■サポート要件

■<知財高裁/セレコキシブ特許の審取訴訟> 数値範囲全体にわたり、セレコキシブの生物学的利用能が改善されると認識できないとして、サポート要件違反と判断された事例


<判決紹介>

・平成30年(行ケ)第10110号 審決取消請求事件(第1事件)

・同年(行ケ)第10112号 審決取消請求事件(第2事件)

・同年(行ケ)第10155号 審決取消請求事件(第3事件)

・令和元年1114日判決言渡 

・知的財産高等裁判所第4部 大鷹一郎 古河謙一 岡山忠広

・原告:東和薬品株式会社

・原告:日本ケミファ株式会社

・原告:ヘキサル・アクチェンゲゼルシャフト

・被告:ジー.ディー.サール,リミテッド,ライアビリティ,カンパニー

・特許3563036

・発明の名称:セレコキシブ組成物

 

 

コメント

セレコキシブに関する特許の、無効審判の審決取消訴訟の紹介です。

後発品メーカー vs 新薬メーカーです。

 

経緯は以下のとおりです。

 

・平成101130日:ジー.ディー.が基礎出願

・平成16611日:特許登録(特許3563036

・平成28930日:東和薬品が無効審判請求(無効2016-800112

・後日:日本ケミファ等が請求人側へ参加

・平成3057日:訂正

・平成30626日:有効審決(請求項1~57~19

・平成3082日:東和薬品が審決取消訴訟提起

・後日:日本ケミファとヘキサルが審決取消訴訟提起

・令和元年1114日:判決いまココ

 

 

先発品はセレコックス錠100mg200mg(一般名:セレコキシブ)で、現時点で後発品はありません。

 

本件特許の請求項1は以下の通りです。

 

「【請求項1】(訂正)

一つ以上の薬剤的に許容な賦形剤と密に混合させた10mg乃至1000mgの量の微粒子セレコキシブを含み,一つ以上の個別な固体の経口運搬可能な投与量単位を含む製薬組成物であって,粒子の最大長において,セレコキシブ粒子のD90200μm未満である粒子サイズの分布を有する製薬組成物。」

 

 

原告が主張した無効理由は、明確性、実施可能要件、サポート要件、新規性欠如、進歩性欠如です。

 

今回裁判所は、サポート要件のみ判断しました。

裁判所は、

「本件発明1に含まれる「粒子の最大長において,セレコキシブ粒子のD90200μm未満」の数値範囲の全体にわたり本件発明1の課題を解決できると認識できるものと認められないから,本件発明1は,サポート要件に適合するものと認めることはできない。

と判断しました。

 

詳細は以下の通りです。

 

 

判決------------------------------------------------------------------------------------

当裁判所の判断

本件明細書の記載事項について

・・・

(2)前記(1)の記載事項によれば,本件明細書には,本件発明1に関し,次のような開示があることが認められる。

ア シクロオキシゲナーゼ-2の阻害剤であるセレコキシブは,水溶性媒体には異常なほど溶解せず,例えば,未調合のセレコキシブがカプセル状態で経口投与された場合,胃腸管で急速に吸収されるために,容易には溶解せず,分解もしない,また,長く凝集した針を形成する傾向のある結晶形態を有する未調合のセレコキシブは,通常,錠剤成形ダイでの圧縮の際に,融合して一枚岩の塊になり,セレコキシブの結晶は,他の物質とブレンドさせたときでも,他の物質と分離する傾向があり,組成物の混合中にセレコキシブ同士で凝集し,セレコキシブの不必要な大きな塊を含有する非均一なブレンド組成物となり,所望のブレンド均一性を有するセレコキシブ含有の製薬成分を調製することは難しいなどの問題があったため,従来,未調合のセレコキシブに対して,生物学的利用能などが改善された経口運搬可能なセレコキシブの調合の必要性が存在し,未調合セレコキシブで可能であるよりも,急速に効き目のある薬物速度論を示す調合を提供することは,特に有益であった(【0003】,【0006】,【0008】,【0009】)。

 

イ 「本発明」は,一つ又はそれ以上の経口運搬可能な投与量単位を含む製薬組成物であって,各単位量は,一つ又はそれ以上の製薬的に許容な賦形剤と密に混合した約10mgから約1000mgの量の微粒子セレコキシブを含み,粒子の最長の大きさで,D90が約200μm以下であるように(サンプル粒子の90%はD90値よりも小さい),セレコキシブ一次粒子サイズの分布を有する構成を有するものである(【0011】,【0013】)。

 

本件出願の優先日当時の技術常識又は周知技術について

・・・

2)前記(1)の記載事項を総合すると,本件優先日当時,①粉砕によって薬物の粒子径を小さくし,比表面積(有効表面積)を増大させることにより,薬物の溶出が改善されるが,他方で,難溶性薬物については,溶媒による濡れ性が劣る場合には,粒子径を小さくすると凝集が起こりやすくなり,有効表面積が小さくなる結果,溶解速度が遅くなることがあり,また,粒子を微小化することにより粉体の流動性が悪くなり凝集が起こりやすくなることがあること,②疎水性の難溶性物質であっても,界面活性剤が存在すると,微粒子は凝集せずに均一に溶液中に分散され,粒子サイズが小さいほど溶出速度は大きくなることは,周知又は技術常識であったものと認められる。

 

取消理由4(サポート要件の判断の誤り)について

原告らは,本件明細書の詳細な説明の記載及び本件優先日当時の技術常識から,本件発明1の「粒子の最大長において,セレコキシブ粒子のD90200μm未満」という数値範囲の全体にわたり,当業者が本件発明1の課題を解決できると認識できるものではないから,本件発明1は,サポート要件に適合せず,また,本件発明2ないし57ないし9も,同様に,サポート要件に適合しないから,本件発明15719は,サポート要件に適合するとした本件審決の判断は誤りである旨主張するので,以下において判断する。

 

1)本件発明1のサポート要件の適合性について

  特許法3661号は,特許請求の範囲の記載に際し,発明の詳細な説明に記載した発明の範囲を超えて記載してはならない旨を規定したものであり,その趣旨は,発明の詳細な説明に記載していない発明について特許請求の範囲に記載することになれば,公開されていない発明について独占的,排他的な権利を請求することになって妥当でないため,これを防止することにあるものと解される。

そうすると,所定の数値範囲を発明特定事項に含む発明について,特許請求の範囲の記載が同号所定の要件(サポート要件)に適合するか否かは,当業者が,発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識から,当該発明に含まれる数値範囲の全体にわたり当該発明の課題を解決することができると認識できるか否かを検討して判断すべきものと解するのが相当である。これを本件発明1についてみると,本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)の記載によれば,本件発明1は,「一つ以上の薬剤的に許容な賦形剤と密に混合させた10mg乃至1000mgの量の微粒子セレコキシブ」を含む「固体の経口運搬可能な投与量単位を含む製薬組成物」に関する発明であって,「粒子の最大長において,セレコキシブ粒子のD90200μm未満である粒子サイズの分布を有する」ことを特徴とするものであるから,所定の数値範囲を発明特定事項に含む発明であるといえる。そして,前記12)の本件明細書の開示事項によれば,本件発明1は,未調合のセレコキシブに対して生物学的利用能が改善された固体の経口運搬可能なセレコキシブ粒子を含む製薬組成物を提供することを課題とするものであると認められる。

