■プロダクトバイプロセス

■「ハイブリドーマXから生産される抗体」はPBPクレームの明確性を満たすと判断された事例

 
<審決紹介>
・不服2014-017732
・特許5924752
・請求日:
2014年9月5日
・審決日:201632
・審判官:田村明照、中島庸子、▲高▼美葉子
・請求人:国立大学法人広島大学


コメント:
昨年審査の運用が変更されてから、プロダクト・バイ・プロセス・クレーム(PBPクレーム)には「不可能・非実際的事情」が求められるようになりました。

(「不可能・非実際的事情」とは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情をいいます。「不可能・非実際的事情」が無いと判断された場合は、クレームの発明が不明確と判断されます。)


そして、ちょっと前になりますが、下記のクレームについて、「不可能・非実際的事情」の有無が判断されました。抗体特許ではよくあるクレーム形式ですので重要です。

「【請求項2
 FERM BP-11110またはFERM BP-11111の受託番号のもと寄託されたハイブリドーマから生産される、抗体またはその抗原結合性断片。」


審判官の判断は下記の通りで、「不可能・非実際的事情」が存在し、明確であると判断されました。まぁ...今更拒絶できないですよね。
この審決は、審査ハンドブック
に参考審決として引用されています。

「第3. 当審の判断
 当審の拒絶理由のうち、[理由1]の(1)、(3)、(4)、[理由2][理由3][理由4]の理由は、平成2815日付け手続補正書による補正によって解消したと認められる。
 そこで、当審の拒絶理由のうち、[理由1]の(2)の理由について、以下検討する。
 本願の請求項2には、「FERM BP-11110またはFERM BP-11111の受託番号のもと寄託されたハイブリドーマから生産される、抗体またはその抗原結合性断片。」と記載されており、「抗体」という物の発明について、「ハイブリドーマから生産される」という製造方法が記載されており、物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されていると認められる。
 
 しかし、最高裁判決(最判平成2765日 平成24年(受)第1204号、同2658号)によれば、物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている場合において、当該請求項の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(「不可能・非実際的事情」)が存在するときに限られると解するのが相当である、とされていることから、請求項2に係る発明が上記事情に該当するものであるかについて、以下検討する。

 まず、請求項2に記載される「ハイブリドーマ」は、発明の詳細な説明の段落【0127】や段落【0153】に記載されているように、「汗抗原組成物を免疫することによって得られるリンパ球」と「ミエローマ細胞」を融合して得られた典型的な「ハイブリドーマ」であるから、特定の「ハイブリドーマ」から生産される「抗体」(モノクローナル抗体)は、唯一つであることが技術常識から当業者において明らかである(必要であれば、「遺伝子工学キーワードブック」羊土社、1996425日発行、299頁『ハイブリドーマ』の項、「生化学事典(第2版)」東京化学同人、19901122日発行、993頁『ハイブリドーマ』の項参照。)。
 そして、請求項2に記載されるハイブリドーマは、「FERM BP-11110またはFERM BP-11111の受託番号のもと寄託され」ているから、「ハイブリドーマから生産される、抗体」は、該受託番号のハイブリドーマを寄託機関よりそれぞれ入手して抗体を生産すれば、請求項2の「抗体」を得ることができ、使用することができるのである。つまり、請求項2に「抗体」の化学構造(アミノ酸配列など)が記載されていなくても、「ハイブリドーマから生産される、抗体」と特定すれば、生産される「抗体」(モノクローナル抗体)は唯一つであり、その「抗体」を作り、使用できると認められる。この点については、審判請求人も平成2815日付け意見書において「一つのハイブリドーマが生産する抗体は一つであり、ハイブリドーマを特定すれば、抗体も一義的に特定されます。」と述べている。
一方、「ハイブリドーマから生産される、抗体」について、さらにその化学構造を特定しようとする場合、「抗体」は低分子化合物ではなく三次元構造を有する高分子量のタンパク質であるから、審判請求人が平成2815日付け意見書において主張するように、「抗体」の化学構造を決定するためには、時間、手間、さらには費用がかかると考えられる。
 
 したがって、上述したような技術常識の下、実施可能要件(「物の発明」について「その物を作れる」こと及び「その物を使用できる」こと)を満たしていることが明らかな抗体について、その「抗体」の化学構造を決定するためだけにそのような時間、手間、費用をかけることは「非実際的」であるといえ、また、そのために出願時期が遅くなることは、先願主義の見地からも「非実際的」であるといえる。しかも、本願に係る発明が属するバイオテクノロジー分野は、技術が急速に進歩している国際規模でも競争の激しい分野であり、迅速に特許出願をすることがきわめて重要であることから、なおさら「非実際的」であるという事情が存在する。

