■周知技術

■L-アスコルビン酸とグルコサミンが共に美白剤として知られているからといって、それだけでL-アスコルビン酸をグルコサミンで置き換えることが容易とはいえない/平成24年(行ケ)第10005号審決取消請求事件


平成24924日判決言渡
原告: 帝國製薬株式会社
被告: 特許庁長官
本願: 特願2001-317930
請求項1: 少なくとも水溶性高分子化合物2~30重量部,水20~80重量部,架橋剤0.01~5重量部,およびpH調整剤0.5~10重量部を必須成分とする架橋型含水ゲルに,有効成分としてグルコサミンを配合するとともに,
前記架橋型含水ゲルのpHを5以下とし,
前記水溶性高分子化合物がポリアクリル酸および/またはその塩類とそれ以外に他の高分子化合物を併用するものであり,かつ,ポリアクリル酸および/またはその塩類と他の水溶性高分子化合物との配合比が,ポリアクリル酸および/またはその塩類を1としたときに0.1~3である,
ことを特徴とするグルコサミン含有パップ剤。

コメント: 引用発明Aの「L-アスコルビン酸」を「グルコサミン」で置き換えることが容易かどうかが判断された例。 裁判所の判断はNO。  拒絶審決取消。 ☆


  審決の理由の要点

(2)  本願発明と引用発明Aとの間には,次のとおりの一致点,相違点がある。

【相違点1】

本願発明における有効成分は,「グルコサミン」であるのに対し,引用発明Aにおける有効成分は,美白作用として機能するL-アスコルビン酸である点。
【相違点2】
本願発明における架橋型含水ゲルのpHは,「5以下」であるのに対し,引用発明Aでは,pHが5.5である点。

(3) 相違点等に関する審決の判断
ア 相違点1について
特開平11-246339号公報(引用例B,甲2)には,美白用皮膚外用剤に関して,グルコサミンはL-アスコルビン酸と同様に美白作用剤として機能することと,グルコサミン及びL-アスコルビン酸はともに美白剤として従来から公知のものであることが記載されている。
し たがって,引用発明Aについて,美白作用成分として,L-アスコルビン酸のみならず,L-アスコルビン酸と同様に美白作用効果を発揮し,また,L-アスコ ルビン酸とともに美白剤として従来から公知でもあるグルコサミンを使用してみることは,当業者が容易になし得ることである。

原告: 「本件出願当時,グルコサミンをパップ剤等の貼付剤として製剤化するに当たっては,グルコサミンを基剤中に添加すると基剤の顕著な変色を引き起こしてしま うという問題や,含有されたグルコサミンの安定性が悪いという問題があり,グルコサミンを添加した,安定で,変色を起こさない貼付剤は,製品化できていな い状況であった。そこで,本願発明は,そのような課題を解決するため,各種の検討を行った結果,基剤として,水溶性高分子化合物,水,架橋剤及びpH調整 剤を必須成分とし,それらの配合量,水溶性高分子化合物の種類と配合比,ゲルのpHが,それぞれ特定の範囲にある架橋型含水ゲルを用いることとしたもので ある。
これに対し,引用例Aは,L-アスコルビン酸を有効成分とするものであって,グルコサミンを有効成分とする場合の問題点,すなわち,本願発明の課題や効果は記載も示唆もされていない。」


被告: 「2  取消事由2に対し特開昭57-185297号公報(乙8),特開平10-87683号公報(乙9),特開平11-92385号公報(甲19)の記載によれ ば,「グルコサミンの安定性が悪いこと」及び「グルコサミンは,それに起因する顕著な変色を引き起こしてしまうこと」は周知であるし,乙8公報及び乙9公 報の記載によれば,本件出願時において,安定し,変色を起こさないグルコサミンは製造されていた。そして,後記3で主張するように,有効成分に応じて,経 時的な変色を含む有効成分の安定性をも考慮しつつ,至適pHを設定することが技術常識であることを考慮すれば,パップ剤等の貼付剤として製剤化するに当 たって上記のグルコサミンを基剤中に添加した場合に,安定し,変色を起こさずに製剤化し得ることは明らかである。
また,特開平5-186324 号 公報(乙1),特開2001-278774号公報(乙2),特開平8-231343号公報(乙3)において,グルコサミンは,アスコルビン酸とともに代表 的な美白剤として言及され,周知であるから,グルコサミン単独で美白効果が認められることは当然である。」

裁判所: 「(2)  上記の認定によれば,引用発明Aは,有効成分としてビタミンC又はその誘導体を用いる場合に特有の問題点を解決するために,そのような目的に適する架橋剤を限定したものであって,特定の有効成分と架橋剤の組み合わせに特徴があるパップ剤である。そして,引 用例B(特開平11-246339号公報,甲2)に,グルコサミンとビタミンC(L-アスコルビン酸)はともに代表的な美白剤として従来から知られている ことが開示されているとしても,グルコサミンは,ビタミンCと化学構造等の理化学的性質が類似するわけではないから,パップ剤中での金属架橋剤との相互作 用が同様であるとは考えられない。
したがって,ともに美白剤として知られているというだけで,当業者にとって,引用発明Aの有効成分であるビタミンC又は誘導体をグルコサミンに変更することが容易に想到し得るとはいえず,取消事由2は理由がある。



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■貼付剤用支持体およびそれを用いた外用貼付剤: 平成23年(行ケ)第10143号審決取消請求事件


平成24年1月18日 知的財産高等裁判所
原告 帝國製薬株式会社
被告 特許庁長官
請求項1 剥離フィルム,薬物含有層,支持体からなる外用貼付剤において,支持体が,ポリエステル繊維を主体とし,それに低融点繊維を3~20%混紡した伸縮性を有する不織布であり,該不織布にエンボス加工により文字を刻印したことを特徴とする外用貼付剤。

コメント: ①引例に適用された周知例は、特異的な例なので、周知技術であると認定できない、と原告は主張したが認められなかった例。 拒絶審決維持。 ☆

審決: 引用例に周知例1、2を適用することで進歩性を否定。
原告: 「周知例1と2により開示されている技術的知見は,各発明が目的とする特異的な発明の効果を発揮するための支持体として,特異的な性質を有するポリエステル繊維の主体に低融点繊維を混紡させたものであって,これを一般的な外用貼付剤の支持体に関する周知技術であると認定することはできない。」
裁判所: 「周知例1及び2は,いずれも本願発明と同様の技術分野に属するものであるところ,その解決すべき課題については本願発明,周知例1及び2のいずれも異なるものではあるが,周知例1及び2により開示されている不織布の低融点繊維の混紡量に係る技術的知見については,外用貼付剤における一般的な知見ということができるものであって,周知例1及び2が解決すべき課題に特有の知見であるということはできない。」

②審決の一致点・相違点の認定に誤りがあっても、審決の結論(進歩性欠如)は覆らなかった例。

裁判所: 「本件審決には,原告主張相違点2の構成についても引用例に記載された発明の構成として認定した点に誤りがあるものの,当該構成については,当業者が容易に想到し得るものであるということができる。 したがって,本件審決の一致点及び相違点の認定についての誤りは,本件審決の結論に影響を及ぼすものということはできない。」

なお、前回のブログ記事では、審決の「引例発明の認定」に誤りがあるという原告の主張が認められた結果、審決の結論(進歩性欠如)が覆った例を紹介した。

■臭気中和化および液体吸収性廃棄物袋: 平成22年(行ケ)第10351号審決取消請求事件


コメント: 引例に周知技術を適用する場合でも、理由が大事ということを判示した例。 ☆☆

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徳重大輔


Author: 徳重大輔

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