 

イ(ア)本件明細書の発明の詳細な説明には,セレコキシブの生物学的利用能に関し,「発明の組成物は,粒子の最長の大きさで,粒子のD90が約200μm以下,好ましくは約100μm以下,より好ましくは75μm以下,さらに好ましくは約40μm以下,最も好ましくは約25μm以下であるように,セレコキシブの粒子分布を有する。通常,本発明の上記実施例によるセレコキシブの粒子サイズの減少により,セレコキシブの生物学的利用能が改良される。」(【0022】),「カプセル若しくは錠剤の形で経口投与されると,セレコキシブ粒子サイズの減少により,セレコキシブの生物学的利用能が改善されるを発見した。したがって,セレコキシブのD90粒子サイズは約200μm以下,好ましくは約100μm以下,より好ましくは約75μm以下,さらに好ましくは約40μm以下,最も好ましくは25μm以下である。例えば,例11に例示するように,出発材料のセレコキシブのD90粒子サイズを約60μmから約30μmに減少させると,組成物の生物学的利用能は非常に改善される。加えて又はあるいは,セレコキシブは約1μmから約10μmであり,好ましくは約5μmから約7μmの範囲の平均粒子サイズを有する。」(【0124】),「湿式顆粒化過程にて,(必要ならば,一つ又はそれ以上のキャリア材料とともに)セレコキシブは先ず粉砕される若しくは所望の粒子サイズに微細化される。さまざまな粉砕器若しくは破砕器が利用することが可能であるが,セレコキシブのピンミリングのような衝撃粉砕により,他のタイプの粉砕と比較して,最終組成物に改善されたブレンド均一性がもたらせる。例えば,液体窒素を利用してセレコキシブを冷却することは,セレコキシブを不必要な温度へ加熱させることを回避するために,粉砕中に必要なことである。前記にて議論したように,上記粉砕工程中にD90粒子サイズを約200μm以下,好ましくは約100μm以下,より好ましくは約75μm以下,さらに好ましくは約40μm以下,最も好ましくは約25μm以下に小さくすることは,セレコキシブの生物学的利用能を増加させるためには重要である。」(【0135】)との記載がある。これらの記載は,未調合のセレコキシブを粉砕し,「セレコキシブのD90粒子サイズが約200μm以下」とした場合には,セレコキシブの生物学的利用能が改善されること,セレコキシブのピンミリングのような衝撃粉砕により,他のタイプの粉砕と比較して,最終組成物に改善されたブレンド均一性がもたらせることを示したものといえる。

 

一方で,①本件発明1の特許請求の範囲(請求項1)には,「粒子の最大長において,セレコキシブ粒子のD90200μm未満である粒子サイズの分布を有する」構成とする具体的な方法を規定した記載はなく,本件発明1の「微粒子セレコキシブ」が「ピンミリングのような衝撃粉砕」により粉砕されたものに限定する旨の記載もないこと,かえって,本件明細書の【0135】には,セレコキシブの微細化に関し,「さまざなま粉砕器若しくは破砕器が利用することが可能である」との記載があること,②本件明細書の【0008】には「セレコキシブは,水溶性媒体には異常なほど溶解しない。例えば,カプセル形態で経口投与させた場合,未調合のセレコキシブは胃腸管にて急速に吸収されるために,容易には溶解せず,分散もしない。加えて,長く凝集した針を形成する傾向を有する結晶形態を有する未調合のセレコシブは,通常,錠剤成形ダイでの圧縮の際に,融合して一枚岩の塊になる。他の物質とブレンドさせたときでも,セレコキシブの結晶は,他の物質から分離する傾向があり,組成物の混合中にセレコキシブ同士で凝集し,セレコキシブの不必要な大きな塊を含有する,非均一なブレンド組成物になる。」との記載があること,③本件優先日当時,粉砕によって薬物の粒子径を小さくし,比表面積(有効表面積)を増大させることにより,薬物の溶出が改善されるが,他方で,難溶性薬物については,溶媒による濡れ性が劣る場合には,粒子径を小さくすると凝集が起こりやすくなり,有効表面積が小さくなる結果,溶解速度が遅くなることがあり,また,粒子を微小化することにより粉体の流動性が悪くなり凝集が起こりやすくなることがあることは周知又は技術常識であったことに照らすと,難溶性薬物であるセレコキシブについて,「セレコキシブのD90粒子サイズが約200μm以下」の構成とすることにより,セレコキシブの生物学的利用能が改善されることを直ちに理解することはできない。

 

また,本件明細書の記載を全体としてみても,粒子の最大長におけるセレコキシブ粒子の「D90」の値を用いて粒子サイズの分布を規定することの技術的意義や「D90」の値と生物学的利用能との関係について具体的に説明した記載はない。

しかるところ,「D90」は,粒子の累積個数が90%に達したときの粒子径の値をいうものであり,本件発明1の「D90200μm未満である」とは,200μm以上の粒子の割合が10%を超えないように限定することを意味するものであるが,難溶性薬物の原薬の粒子径分布は,化合物によって様々な形態を採ること(甲イ72)に照らすと,200μm以上の粒子の割合を制限しさえすれば,90%の粒子の粒度分布がどのようなものであっても,生物学的利用能が改善されるとものと理解することはできない。

 

以上によれば,本件明細書の【0022】,【0124】及び【0135】の上記記載から,「セレコキシブのD90粒子サイズが約200μm以下」とした場合には,その数値範囲全体にわたり,セレコキシブの生物学的利用能が改善されると認識することはできない。

 

(イ)この点に関し被告は,①本件発明1の課題解決のメカニズムは,セレコキシブの粒子の最大長におけるD90200μm未満とされることにより,元来凝集しやすい性質のセレコキシブの凝集性が減少し,その結果セレコキシブ粒子の有効表面積が増大することにより溶解速度が速くなり,セレコキシブの生物学的利用能が改善するものである,②ピンミルを利用した場合には,セレコキシブは長い針状から微小化した均一な粒子になるのに対して,エアージェットミルを利用した場合には長い針状の結晶が残存するためピンミルを利用して粉砕した場合と比較して,液体エネルギーミルで粉砕した場合は凝集力が改善されにくいこと(本件明細書の【0024】)から,単にセレコキシブの粒子を微細化して平均粒子径を小さくすればよいというのではなく,微細化した粒子中に残存する長い針状の結晶の割合こそが重要であり,その割合が限定されなければならないということを見出し,本件発明1では,微細化した粒子中に残存する粒子の最大長のD90を基準として用いることとした,③セレコキシブ粒子の最大長におけるD90200μm未満である場合に,生物学的利用能が改善されるメカニズムが,本件明細書の記載(【0167】,【0172】ないし【0177】,【0183】ないし【0186】,【0205】,表11-2C,表11-2D)から確認できる,④平均粒子サイズが1μm1020μmになるように調製された粒子のD90200μm未満となることは,別紙2-1及び別紙2-2の粒子分布図から理解できる旨主張する。

 

しかしながら,被告が指摘する本件明細書の上記記載中には,粒子の最大長におけるセレコキシブ粒子の「D90」の値を用いて粒子サイズの分布を規定することの技術的意義や「D90」の値と生物学的利用能との関係について説明した記載はない。

