキサリプラチンと等量の濃グリセリンを含有するものであるから,一審被告各製品は,その余の構成について検討するまでもなく,本件発明の技術的範囲に属さないものといわざるを得ない(なお,(1)及び(2)のとおり,本件においては,法68条の2の延長登録された特許権の効力範囲について
の判断が先行したが,これは本事案の経緯とその内容に鑑み,そのようになったにすぎず,通常は,まず,相手方の製品が特許発明の技術的範囲に属するかどうかを先に判断することも検討されるべきである。)。

(4) 
小括
 以上のとおりであるから,一審被告各製品に対し,延長登録された本件特許権の効力は及ばない。



3 当審における一審原告の追加的主張について,必要な限度で判断する。
(1) 一審原告は,延長登録された特許権の効力範囲における実質同一物等に当たるかどうかは,特許権の存続期間の延長登録の制度趣旨に基づいて検討すべきものである以上,問題とすべきは,「先発医薬品が処分を受けるために特許発明の実施ができなかったことにより得られた成果に全面的に依拠して,安全性の確保等法令で定めた試験等を自ら行うことなく,承認を得ているかどうか」であり,技術的範囲の通常の理解に照らして検討するのは誤りである,そして,一審被告各製品のように,添加剤を異にする後発医薬品であっても,先発医薬品が処分を受けるために特許発明の実施ができなかったことにより得られた安全性の確認等の成果に全面的に依拠して,自らは安全性の確保等に関して法令で定めた試験等を行うことなく,承認を得て製造,販売しているものであれば,当然に実質同一物等に該当すると解釈すべきである旨主張する(その論拠として,後発医薬品としての一審被告各製品の位置付けや,後発医薬品において使用される添加剤に関し厳格な規制が存することなどを挙げる。)。 

 しかしながら,一審原告の主張は,要するに,医薬品の承認制度の面から,後発医薬品として承認されたものは全て実質同一物等に当たる(先発医薬品に係る特許発明の効力が及ぶ)と断じるに等しく,法68条の2の制度趣旨や解釈論を無視するものであって,採用することはできない。・・・。 

 しかるに,一審原告の主張は,当該特許発明の内容に関わらず,いわば医薬品としての有効成分や治療効果のみに着目して延長された特許権の効力範囲を論ずるものであり,これは前記のとおりの法68条の2の制度趣旨や解釈論に反することが明らかであって,採用することはできないというべきである。」


■本願と先行文献の患者が重複しているから新規性なしとの判断が否定された事例


<判決紹介>
・平成27年(ケ)第10241号 審決取消請求事件
・平成281128日判決言渡
・知的財産高等裁判所第2部 清水節 中村恭 森岡礼子
・原告:旭化成ファーマ株式会社
・被告:特許庁長官
・特願2011-530844


■コメント
特願2011-530844の拒絶査定に対する不服審判請求を不成立とした審決の取消訴訟です。争点は、新規性・進歩性の有無です。
裁判所は、審決がした新規性欠如の判断には誤りがあるが、進歩性欠如の判断には誤りがないと判断しました(請求棄却)。

本願の請求項1は下記の通りです。

「【請求項1】
1回当たり200単位のPTH1-34又はその塩が週1回投与されることを特徴とする,PTH1-34)又はその塩を有効成分として含有する,骨折抑制のための骨粗鬆症治療ないし予防剤であって,下記(1)~(3)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者に投与されることを特徴とする,骨折抑制のための骨粗鬆症治療ないし予防剤;
1)年齢が65歳以上である
2)既存の骨折がある
3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である,および/または,骨萎縮度が萎縮度I度以上である。」