 そして、上記最高裁判決の補足意見では、「『およそ実際的でない』とは,出願時に当業者において,どちらかといえば技術的な観点というよりも,およそ特定する作業を行うことが採算的に実際的でない時間や費用が掛かり,そのような特定作業を要求することが,技術の急速な進展と国際規模での競争の激しい特許取得の場面においては余りにも酷であるとされる場合などを想定している。」とされており、上記事情は、この補足意見にいう「およそ実際的でない」事情に該当すると認められる。
 
 そうすると、請求項2の記載は、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(「不可能・非実際的事情」)が存在するとき、に該当すると認められ、したがって、請求項2は特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえる。
 また、同様の理由から、請求項3及び請求項4も「発明が明確であること」という要件に適合するといえる。
 したがって、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号の要件に適合すると認められる。
 
4. むすび
 以上のとおりであるから、本願については、当審が通知した拒絶理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
 よって、結論のとおり審決する。」



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■プラバスタチンNaのプロダクトバイプロセスクレームの最高裁判決


<判決紹介>

プロダクトバイプロセス(PBP)クレーム
の最高裁判決がでました。 破棄差戻し、だそうです。

大合議のときはあまり影響ないなと思っていましたが、これはちゃんと検討・対策しないとまずそうです。 これからいろんなところで解説されると思うので楽しみにしています。 最終的に侵害に持っていくのは難しいと思います。 ☆☆☆☆


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リンク
・平成24(受)1204特許権侵害差止請求事件、平成27年6月5日最高裁第二小法廷判決
・平成24()2658特許権侵害差止請求事件、平成2765日最高裁第二小法廷判決
・NHK
・時事ドットコム
・原審:平成22(ネ)10043特許権侵害差止請求控訴事件、平成24年1月27日知財高裁
・原審:平成23(ネ)10057特許権侵害差止請求控訴事件、平成24年8月9日知財高裁


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関連記事
・PBPクレーム大合議:プラバスタチンナトリウム、平成22(ネ)10043号特許権侵害差止請求控訴事件


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抜粋
主文
 原判決を破棄する。
 本件を知的財産高等裁判所に差し戻す。

理由
・・・
3
原審は,次のとおり判断して,上告人の請求を棄却すべきものとした。
(1)
物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法の記載がある場合における当該発明の技術的範囲は,当該物をその構造又は特性により直接特定することが出願時において不可能又は困難であるとの事情が存在するときでない限り,特許請求の範囲に記載された製造方法により製造される物に限定して確定されるべきである。
(2)
本件発明には上記(1)の事情が存在するとはいえないから,本件発明の技術的範囲は,当該製造方法により製造された物に限定して確定されるべきである。そして,被上告人製品の製造方法は,少なくとも本件特許請求の範囲に記載されている「a)プラバスタチンの濃縮有機溶液を形成」することを含むものではないから,被上告人製品は,本件発明の技術的範囲に属しない。

4
しかしながら,原審の示した上記3(1)の基準は是認することができず,そうすると,それを前提とした上記3(2)の判断も是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1)
願書に添付した特許請求の範囲の記載は,これに基づいて,特許発明の技術的範囲が定められ(特許法701項),かつ,同法29条等所定の特許の要件について審査する前提となる特許出願に係る発明の要旨が認定される(最高裁昭和62年(行ツ)第3号平成338日第二小法廷判決・民集第453123頁参照)という役割を有しているものである。そして,特許は,物の発明,方法の発明又は物を生産する方法の発明についてされるところ,特許が物の発明についてされている場合には,その特許権の効力は,当該物と構造,特性等が同一である物であれば,その製造方法にかかわらず及ぶこととなる。
したがって,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合であっても,その特許発明の技術的範囲は,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として確定されるものと解するのが相当である。

(2)
ところで,特許法3662号によれば,特許請求の範囲の記載は,「発明が明確であること」という要件に適合するものでなければならない。特許制度は,発明を公開した者に独占的な権利である特許権を付与することによって,特許権者についてはその発明を保護し,一方で第三者については特許に係る発明の内容を把握させることにより,その発明の利用を図ることを通じて,発明を奨励し,もって産業の発達に寄与することを目的とするものであるところ(特許法1条参照),同法3662号が特許請求の範囲の記載において発明の明確性を要求しているのは,この目的を踏まえたものであると解することができる。この観点からみると,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されているあらゆる場合に,その特許権の効力が当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物に及ぶものとして特許発明の技術的範囲を確定するとするならば,これにより,第三者の利益が不当に害されることが生じかねず,問題がある。すなわち,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲において,その製造方法が記載されていると,一般的には,当該製造方法が当該物のどのような構造若しくは特性を表しているのか,又は物の発明であってもその特許発明の技術的範囲を当該製造方法により製造された物に限定しているのかが不明であり,特許請求の範囲等の記載を読む者において,当該発明の内容を明確に理解することができず,権利者がどの範囲において独占権を有するのかについて予測可能性を奪うことになり,適当ではない。
他方,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲においては,通常,当該物についてその構造又は特性を明記して直接特定することになるが,その具体的内容,性質等によっては,出願時において当該物の構造又は特性を解析することが技術的に不可能であったり,特許出願の性質上,迅速性等を必要とすることに鑑みて,特定する作業を行うことに著しく過大な経済的支出や時間を要するなど,出願人にこのような特定を要求することがおよそ実際的でない場合もあり得るところである。そうすると,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法を記載することを一切認めないとすべきではなく,上記のような事情がある場合には,当該製造方法により製造された物と構造,特性等が同一である物として特許発明の技術的範囲を確定しても,第三者の利益を不当に害することがないというべきである。
以上によれば,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において,当該特許請求の範囲の記載が特許法3662号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情が存在するときに限られると解するのが相当である。