また,前記(ア)で述べたように,本件発明1の「微粒子セレコキシブ」が「ピンミル」(「ピンミリング」)を利用して粉砕されたものに限定されるものではないから,「ピンミル」を利用することを前提として,セレコキシブ粒子の最大長におけるD90200μm未満である場合に生物学的利用能が改善されるメカニズムを把握することはできない。

さらに,被告は,別紙2-1及び別紙2-2について,D90200μmの平均粒子径は,別紙2-1の山型の分布図のおよそ中央の値(青線)となり,平均粒子サイズ(青線)はその中央値であるおよそ100μmとなる,平均粒子サイズが1μm1020μmの場合に,別紙2-2のとおり,山型の分布が全体的に粒子径の小さい(左)方向にスライドすることになるので,これらのD90200μmより小さい値となる旨述べるが,難溶性薬物の原薬の粒子径分布は,化合物によって様々な形態をとること(甲イ72)は,前記(ア)のとおりであって,例えば,甲イ72の図⑧(「D90●●●●●μm」。別紙3)のような粒子径分布をとる場合があることに照らすと,D90200μm未満の場合の粒度分布は,必ずしも被告の主張するような粒度分布になるものとはいえない。

したがって,被告の上記主張は理由がない。

 

(ウ)また,被告は,セレコキシブ粒子の最大長におけるD90200μm未満である場合に生物学的利用能が改善されるメカニズムは,本件明細書の記載から理解できるものであり,この理解に誤りがないことは,未粉砕のセレコキシブと比較して,D90200μmのセレコキシブの生物学的利用能が改善することを示す追加の試験結果(乙10)からも確認することができる旨主張する。

そこで検討するに,乙10には,未粉砕のセレコキシブ(D90=669μm)を含有するセレコキシブカプセル(以下「未粉砕カプセル」という。)とピンミルにより粉砕されて微小化したセレコキシブ(D90=196μm)を含有するセレコキシブカプセル(セレコキシブ25%,ラウリル硫酸ナトリウム2%,「アビセルPH-10173%を含有するもの。以下「196μmカプセル」という。)を「ビーグルイヌ」に投与して,生物学的利用能を測定したこと,その結果,生物学的利用能は,未粉砕カプセルが16.1%であったのに対し,196μmカプセルは32.1%であり,196μmカプセルが2.0倍に向上した旨の記載がある。

一方で,本件明細書には,「セレコキシブは水溶液にかなり溶解しにくい。したがって,本発明の製薬組成物は,任意であるが,好ましくは,キャリア材料として,一つ又はそれ以上の薬剤学的に許容な加湿剤を含む。かかる加湿剤は,水と親和性があるようにセレコキシブを維持させるように選択することが好ましく,その状態が製薬組成物の相対的生物学的利用能を改善させると考えられる。」(【0075】),「ラウリル硫酸ナトリウムは好ましい加湿剤である。存在するならば,ラウリル硫酸ナトリウムは,組成物の全重量の対して,約0.25%から約7%,好ましくは約0.4%から約6%,より好ましくは約0.5%から約5%の量を含む。」(【0076】)との記載があること,疎水性の難溶性物質であっても,界面活性剤が存在すると,微粒子は凝集せずに均一に溶液中に分散され,粒子サイズが小さいほど溶出速度は大きくなることは,本件優先日当時,周知又は技術常識であったこと(前記22))に照らすと,196μmカプセルに加湿剤として含まれるラウリル硫酸ナトリウムが,196μmカプセルの生物学的利用能の試験結果に影響した可能性が高いものと認められる。

 

また,196μmカプセルを調合するに当たり,ピンミルで粉砕し微小化しているが,前記(ア)で述べたように,本件発明1の「微粒子セレコキシブ」が「ピンミル」を利用して粉砕されたものに限定されるものではない。

したがって,乙1の試験結果から,セレコキシブ粒子の最大長におけるD90200μm未満である場合に生物学的利用能が改善されるメカニズムを認識することはできないから,被告の上記主張は採用することができない。

 

ウ(ア)本件明細書には,「例11」として「犬モデルでの生物学的利用能」の実験結果及び「例11-2」として「犬モデルでの調合の生物学的利用能」の実験結果の記載(【0170】ないし【0177】,表11-111-2A11-2B11-2C11-2D)がある。例11及び例11-2には,メス犬及びオス犬をモデルとして,セレコキシブの静脈注射による投与,セレコキシブの経口溶液形態の投与,経口カプセルによる未粉砕,未調合のセレコキシブの投与により,それぞれの生物学的利用能を測定したこと,「組成物A」ないし「組成物F」についての生物学的利用能について測定した結果,メス犬については,「組成物A」(微粉化したセレコキシブ,ラウリル硫酸ナトリウム,「アビセル101」を含むカプセル)は31.2%,「組成物B」(微粉化したセレコキシブ,ラウリル硫酸ナトリウム,「アビセル101」,リン酸三ナトリウム12水和物(Na3PO412H2O)を含むカプセル)は24.9%,「組成物F」(未粉砕,未調合のセレコキシブ)は16.9%であったこと(表11-2C),オス犬については,「組成物A」は49.4%,「組成物B」は54.2%,「組成物F」は16.9%であったこと(表11-2D)であることの記載がある。これらの記載は,微粉化したセレコキシブを含有する「組成物A」及び「組成物B」の生物学的利用能は,未粉砕,未調合のセレコキシブである「組成物F」の生物学的利用能より高いことを示している。

しかるところ,本件明細書の【0172】には,「組成物A」は,調合する前にセレコキシブを「微粉化(平均粒子サイズ10乃至20μm)」させたことが記載されているが,セレコキシブのD90粒子サイズについての明示の記載はないところ,0124】に「例えば,例11に例示するように,出発材料のセレコキシブのD90粒子サイズを約60μmから約30μmに減少させると,組成物の生物学的利用能は非常に改善される。」とのの記載があることを参酌すると,「組成物A」に含まれるセレコキシブのD90粒子サイズは,約30μmであると推認される。また,「組成物B」についても,これと同様である。

一方で,「組成物A」及び「組成物B」は,乾燥重量を基礎とした重量割合で,それぞれ2%及び25%のラウリル硫酸ナトリウムが含まれていること(表11-2A)からすると,前記イ(ウ)で述べたのと同様に,本件明細書の【0075】及び【0076】の記載及び本件優先日当時の技術常識(前記22))に照らすと,「組成物A」及び「組成物B」に加湿剤として含まれるラウリル硫酸ナトリウムが,生物学的利用能の実験結果に影響した可能性が高いものと認められる。

そうすると,セレコキシブ粒子のD90が約30μmである「組成物A」及び「組成物B」の生物学的利用能の実験結果から,本件発明1の「セレコキシブ粒子のD90200μm未満」の数値範囲の全体にわたり,未調合のセレコキシブに対して生物学的利用能が改善するものと認識することはできない。

 

(イ)これに対し被告は,本件明細書には,表11-2Aの「組成物A」にはラウリル硫酸ナトリウムが含まれているが,「組成物A」で評価しているのはセレコキシブの微粉化の効果であり,「組成物B」で評価しているのはラウリル硫酸ナトリウムによる湿潤剤増加の効果であることが明記されていること(【0172】),25%のラウリル硫酸ナトリウムを含む「組成物B」の生物学的利用能は,ラウリル硫酸ナトリウムを2%しか含まない「組成物A」と比較して,低い(メス犬につき表11-2C)か同程度(オス犬につき表11-2D)であることからすると,生物学的利用能の改善効果は,ラウリル硫酸ナトリウムによるものではなく,セレコキシブの微粉化によりもたらされていることを理解できる旨主張する。