審決は、本願と甲1の一致点、相違点、新規性(無し)について以下のように判断しました。

3 審決の理由の要旨
1) 引用発明の認定
1(オステオポロシス・インターナショナル(Osteoporosis International),199994p.296-306)には,次の発明(引用発明)が記載されていると認められる。
hPTH1-34)の200単位を毎週皮下注射する,hPTH1-34)を有効成分として含有する骨粗鬆症治療剤であって,厚生労働省による委員会が提唱した診断基準で骨粗鬆症と定義された,年齢範囲が45から95歳の被検者のうち,複数の因子をスコア化することによって評価して骨粗鬆症を定義し,スコアの合計が4以上の場合の患者に投与される,骨粗鬆症治療剤。」

2) 本願発明と引用発明との一致点及び相違点
ア 一致点
1回当たり200単位のPTH1-34)又はその塩が週1回投与されることを特徴とする,PTH1-34)又はその塩を有効成分として含有する,骨粗鬆症治療ないし予防剤であって,特定の骨粗鬆症患者に投与されることを特徴とする,骨粗鬆症治療ないし予防剤。」
イ 相違点
(ア) 相違点1
「特定の骨粗鬆症患者」が,引用発明では,「厚生労働省による委員会が提唱した診断基準で骨粗鬆症と定義された,年齢範囲が45から95歳の被検者のうち,複数の因子をスコア化することによって評価して骨粗鬆症を定義し,スコアの合計が4以上の場合の患者」であるのに対し,本願発明では「下記(1)~(3)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者
1)年齢が65歳以上である
2)既存の骨折がある
3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である,および/または,骨萎縮度が萎縮度I度以上である。」である点。
(イ) 相違点2
「骨粗鬆症治療ないし予防剤」について,本願発明では,さらに,「骨折抑制のための」という事項が追加されている点。

3) 判断
ア 新規性について
本願発明と引用発明の間に相違点は見出せない
(ア) 相違点1について
 
引用発明の骨粗鬆症治療剤の投与対象となったH群の被検者の72人中に,本願発明にいう「下記(1)~(3)の全ての条件を満たす骨粗鬆症患者
1)年齢が65歳以上である
2)既存の骨折がある
3)骨密度が若年成人平均値の80%未満である,および/または,骨萎縮度が萎縮度I度以上である。」が,少なからず存在する蓋然性が高い。
この点で,両者は重複しているとするのが相当である
(イ) 相違点2について
骨粗鬆症とは,「骨量が減少し,緻密である骨の構造が変化するため,骨が脆くなり骨折しやすくなった病態」で,「骨密度測定を行い,骨量減少の程度を把握する。治療後も定期的に測定し,効果を判定する」疾患として,本願優先日前から周知の疾患である。してみると,骨粗鬆症治療剤が,骨を強くし,骨折しにくくするための治療剤であることは,本願優先日当時,当業者にとって自明の事柄であったといえるし,引用発明の骨粗鬆症治療剤のように,骨密度の有意な増加が見られたとされる骨粗鬆症治療剤においてはなおのこと,骨折しにくくするための治療剤であることは,自明の事柄であったといえる。
してみれば,引用発明にいう「骨粗鬆症治療剤」と本願発明にいう「骨折抑制のための骨粗鬆症治療ないし予防剤」の間に,実質的な差異はない。また,引用発明の骨粗鬆症治療剤の投与対象となったH群の被検者では椎体骨折が発生しなかったのであるから,この点からも,両者の間に実質的な差異はない。」