5
以上と異なり,物の発明についての特許に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において,そのような特許請求の範囲の記載を一般的に許容しつつ,その特許発明の技術的範囲は,原則として,特許請求の範囲に記載された製造方法により製造された物に限定して確定されるべきものとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,本判決の示すところに従い,本件発明の技術的範囲を確定し,更に本件特許請求の範囲の記載が上記4(2)の事情が存在するものとして「発明が明確であること」という要件に適合し認められるものであるか否か等について審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。なお,裁判官千葉勝美の補足意見,裁判官山本庸幸の意見がある。
裁判官千葉勝美の補足意見は,次のとおりである。
・・・。


■PBPクレーム大合議:プラバスタチンナトリウム、平成22(ネ)10043号特許権侵害差止請求控訴事件


<判決紹介>
平成22(ネ)10043号特許権侵害差止請求控訴事件


■コメント: 今更な気もしますが、プロダクトバイプロセスクレームの知財高裁 大合議判決のご紹介。 仕事で同クレームの話が出てきたのでついでに要点をまとめておきます。 実務に大きな影響はなさそうです。 鑑定書は作りやすくなったと思います。

判決文はこちらから


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■要点
・技術的範囲
本件発明は不真正→製法限定で解釈→被告製品は工程a)非充足→技術的範囲外→非侵害
・要旨認定
本件発明は不真正→製法限定で認定→先行文献から容易→権利行使不可(104条の3①)


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■概要
・平成22(ネ)10043号特許権侵害差止請求控訴事件
・平成24年1月27日判決言渡 知的財産高等裁判所特別部
・控訴人: テバ ジョジセルジャール ザートケルエン ムケド レースベニュタール シャシャーグ
・被控訴人: 協和発酵キリン株式会社
・請求項1: 
次の段階:
  a)プラバスタチンの濃縮有機溶液を形成し,
  b)そのアンモニウム塩としてプラバスタチンを沈殿し,
  c)再結晶化によって当該アンモニウム塩を精製し,
  d)当該アンモニウム塩をプラバスタチンナトリウムに置き換え,そして
  e)プラバスタチンナトリウム単離すること,
  を含んで成る方法によって製造される,プラバスタチンラクトンの混入量が0.5重量%未満であり,エピプラバの混入量が0.2重量%未満であるプラバスタチンナトリウム。


裁判所は、技術的範囲の解釈において、プロダクトバイプロセスクレームを「真性」と「不真性」に分類して、下記のように判断しました。

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裁判所: 「(2) 特許権侵害訴訟における特許発明の技術的範囲の確定について

…プロダクト・バイ・プロセス・クレームには,「物の特定を直接的にその構造又は特性によることが出願時において不可能又は困難であるとの事情が存在するため,製造方法によりこれを行っているとき」

(本件では,このようなクレームを,便宜上「真正プロダクト・バイ・プロセス・クレーム」ということとする。)と,

「物の製造方法が付加して記載されている場合において,当該発明の対象となる物を,その構造又は特性により直接的に特定することが出願時において不可能又は困難であるとの事情が存在するとはいえないとき」

(本件では,このようなクレームを,便宜上「不真正プロダクト・バイ・プロセス・クレーム」ということとする。)

の2種類があることになるから,これを区別して検討を加えることとする。
そして,前記アによれば,真正プロダクト・バイ・プロセス・クレームにおいては,当該発明の技術的範囲は,「特許請求の範囲に記載された製造方法に限定されることなく,同方法により製造される物と同一の物」と解釈されるのに対し,不真正プロダクト・バイ・プロセス・クレームにおいては,当該発明の技術的範囲は,「特許請求の範囲に記載された製造方法により製造される物」に限定されると解釈されることになる。」
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さらに、立証責任は特許権者が負うと判断しました。