 

しかしながら,本件明細書には,好ましい加湿剤とされるラウリル硫酸ナトリウムは,組成物の全重量に対して,約0.25%から約7%,好ましくは約0.4%から約6%,より好ましくは約0.5%から約5%の量を含むと記載されていること(【0076】)に照らすと,「組成物A」は,好ましい量とされる2%のラウリル硫酸ナトリウムを含むのに対し,「組成物B」には好ましいとされる量をはるかに超える25%ものラウリル硫酸ナトリウムが含むものであるから,「組成物B」が「組成物A」と比較して生物学的利用能が同等かやや低い結果であったからといって,生物学的利用能の改善効果は,ラウリル硫酸ナトリウムによるものではなく,セレコキシブの微粉化によりもたらされているものと認識することはできない。

したがって,被告の上記主張は,理由がない。

 

エ(ア)本件明細書には,「例13」として,懸濁液と連続した小さなスクリーンサイズ(#14#20#40)を備えた振動ミルを介して何回も粉砕したセレコキシブ粒子のD90粒子サイズが37μm以下のカプセルを用いた相対的生物学的利用能(AUC0-48))の実験結果の記載(【0184】ないし【0186,13B)がある。

13には,D90粒子サイズが37μm以下の粒子サイズのセレコキシブを含む100mg単位投与量カプセルと14C‐セレコキシブの懸濁液プロファイルを用いて,「健康なオス」を被験者として実験した結果,「AUC0-48)にて測定した生物学的利用能」は,D90の粒子サイズが約37μm以下のセレコキシブ粒子を含む100mg単位量のカプセルは,セレコキシブを含む懸濁液と同等であった旨の記載(【0185】,【0186】)がある。

 

しかしながら,例13には,懸濁液に含まれるセレコキシブの粒子サイズの記載はなく,その粒子サイズは不明であることに照らすと,セレコキシブ粒子のD90が約37μm以下である上記実験結果から,本件発明1の「セレコキシブ粒子のD90200μm未満」の数値範囲の全体にわたり,未調合のセレコキシブに対して生物学的利用能が改善するものと認識することはできない。

(イ)これに対し被告は,本件明細書の例13において,同一の被験者に例11-2と同様の方法で調製されたと考えられる懸濁液(粒子サイズは約1μm径)とD90粒子サイズが約37μm以下であるカプセル剤が投与されたときにそれぞれのAUC0-48)が同等であったことが確認されており,D90の粒子サイズが37μmのときですら1μmと同様の効果を奏することから,当業者は,D90の粒子サイズが37μm以上のセレコキシブであっても,420μmより大きいサイズの粒子サイズが含まれる未粉砕のセレコキシブの生物学的利用能と比較すると改善された生物学的利用能を奏することは高い蓋然性をもって予測することができる旨主張する。

しかしながら,例11の懸濁液は,「(2)粒子が顕微鏡で評価した際に約1μm径になるまで,ポリソルベート80とポリビニルピロリドンのスラリーにて,薬をボールミルさせて,懸濁液として調製した」もの(【0173】)であるのに対し,例13の懸濁液は,「5%のポリソルベート80を含むエタノールにセレコキシブを溶解させて調製し」たもの(【0185】)であって,懸濁液の調製方法が異なるから,例13の懸濁液の粒子才津は「約1μm径」であるとの被告の主張は,その前提を欠くものである。

 

また,本件明細書には,例13で調製されたカプセルのセレコキシブ粒子は,「セレコキシブ,ラクトース及びポリビニルピロリドンを遊星型ミキサーボールにて混合し,水を用いて湿式顆粒化させた」もの(【0184】)であるとの記載があること,「ポリビニルピロリドンは,セレコキシブ調合の顆粒化のため,セレコキシブパウダーブレンド及び他の賦形剤に凝集性を与えるために利用される,好ましい結着剤である。」,「ポリビニルピロリドンにより,パウダーブレンドに凝集力が付与され,必要な結合が容易に起こり,湿式顆粒化中に顆粒を形成させる。」,「ポリビニルピロリドンを含む本発明の組成物は,特に湿式顆粒化により調製され,他の組成物に対して相対的に改善された生物学的利用能を示すことが判明した。」(【0074】)との記載があることに照らすと,例13で調製されたカプセルのセレコキシブ粒子の生物学的利用能は,ポリビニルピロリドンを利用した湿式顆粒化により改善された蓋然性があるものと認識することができる。

したがって,被告の上記主張は理由がない。

 

  次に,本件明細書の「例15」には,「100mg投与量のカプセルの調製」のための粉砕方法として,「粒子サイズを比較的狭い範囲(D9030μm若しくはそれ以下)内で変化し」(【0190】)との記載があるが,この実験結果は,セレコキシブの生物学的利用能に関するものではない。

このほか,本件明細書には,セレコキシブ粒子のD90の粒子サイズと生物学的利用能に関する実験結果の開示はない。

 

  以上によれば,本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び本件優先日当時の技術常識から,当業者が,本件発明1に含まれる「粒子の最大長において,セレコキシブ粒子のD90200μm未満」の数値範囲の全体にわたり本件発明1の課題を解決できると認識できるものと認められないから,本件発明1は,サポート要件に適合するものと認めることはできない。

これと異なる本件審決の判断は誤りである。

・・・

 

結論

以上によれば,原告ら主張の取消事由4は理由があるから,その余の取消事由について判断するまでもなく,本件審決は取り消されるべきである。

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判決文によると、

①請求項1に「D90200μm以下」の具体的な方法の規定がなく、「ピンミリングのような衝撃粉砕」により粉砕されたものに限定されていないこと、かえって、【0135】に「さまざなま粉砕器若しくは破砕器が利用することが可能である」との記載があること、

②【0008】にセレコキシブが水溶性媒体に異常なほど溶解しないこと、非均一なブレンド組成物になる等の記載があること、

③難溶性薬物は粒子径を小さくすると凝集が起こりやすい等の技術常識があったこと、

が考慮され、

「「セレコキシブのD90粒子サイズが約200μm以下」の構成とすることにより、セレコキシブの生物学的利用能が改善されることを直ちに理解することはできない。」

と判断されています。

 

また、

A)「本件明細書の記載を全体としてみても,粒子の最大長におけるセレコキシブ粒子の「D90」の値を用いて粒子サイズの分布を規定することの技術的意義や「D90」の値と生物学的利用能との関係について具体的に説明した記載はない。」

とも判断されています。

 

①については、一般的な他の製剤特許でも似たことがありそうなので、なかなか危険な論理構成だなと思いました。

 

A)の観点は被告にとってつらい(弱い)ところです。どうやら、「D90200μm以下」の範囲内と外での比較結果が明細書に明確に記載されていないようです(【0022】等に好ましい範囲としての記載はあります)。D90は出願時の請求項1に記載されていなかった構成なので、もしかしたら明細書作成時にはそれほど重視されていなかったパラメータだったのかもしれません。

なお、被告は試験結果を追加提出しましたが、ラウリル硫酸Naが影響している可能性と、①の観点が考慮され、主張は認められませんでした。もし、ラウリル硫酸Naを使用せず、且つピンミリング以外の方法で粉砕した試験結果を提出していたらどうなったのかは気になるところです。