さらに、原告の主張に対して、被告は以下のように反論しました。

2 取消事由2について
本願発明の「1回当たり200単位」で「週1回投与」という用法・用量は,甲1に記載されたH群の用法・用量そのものであり,本願発明において刷新されたものではない。
1に記載の患者が3条件充足患者として表現されていなくても,3条件充足患者に該当する患者がH群の患者の中に少しでも存在するといえれば,相違点1における本願発明の新規性は否定される。
そして,H群の被検者72人中ほぼ4349人の被験者が,3条件充足患者であるから,本願発明の新規性は否定される。
すなわち,H群の被験者72人中71人が3条件充足患者の条件(3)を満たす。H群の中で骨折を有する被験者は4349人であるが,その大半は,実際には65歳以上の高齢者である。なぜなら,高齢者ほど骨粗鬆症の病歴が長くなり,病歴が長くなれば,骨折する機会が増えるのは自明の理であるからであり,また,骨粗鬆症は,骨密度の低下と骨質の劣化により骨強度が低下する疾患であるところ,加齢や閉経に伴い骨密度は低下し,骨強度は,骨密度と骨質により規定されるため,そのどちらが低下しても骨強度は低下し,骨折リスクは高まるとされるものだからである。そうすると,結局,H群の被験者72人中ほぼ4349人の被験者が,3条件充足患者であると解するほかはない。
したがって,本願発明の患者と引用発明の患者は重複しており,相違しないというほかなく,審決における相違点1の判断に誤りはない。」


これに対して裁判所は、以下の通り、審決の新規性判断に誤りがあると判断しました。

3 取消事由2について
審決は,前記第232)イ(ア),同(3)ア(ア)のとおり,相違点1について,引用発明でいう「厚生労働省(裁判所注:厚生省の誤記と認める。)による委員会が提唱した診断基準で骨粗鬆症と定義された,年齢範囲が45から95歳の被検者のうち,複数の因子をスコア化することによって評価して骨粗鬆症を定義し,スコアの合計が4以上の場合の患者」の中には,本願発明にいう「下記(1)~(3)の全ての条件」を満たす骨粗鬆症患者が少なからず存在する蓋然性が高い点で,両者は重複しているとするのが相当であるとし,本願発明と引用発明の間に相違点は見出せないと判断する。
しかしながら,前記の引用発明の患者,すなわち,甲1H群の患者中に,前記の本願発明にいう患者が少なからず存在する蓋然性があるとしても,前記21)認定の甲1の記載事項から,H群の患者中,前記の本願発明の患者とそれ以外の患者を識別し,前記の本願発明の患者のみを取り出して甲1200単位の投与の結果のみを読み取ることはできない。
確かに,前記の甲1H群の患者中に前記の本願発明にいう患者が全て含まれていれば,論理的には,甲1発明は,部分的には,本願発明と一致する(本願発明を全て含む。)ことになるが,前記のとおり,1に,前記の本願発明の患者を識別するに足りる記載がなく,前記の本願発明にいう患者のみを取り出して甲1200
単位の投与の結果のみを読み取ることができず,そのため,甲1のH群の患者中,前記の本願発明にいう患者のみの甲1200単位の投与の結果から,本願発明と同じ内容の発明の認定ができるか否かは,定かではない以上,相違点1において,甲1発明と本願発明とが同じ内容の発明である(本願発明が甲1発明に含まれる。)ということはできない。したがって,相違点1に係る新規性についての審決の判断には誤りがあり,原告が主張する取消事由2には理由がある。
ただし,審決は,本願発明の進歩性についても判断しており,本願発明が甲1発明に対して新規性を有していたとしても,進歩性を有していなければ,結局のところ,本願発明は特許を受けることができないという審決の結論に誤りはないことになるから,後記のとおり,進歩性判断を検討する。」


なお、以下の通り、裁判所は進歩性欠如の判断については誤りがないと判断しました。

取消事由5について
・・・以上によれば,本願発明は,骨粗鬆症患者のうち,より重篤な病態で,骨折のリスクがより増大している者を対象に,甲1と同じ用量・頻度で同じ薬剤を投与するものであり,その対象者の各条件が,それぞれ各条件を満たす者の群と満たさない者の群とにおける投与結果を比較して,投薬の有効性を分析した結果,定められた条件であるといえないのであって,結局,甲1発明に基づいて,甲1200単位投与の対象者を,本願発明の対象者とすることにつき,当業者の格別の創意を要したものとはいえない。」
・・・
3) まとめ
以上によれば,本願発明は,当業者が甲1発明に基づいて容易に発明をすることができたものといえるのであって,この点に係る審決の判断に誤りはない。