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裁判所: 「また,特許権侵害訴訟における立証責任の分配という観点からいうと,物の発明に係る特許請求の範囲に,製造方法が記載されている場合,その記載は文言どおりに解釈するのが原則であるから,真正プロダクト・バイ・プロセス・クレームに該当すると主張する者において「物の特定を直接的にその構造又は特性によることが出願時において不可能又は困難である」ことについての立証を負担すべきであり,もしその立証を尽くすことができないときは,不真正プロダクト・バイ・プロセス・クレームであるものとして,発明の技術的範囲を特許請求の範囲の文言に記載されたとおりに解釈・確定するのが相当である。」
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さらに、上記の解釈は104条の3の抗弁(無効の抗弁)の要旨認定でも同様である、と判断しました。

なお、本件に関して、裁判所は「乙30発明も,本件発明1で特定される工程a)~工程e)を備えるものである…29条2項に違反してなされたもの」と述べています。
即ち、方法が一致している点で、技術的範囲の解釈のときとは状況が若干異なります。

・技術的範囲の解釈 → 被告製品は「方法不一致×物同一」 → 「構成要件非充足」
・要旨認定 → 乙30発明は「方法一致×物同程度(本件発明1は不純物量が限定されている)」→「進歩性欠如」

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裁判所: 「法104条の3は,「特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において,当該特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるときは,特許権者又は専用実施権者は,相手方に対しその権利を行使することができない。」と規定するが,法104条の3に係る抗弁の成否を判断する前提となる発明の要旨は,上記特許無効審判請求手続において特許庁(審判体)が把握すべき請求項の具体的内容と同様に認定されるべきである。
すなわち,本件のように,「物の発明」に係る特許請求の範囲にその物の「製造方法」が記載されている前記プロダクト・バイ・プロセス・クレームの場合の発明の要旨の認定については,前述した特許権侵害訴訟における特許発明の技術的範囲の認定方法の場合と同様の理由により,
① 発明の対象となる物の構成を,製造方法によることなく,物の構造又は特性により直接的に特定することが出願時において不可能又は困難であるとの事情が存在するときは,その発明の要旨は,特許請求の範囲に記載された製造方法に限定されることなく,「物」一般に及ぶと認定されるべきであるが(真正プロダクト・バイ・プロセス・クレーム),
② 上記①のような事情が存在するといえないときは,その発明の要旨は,記載された製造方法により製造された物に限定して認定されるべきである(不真正プロダクト・バイ・プロセス・クレーム)。
上記の観点から本件を検討するに,本件特許には,上記①にいう不可能又は困難であるとの事情の存在が認められないことは前述のとおりであるから,特許無効審判請求における発明の要旨の認定に際しても,特許請求の範囲に記載されたとおりの製造方法により製造された物として,その手続を進めるべきものと解され,法104条の3に係る抗弁においても同様に解すべきである

…そして,本件発明1は,クレームに特定される工程a)~工程e)によって高純度のプラバスタチンナトリウムを得るものであるが,乙30発明も,本件発明1で特定される工程a)~工程e)を備えるものであるから,乙30文献に記載された精製方法によって,本件発明1で達成できた純度が達成できないとは考えられず,そのようにして達成された高度に精製されたプラバスタチンナトリウム塩の純度は,本件明細書の実施例と同程度であると考えられる。
さらに,不純物がより少ない方がよいことは技術常識であるから,この高度に精製されたプラバスタチンナトリウム塩について,低減すべき不純物の含有量の上限値を特定することも,当業者の容易になし得ることである。
したがって,本件発明1は,乙30発明並びに乙1文献及び技術常識によって,当業者が容易に想到し得た発明であると認められる。

…以上のとおり,本件発明1は,乙30発明並びに乙1文献及び技術常識から本件優先日当時当業者が容易に発明することができたものと認められるから,法29条2項に違反してなされたものであり,特許無効審判において無効にされるべきものである。」
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■プラバスタチンNa 平成19年(ワ)第35324号 特許権侵害差止請求事件


コメント: プロダクトバイプロセスクレームは製法に限定されるか、が問われた事例。 今回は限定して解釈された。おそらく今後もプロダクトバイプロセスクレームの権利行使(製法は異なる)が上手くいくことはなさそうな印象。 今回はOA応答時に物クレームを削除しているため特に難しい。 原告は請求項1は「製造方法を考慮しなければ構成の特定ができないというものではない。」と述べている。
本件の控訴審が大合議で審理されることに決まったらしい(2011/7/26日経新聞)。
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徳重大輔


Author: 徳重大輔

バイオ、医薬、特許関連のブログです。
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SK特許業務法人に勤務しています。明細書作成、特許調査、その他一通りやってます。明細書はバイオ医薬(特に抗体医薬)、調査は無効資料調査が特に得意です。

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