 

数値限定を独立クレームにクレームアップすることって実務的に結構ありますが、この判決の考え方が適応されてしまわないか要検討ですね。

 

また、裁判所は明細書の例11に関して、加湿剤のラウリル酸Naが生物学的利用能に影響した可能性が高いとして、例11は数値限定のサポートの根拠にならないと判断しました。

比較実験は、「添加剤の影響も考慮して」厳密に評価すべきということを意味しており、重要な観点だと思います。

 

無効理由の論理構成を考えるときには、この判決の考え方が使えないか検討したいなと思える判決でした。



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■<知財高裁/炭酸ランタンOD錠の審取訴訟> 明細書に本願の課題が複数記載されていた場合に、そのうち1つの課題を解決できない実施例があることを根拠にサポート要件違反と判断された事例


<判決紹介>

・平成31年(行ケ)第10003号 審決取消請求事件

・令和元年1111日判決言渡

・知的財産高等裁判所第3部 鶴岡稔彦 高橋彩 鶴岡稔彦

・原告:バイエル薬品株式会社

・被告:コーアイセイ株式会社

・特許6093829

・発明の名称:ランタン化合物を含む医薬組成物

 

■コメント

炭酸ランタンOD錠に関する特許の、無効審判の審決取消訴訟の紹介です。

後発品メーカー vs 新薬メーカーです。

 

経緯は以下のとおりです。

 

・平成27102日:バイエルが特許出願

・平成29217日:特許登録(特許6093829)

・平成2984日:コーアイセイが無効審判請求(無効2017-800104)

・平成291030日:訂正

・平成3083日:訂正

・平成301212日:一部無効審決(請求項62845無効)

・平成31111日:バイエルが審決取消訴訟提起

・令和元年1111日:判決 ← いまココ

 
この特許に関しては、別途、バイエルがコーアイセイの後発品に対し侵害訴訟を提起していましたが、東京地裁はバイエルの請求を棄却しました。概要は下記ブログで紹介しています。

https://biopatentblog.blog.fc2.com/blog-entry-238.html

 

本件特許の請求項6は以下の通りです。

 

「【請求項6】(訂正)

唾液又は少量の水により,口腔内で崩壊させて経口投与することを特徴とする口腔内崩壊錠であって,崩壊剤及び医薬組成物中の含有率が7090質量%で炭酸ランタン又はその薬学的に許容される塩を含有し,前記崩壊剤が,クロスポビドンであり,前記クロスポビドンの医薬組成物中の含有率が5.612質量%であり,但し,崩壊剤がGRANFILLER-D(登録商標)から成る錠剤は除く,医薬組成物。」

 

 

明細書に本願の課題(及び効果)が複数(崩壊性、摩損度等)記載されていたのですが、そのうち1つ(摩損度)の課題を解決できない実施例(実施例4)があることを根拠にサポート要件違反と判断されました。

裁判所の判断は以下の通りです。

 

 

判決------------------------------------------------------------------------------------

事案の概要

・・・

本件審決の理由の要旨

本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりであり,本件取消事由の主張と関連する無効理由4(サポート要件違反)の本件発明628から45までに係る部分の要旨は次のとおりである。

本件発明628から45は,「速やかな崩壊性,高い硬度及び低い摩損度を両立した,唾液又は少量の水により,口腔内で崩壊させて経口投与する口腔内崩壊錠を提供すること」などを,発明が解決しようとする課題とするものであると認められる。

上記課題の「低い摩損度」について,明細書の記載から,錠剤の摩損度試験法(日局参考情報)に従った試験を行うとき,摩損度が0.5パーセント未満であり,かつ,「明らかなひび・割れ・欠け」の認められる比率が実用上無視できる程度に低ければ,「低い摩損度」を有するものといえるところ,本件明細書の実施例4(以下,本件明細書の実施例及び比較例を,単に「実施例4」などという。)の口腔内崩壊錠は,その摩損度が0.4パーセントであって,合格基準内である「0.5パーセント未満」ではあるものの,「明らかなひび・割れ・欠けの個数/試験数」が7/12試験であり,実施例4の口腔内崩壊錠の「明らかなひび・割れ・欠け」の認められる比率が実用上無視できる程度に低いとはいえず,実施例4の口腔内崩壊錠は,「低い摩損度」を有するとはいえないものである。 

したがって,本件発明628から45は,当業者が発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に照らし当該発明の上記課題を解決できると認識できる範囲にないものを包含しているから,無効理由4により無効にすべきものである。

・・・

 

当裁判所の判断

本件発明について

・・・

 

取消事由1(サポート要件違反についての判断の誤り)について

  特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。

 

  本件発明の課題

前記1⑵にみたところに照らすと,本件発明の課題のひとつは,高い原薬含有率で,速やかな崩壊性,高い硬度及び低い摩損度を両立した炭酸ランタンの口腔内崩壊錠を提供することであると認められる。

本件の取消事由1において問題とされているのはかかる課題についてであるので,以下,この課題に係るサポート要件違反の有無を検討する(以下,この課題を「本件課題」という。)。

 

  本件明細書等の記載

上記の速やかな崩壊性,高い硬度及び低い摩損度の両立という本件課題について,本件明細書並びに日本薬局方の技術情報の解説及び参考情報(乙12)には,次の記載が認められる。

・・・

 

  サポート要件適合性について

原告が本件発明の実施例であると主張する実施例4においては,錠剤硬度117N,摩損度0.4パーセント(7/12)(ただし,括弧内は明らかなひび・割れ・欠けの個数/試験数),崩壊時間39秒(日局(補助盤なし)),7秒(日局(補助盤あり)),40秒(口腔内(静的))であったことが記載されている。

他方,本件明細書の実施例の摩損度の評価は,錠剤の摩損度試験法(日局参考情報)に従って行われるとされているところ(【0062】),日本薬局方参考情報(乙1)によれば,錠剤の摩損度試験法においては,明らかにひび,割れ,欠けが見られる錠剤があるときはその試料は不適合であるとされている。

そうすると,「明らかなひび・割れ・欠け」の個数が12錠中7錠であり,摩損度が0.4%とする実施例4の摩損度の評価の記載を,日本薬局方参考情報における錠剤の摩損度試験法で「明らかなひび・割れ・欠け」が見られる錠剤があるときはその試料は不適合であるとされていることとの関係で一義的に整合するように理解することができない。そして,本件明細書には「明らかなひび・割れ・欠け」の個数が12錠中7錠である実施例4の場合に,どのような方法で摩損度を測定した結果0.4%という数値を得たのかに関する説明はなく,この点についての当業者の技術常識を示す的確な証拠もない。

 

以上によれば,当業者は,本件明細書の実施例4の記載から,当該実施例において低い摩損度を含む本件課題が実現されていることを理解することができないし,本件明細書のその余の部分にも,本件発明が,「高い原薬含有率で,速やかな崩壊性,高い硬度及び低い摩損度を両立した炭酸ランタンの口腔内崩壊錠を提供する」という本件課題を解決できることを示唆する記載はなく,この点に関する技術常識を示す的確な証拠もない。

したがって,本件発明について,本件明細書に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであり,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるということができないから,本件発明がサポート要件に適合するものということはできない。

 