取消事由4について
1  効果の顕著性について
・・・この点,前記51)エのとおり,本願明細書(甲3)記載の実施例1及び2においては,いずれも前記(1)~(3)の全ての条件を満たす原発性骨粗鬆症患者の群と,前記各条件のいずれか又は全てを満たさない原発性骨粗鬆症患者の群とを投与対象とした場合の比較の結果は記載されていない。また,本願明細書のその余の記載中にも,前記結果は記載されていない。
・・・そうすると,甲1には,甲 1 200単位投与につき,骨折抑制効果があることを直接認めるに足りる記載がなく,本願明細書には,これを直接認め得る記載があるとしても,その効果が,前記(1)~(3)の全ての条件を満たす原発性骨粗鬆症患者に限って生じ,前記各条件のいずれか又は全てを満たさない原発性骨粗鬆症患者には生じないことを,本願明細書から読み取ることはできないのであって,本願明細書から,甲1発明に対する本願発明の奏する効果の顕著性を認めることはできない。
・・・
2  原告の主張について
・・・しかしながら,進歩性を検討するに当たり,効果の顕著性は,公知の引用発明とされた甲1発明との対比において検討されるべきことは,前記(1)アのとおりであって,プラセボ群との対比における効果を,進歩性を検討するに当たっての顕著な効果とみることはできない。
・・・

6 結論
・・・そすると,審決は,進歩性を否定した点において誤っておらず,取消事由2には理由があり,また,同3のうち相違点2に係る部分にも理由があるとしても,審決の「本件審判の請求は,成り立たない。」との結論に影響を及ぼすものではないから,原告の請求は棄却すべきものといえる。」


■ラロキシフェン用途特許(骨粗鬆症治療)の無効審決が維持された事例


<判決紹介>
・平成27()10166号 審決取消請求事件
・平成281116日判決言渡
・知的財産高等裁判所第2部 清水節 片岡早苗 古庄研
・原告:イーライ・リリー・アンド・カンパニー
・被告:沢井製薬株式会社
・特許2749247


■コメント
新薬 vs ジェネリックの無効審決の取消訴訟。
無効審決は維持されました。

特許2749247の訂正請求項1は下記の通りです(下線は訂正箇所)。

「【請求項1】
ラロキシフェンまたはその薬学上許容し得る塩を活性成分として含む,ヒトの骨粗鬆症の治療または予防用医薬製剤であって,タモキシフェンより子宮癌のリスクの低い医薬製剤。

1に、高齢卵巣切除ラットにラロキシフェンを投与した結果、灰密度の低下遅延が起きたことなどが記載されており、そのラットの結果がヒトに適用できると当業者が考えるか(ヒトでの骨粗鬆症治療効果を予測できたか)、などの点が争点となりました。

この点に関して、裁判所は、
「・・・甲1実験系には,ヒトの閉経後骨粗鬆症動物モデルを用いた実験として,不適切な点は見出せず,甲1実験系によって得られた「ラロキシフェンは卵巣切除による灰密度の低下を有意に遅らせた」との知見を,ヒトの骨粗鬆症にも応用できるとする十分な根拠があるということができる。」
と判断しました。

なお、原告は先発品のエビスタ錠60mgを販売しています。有効性分はラロキシフェン塩酸塩、効能・効果は閉経後骨粗鬆症です。
被告は後発品のラロキシフェン塩酸塩錠60mg「サワイ」を販売しています。有効性分、効能・効果は先発品と同じです。
一連の流れは以下の通りです。

1998.02.20: 特許2749247が登録(ラロキシフェンの骨粗鬆症治療用途)
2004.05.12: 原告がエビスタ錠60mgを発売
2013.07.29: 被告が無効審判を請求
2014.10.27: 原告が訂正請求
2015.04.15: 無効審決
2015.08.20: 原告が審決取消訴訟を提起
2015.12.11: 被告がラロキシフェン塩酸塩錠60mg「サワイ」を発売
2016.11.16: 請求棄却 ← 今回


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