  原告の主張について

  原告は,「明らかなひび・割れ・欠け」は,摩損度とは異なる概念であり,本件発明の課題には含まれない,また,仮に含まれるとしても,本件発明の課題は,「速やかな崩壊性,高い硬度及び低い摩損度の両立」であるから,本件発明はこれを解決するものであると主張する。

前記⑶ア及びイにみたとおり,本件明細書においては,発明を実施するための形態,実施例の箇所において,それぞれ速やかな崩壊性,高い硬度,低い摩損度の具体的な評価方法について記載している。特に,摩損度について,発明を実施するための形態において,「『低い』摩損度とは,例えば,錠剤の摩損度試験法(日局参考情報)に従い,試験を行うとき,0.5%未満(明らかなひび・割れ・欠けなし)である。」(【0050】)とされ,また,実施例において,「摩損度は,錠剤の摩損度試験法(日局参考情報)に従い,試験を行った。摩損度の目標品質は,通常の錠剤と変わらない取り扱いを目指し,0.5%未満(明らかなひび・割れ・欠けなし)とした。」(【0062】)と記載されている。

 

そして,本件明細書は,かかる評価方法に従って,崩壊性や硬度について,比較例や実施例を評価しており,摩損度については,明らかなひび,割れ,欠けの個数も含めて評価している(【0068】,【0072】,【0076】)。

また,摩損度について,本件明細書が引用する日本薬局方の参考情報は,「試験後の錠剤試料に明らかにひび,割れ,あるいは欠けの見られる錠剤があるとき,その試料は不適合である。もし結果が判断しにくいとき,あるいは質量減少が目標値より大きいときは,更に試験を二回繰り返し,三回の試験結果の平均値を求める。多くの製品において,最大平均質量減少(三回の試験の)が1.0%以下であることが望ましい。」(乙1)として,摩損度試験の評価の際に,明らかなひび,割れ,欠けがある場合にそもそも試料が不適合であるとしてかかる概念も含めて評価の対象とするものである。

そして,前記⑶に引用した本件明細書の記載のほかに,本件明細書中において,本件課題の具体的な評価方法としても,個別の実施例の記載についても,本件発明の課題解決をどのように評価するかについての基準や考え方は窺われない。

以上によれば,本件課題である「速やかな崩壊性,高い硬度及び低い摩損度の両立」が解決されたといえるためには,「低い摩損度」概念の中に「明らかなひび・割れ・欠け」がないことも含んだ上で,「速やかな崩壊性」,「高い硬度」及び「低い摩損度」を実現することが必要であると解される。

 

  原告は,本件発明の課題が達成されているかどうかは市販品として問題のない口腔内崩壊錠が提供されているかどうかという観点から判断されるものであるなどと主張する。

しかしながら,本件明細書には,原告の主張する「市販品として問題のない口腔内崩壊錠が提供されているかどうか」について何らの記載もなく,本件明細書における摩損度試験法に関する明示的な記載に反してこのような評価をすべき根拠は見当たらない。

 

  原告は,実施例4の摩損度及び「明らかなひび・割れ・欠け」の記載に接すると,当業者であれば,日本薬局方の参考情報(乙1)が想定する摩損度が1パーセントを明らかに超えるようなレベルの「明らかなひび・割れ・欠け」があるとまではいえないものがカウントされていると理解できるなどと主張する。

しかしながら,そもそも,本件明細書は,摩損度試験について,日本薬局方の参考情報(乙1)に従うとした上で,それと同様の表現をした「明らかなひび・割れ・欠け」の有無を問題としているのであって,本件明細書と日本薬局方の「明らかなひび・割れ・欠け」が異なる概念であることは何ら読み取れない。

 

  原告は,本件特許出願時において,打錠圧を上げることによって「明らかなひび・割れ・欠け」の解消が可能であることや,予圧をすることによって「明らかなひび・割れ・欠け」の解消が可能であることが技術常識であったとして,このような技術常識に照らせば,本件発明は本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであることを主張する。

しかしながら,本件課題は,「高い原薬含有率で,速やかな崩壊性,高い硬度及び低い摩損度を両立した炭酸ランタンの口腔内崩壊錠を提供する」というものであるところ,甲4144546974(枝番を含む。)には,本件発明の口腔内崩壊錠について,打錠圧を上げ,あるいは,予圧をすることによって,「速やかな崩壊性,高い硬度及び低い摩損度を両立」することができることを示すものではない。本件発明の構成について,打錠圧を上げ,あるいは,予圧をすることによって本件課題を解決することができるとの技術常識があるとは認められない。

そして,かかる技術常識が存在しない以上,それを裏付ける実験データ(甲4553)を考慮することはできない。

なお,本件明細書には,「適切な硬度が得られる打錠圧で所定の質量の錠剤を製造する。」(【0059】)と記載されているものの,「ひび・割れ・欠け」の解消との関係で,打錠圧の調整をすべきことについては記載がなく,当業者に対し,課題解決への示唆があるとも認められない。

 

  以上のとおりであるから,原告の主張はいずれも採用できない。

 

  結論

以上の次第で,原告の主張する取消事由1については理由がない。

・・・

 

結論

以上によれば,原告主張の取消事由にはいずれも理由がなく,審決に取り消されるべき違法があるとは認められない。

よって,原告の請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。

------------------------------------------------------------------------------------------

 

 

問題の実施例4の結果は、以下の表3に記載されています

 

 20191208_biopatentblog.jpg

 

実施例4をみると、摩損度が0.4で、「明らかなひび・割れ・欠け」の7/12は括弧書きになっているので、ここだけを見るとひび等は参考値のように読めないこともないです。

しかし、実施例には以下の記載があり、明らかなひび等が無いことが、摩損度効果ありと判断するための必須事項のように読めます。また、同じように解釈できそうな記載が他にもいくつかあるようです。

 

「【0062】摩損度は、錠剤の摩損度試験法(日局参考情報)に従い、試験を行った。摩損度の目標品質は、通常の錠剤と変わらない取り扱いを目指し、0.5%未満(明らかなひび・割れ・欠けなし)とした。」

 

さらに、日本薬局方に「明らかにひび,割れ,欠けが見られる錠剤があるときはその試料は不適合」と記載されていたのも追い打ちをかけてますね。

 

本願のように、効果が無いと解釈される余地がある実施例が得られた場合、出願時、無効理由のリスクを回避するためにどのような明細書の書き方ができたでしょうか。以下に例を4つ挙げてみます。

(1)ひび等は参考値であって、摩損度の評価に含まれないことを明細書で詳しく説明する。

(2)摩損度を課題の欄から削除し、他の欄でも必須の効果として記載しない。

(3)ひび等の評価結果を明細書に記載しない(摩損度は残す)。

(4)実施例4を明細書に記載しない。


(1)は日本薬局方で指摘される余地があるのでリスクは残りますね。(2)~(4)はクレーム、実施例、比較例の整合性が崩れる懸念があります。上手く整合性がとれて、先行技術との差別化やサポートも問題ないならよいですが、そうでなければ実験データの追加や、ストーリーの変更を要検討ということになると思います。



■アルナイラムのTuschl II特許に対する無効審判の結果は一部無効 /無効2011-800121


アルナイラム社(Alnylam Pharmaceuticals, Inc.)のTuschl II特許(JP4095895)に対する無効審判の結果がでました。 ☆☆☆

審判番号: 無効2011-800121
特許番号: 特許4095895
発明の名称: RNA干渉を媒介する短鎖RNA分子
請求人: 株式会社バイオシンクタンク
被請求人: マックス-プランク-ゲゼルシャフト ツール フォーデルング デル ヴィッセンシャフテン エー.ヴェー./ ユーロペーイシェ ラボラトリウム フュール モレキュラーバイオロジー(イーエムビーエル)

結論は下記の通り。

結論
 訂正を認める。
 特許第4095895号の請求項1、2、8ないし10に係る発明についての特許を無効とする。
 特許第4095895号の請求項3ないし7、11ないし39に係る発明についての審判請求は、成り立たない。
 審判費用は、その39分の34を請求人の負担とし、39分の5を被請求人の負担とする。

無効と判断された請求項は下記の通り。

【請1】 単離された二本鎖RNA分子であって,各RNA鎖が19~23塩基長を有し,少なくとも1つの鎖が1~3塩基からなる3’突出部を有するものであり,該RNA分子は標的特異的なRNA干渉が可能なものであり,3’突出部を除く該RNA分子の1つの鎖が,予め決定したmRNA標的分子に対して100%の同一性を有する配列からなり,かつ,該mRNA標的分子が細胞または生物中に存在するものである,上記RNA分子。

【請2】 各鎖が,20~22塩基長を有する,請求項1に記載のRNA分子。

【請8】 下記のステップを含む,請求項1~7のいずれか1項に記載の二本鎖RNA分子の作製方法:
(a)各々が19~23塩基長を有する2本のRNA鎖を合成するステップであって,このRNA鎖は二本鎖RNA分子を形成することができるものである,上記ステップ,
(b)二本鎖RNA分子が形成される条件下で合成RNA鎖を結合させるステップであって,得られる二本鎖RNA分子は標的特異的なRNA干渉が可能なものである,上記ステップ。

 ~
【請10】…。

無効と判断されなかった請求項は下記の通り。

【請3】 3’突出部が分解に対して安定化されている,請求項1または2に記載のRNA分子。

【請4】 少なくとも1つの修飾されたリボヌクレオチドを含む,請求項1~3のいずれか1項に記載のRNA分子。

【請5】 修飾リボヌクレオチドが,糖,骨格鎖または核酸塩基修飾リボヌクレオチドから選択される,請求項4に記載のRNA分子。

【請6】 修飾リボヌクレオチドが,糖修飾リボヌクレオチドであり,2’-OH基は,H,OR,R,ハロ,SH,SR1,NH2,NHR,NR2またはCNから選択される基で置換され,Rは,C1-C6アルキル,アルケニルまたはアルキニルであり,ハロは,F,Cl,BrまたはIである,請求項4または5に記載のRNA分子。

【請7】 修飾リボヌクレオチドが,ホスホチオエート基を含む骨格鎖修飾リボヌクレオチドである,請求項4または5に記載のRNA分子。

【請11】 下記のステップを含む,動物細胞において標的特異的なRNA干渉を媒介する方法
(a)標的特異的なRNA干渉が起こりうる条件下で,上記細胞を請求項1~7のいずれか1項に記載の二本鎖RNA分子と接触させるステップ,
(b)上記二本鎖RNAと一致する配列部分を有する標的核酸に対する,上記二本鎖RNAにより引き起こされる標的特異的なRNA干渉を媒介するステップ。

 ~
【請38】 下記の(a)~(c)を含む,少なくとも1つの標的タンパク質に作用する薬理学的物質の同定および/または特性決定システム
(a)少なくとも1つの標的タンパク質をコードする少なくとも1つの標的遺伝子を発現することができる,動物細胞,
(b)上記少なくとも1つの内因性標的遺伝子の発現を阻害することができる,少なくとも1つの単離された二本鎖RNA分子であって,該二本鎖RNA分子は,各RNA鎖が19~23塩基長を有し,少なくとも1つの鎖は1~3塩基からなる3’突出部を有するものであり,かつ,3’突出部を除く該RNA分子の1つの鎖が,予め決定したmRNA標的分子に対して100%の同一性を有する配列からなる,上記RNA分子,および
(c)薬理学的特性を同定および/または特性決定しようとする,試験物質または試験物質のコレクション。

【請39】 …。 

というわけで、結構広いクレームが残りました。
新規性/進歩性はさておき、サポート/実施可能/明確性要件は下記のようにクリアしました(一部抜粋)。

3  請求人が主張する無効理由3(特許法第36条第6項第1号及び第4項)について
3-1
請求人は,本件特許の請求項1ないし39は,発明の詳細な説明の記載が,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されておらず,また,特許請求の範囲の記載は,特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものでないから,特許法第36条第6項第1号及び第4項に規定する要件を満たしておらず,特許法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきものであると主張している。

3-2  請求項1ないし3について
(1)  請求人の審判請求書における主張
請求項1について,甲第4号証では,26,27,32,37,81という様々な塩基長の二本鎖RNAを試しているが,27塩基長の二本鎖RNAでは,遺伝子発現抑制効果が観察されなかった。そしてそれは,RNAの量を増やしたり,培養温度を下げたりすることによって,効果が見られるようになるかもしれないが,配列自身に問題があるかもしれず,その原因は明らかではないと書かれている。このように,19~23塩基長と言っても,全ての場合に効果があるとは限らず,出願時の技術常識に照らしても,請求項に係る発明の範囲まで,発明の詳細は説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。また,効果があるものを選択するには,当業者にとっても,過度の試行錯誤が必要となる。よって,特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものでない。また,発明の詳細な説明は,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に,記載されていないため,特許法第36条第6項第1号及び第4項に規定する要件を満たさないので,請求項1は特許性を有さない。請求項1を引用する請求項2及び3についても同様である。

(2)  請求人の審判請求書における主張に対する判断
甲第4号証においてRNA干渉が観察されなかった27塩基長の二本鎖RNA分子は,3’突出部を有しておらず,塩基長も19から23の範囲に含まれないから,甲第4号証に示された二本鎖RNA分子は本件請求項1に記載された二本鎖RNA分子に包含されないので,このような二本鎖RNA分子が効果を奏さないから本件請求項1の発明が効果があるか不明であるとはいえない。
それに対し,本件特許明細書において,図12は,アンチセンス鎖が21塩基長でセンス鎖が18から25塩基長のそれぞれの長さを有し,3’突出部が1から3塩基長である二本鎖RNA分子のRNA干渉の誘導を示し,図13は,3’突出部が2塩基長であって,アンチセンス鎖とセンス鎖が20から25塩基長の二本鎖RNA分子のRNA干渉の誘導を示す。
ここで,本件特許明細書において,各RNA鎖が19~23塩基長であり,少なくとも1つの鎖が1から3塩基からなる3’突出部を有する全ての組み合わせの二本鎖RNA分子についてRNA干渉を誘導することが示されたわけではないが,3’突出部については1から3塩基の場合にRNA干渉を誘導することが示され,センス鎖が18から25塩基長の長さの二本鎖RNA分子がRNA干渉を誘導することが示されているから,各RNA鎖が19~23塩基長であり,少なくとも1つの鎖が1から3塩基からなる3’突出部を有する二本鎖RNA分子がRNA干渉を誘導する蓋然性は高い。
請求項2の塩基長が20から22塩基長の場合,及び,請求項1及び2を引用する請求項3についても同様である。
さらに,本件特許明細書の図12及び図13の結果は,20から22塩基長においてRNA干渉の誘導活性が高く,24塩基長や25塩基長においてはRNA干渉の誘導が低下する傾向を示しており,本件特許明細書の段落【0006】の,30塩基長の短い二本鎖RNA分子は,もはや21及び22塩基のRNAにプロセシングされることはないために,RNA干渉を誘導することはできないとの記載からも,甲第4号証に記載された27塩基長のdsRNAがRNA干渉を誘導できなかったことは,予想の範囲であることが伺えるから,該甲第4号証の記載が本件請求項1の実施可能要件及びサポート要件を否定する根拠にはなりえない。
請求項2,3についても同様のことがいえる。
よって,発明の詳細な説明の記載が,請求項1ないし3に記載の発明について,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていないとはいえない。また,請求項1ないし3の特許請求の範囲の記載は,特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえない。

(3)  小括
したがって,請求項1ないし3について,本件特許は特許法第36条第6項第1号及び第4項に規定する要件を満たしていない出願に対してされたとはいえない。

4  請求人が主張する無効理由4(特許法第36条第6項第2号)について
4-1
請求人は,請求項3ないし5,16,17,19,20,24,26,27,33,35,38及び39に記載の発明特定事項の記載が明確でないので,これらの請求項及びこれらを引用する請求項28ないし32,34,36及び37は,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず,特許法第123条第1項第4号に該当し,無効とすべきものであると主張している。
4-2  請求人の審判請求書における主張
請求人は,審判請求書において以下のように主張している。
(1)請求項3について,当業者であっても,「安定化」というのが,どのような安定化か理解できないので,請求項3は特許を受けようとする発明が明確でない。
…。

4-3  請求人の主張に対する判断
(1)について,請求項3には「安定化」は分解に対する安定化であることが記載されており,二本鎖RNA分子は細胞内で機能するものであるから,当業者であれば「安定化」とは細胞内での核酸の分解に対する安定化であることを理解でき,そのような手法は本件特許出願前当業者において既に周知の技術であった。
また,本件特許明細書の段落【0014】には,3’突出部の安定化に関する詳細な説明があり,当業者であれば,請求項3において意図する「安定化」がどのようなものかを理解できるから,不明確とはいえない。
…。

ちなみに、明細書中の図12、13の説明部分は下記の通り。

【0133】
3.2.2 21塩基のアンチセンスsiRNAと対合するセンスsiRNAの長さ変動
 RNAiに対するsiRNAの長さの影響を調べるために、本発明者は、3つの21塩基アンチセンス鎖と8つの18~25塩基センス鎖とを組み合わせて、3系統のsiRNA二本鎖を作製した。アンチセンスsiRNAの3’突出部は、各siRNA二本鎖系統における1、2または3塩基に固定したのに対し、センスsiRNAは、その3’末端で変動させた(図12A)。センスsiRNAの長さとは無関係に、アンチセンスsiRNAの2塩基の3’突出部を有する二本鎖(図12C)は、1または3塩基の3’突出部を有するもの(図12B、D)より活性が高いことがわかった。アンチセンスsiRNAの1塩基の3’突出部を有する第1の系統では、センスsiRNAの1および2塩基の3’突出部をそれぞれ有する、21および22塩基センスsiRNAの二本鎖の活性が最も高かった。19~25塩基のセンスsiRNAを有する二本鎖もRNAを媒介することができたが、程度は低かった。同様に、アンチセンスsiRNAの2塩基突出部を有する第2系統では、2塩基の3’突出部を有する21塩基のsiRNA二本鎖の活性が最も高く、18~25塩基のセンスsiRNAとのその他すべての組合せは、有意な程度まで活性であった。3塩基のアンチセンスsiRNA3’突出部を有する最後の系統では、20塩基のセンスsiRNAおよび2塩基のセンス3’突出部を有する二本鎖だけが標的RNA発現を減弱することができた。以上、これらの結果から、siRNAの長さと共に、3’突出部の長さが重要であることと、2塩基3’突出部を有する21塩基のsiRNAの二本鎖がRNAiには最適であることがわかる。
【0134】
3.2.3 一定の2塩基3’突出部を有するsiRNA二本鎖の長さ変動
 次に、本発明者は、対称の2塩基3’突出部を維持しながら、両siRNA鎖の長さを同時に変化させて生じる影響を調べた(図13A)。図11Hの21塩基のsiRNA二本鎖を基準として含む2系統のsiRNA二本鎖を作製した。センスsiRNA(図13B)の3’末端またはアンチセンスsiRNA(図13C)の3’末端で塩基対合部分を延長することにより、二本鎖の長さを20~25bpで変動させた。20~23bpの二本鎖は、標的ルシフェラーゼ活性の特異的抑制を起こしたが、21塩基のsiRNA二本鎖は、他の二本鎖のどちらと比較しても少なくとも8倍有効であった。24および25塩基のsiRNA二本鎖は、検出可能な干渉を全く起こさなかった。配列特異的効果は、二本鎖の両末端における変動が同様の効果を生じたため、わずかであった。

News Release
Alnylam Announces Tuschl II Key Patent Claims Upheld in Invalidation Trial in Japan
http://phx.corporate-ir.net/phoenix.zhtml?c=148005&p=irol-newsArticle&ID=1743020&highlight=


■タキソールを有効成分とする制癌剤: 平成17年(行ケ)第10818号審決取消請求事件


コメント: タキソールの対象疾患と投与量(包装された薬剤)を限定した特許について、サポート要件、新規性、進歩性が否定された事例。 無効審決維持。 ☆☆☆

サポート要件について>
クレームの概要は下記の通り。
 ・クレーム1:  固形癌、白血病又は卵巣癌(約135mg/m2~約275mg/m2
 ・クレーム2 固形癌又は白血病(175mg/m2より大で約275mg/m2以下)
 ・クレーム3 卵巣癌(175mg/m2より大で約275mg/m2以下)

本願実施例には「卵巣癌」の薬理データはあるが、「固形癌全般や白血病」の薬理データはない。
また、「135と175mg/m2」の薬理データはあるが、「175mg/m2より大で約275mg/m2以下(請求項2及び3)」の薬理データはない。
裁判所は、「特許請求の範囲に記載された本件特許発明2及び3は,発明の詳細な説明に記載された発明であるということはできない」、「結局,本件特許発明1は,本件特許発明2及び3を包含する関係にあることになる。 そうであれば,本件特許発明2及び3が発明の詳細な説明に記載された発明であるということができない以上,これを包含する本件特許発明1も発明の詳細な説明に記載された発明であるということはできない。」と判示した。 

<新規性について>
引例には、臨床試験(フェイズⅡ)のデータが記載されていた。原告は「有効性及び安全性は未だ試験中であって,確立されていない」、「発明未完成」と主張したが、認められなかった。

平成19年3月1日  知的財産高等裁判所
原告  ブリストル-マイヤーズスクイブカンパニー
被告  日本ケミカルリサーチ株式会社
請求項1  固形癌,白血病または卵巣癌に罹患し,かつ過敏症反応を軽減または最小化するために予備投薬されており,タキソールによる治療に伴う血液学的毒性を呈する恐れのある患者を治療するためのタキソールを含有する薬剤であって,約135mg/m2~約275mg/m2のタキソールが約3時間に渡り投与されるように,非経口投与用に包装された薬剤。

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