■2011-12-

■臭気中和化および液体吸収性廃棄物袋: 平成22年(行ケ)第10351号審決取消請求事件


コメント: 引例に周知技術を適用する場合でも、理由が大事ということを判示した例。 ☆☆

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■IPODとNPMDの業務一元化


特許メモ: 日本の寄託機関には、IPOD(産総研)とNPMDNITE)の2つがありますが、IPODの業務がNITEへ承継されることになりました(平成244月)。  細菌や動物細胞等はNPMDが、植物細胞等はNITE-IPODが受託するそうです。
http://www.nbrc.nite.go.jp/npmd/20111116.html

tag : 寄託

■うっ血性心不全の治療へのカルバゾール化合物: 平成23年(行ケ)第10018号審決取消請求事件


コメント:  顕著な効果の看過が決め手となった事例。  訂正発明には「虚血性心不全患者の死亡率の危険性が67%減少」という効果がある。  主引例である刊行物Aでは、「治療効果」は測定しているが「死亡率」は測定していない。 本判決では、主引例が測定していなかった値の効果が問題になっている。 

本件特許は、カルベジロールを虚血性心不全患者に6ヵ月以上投与したら、死亡率の危険性が67%減少したという実施例に基づく特許。 原告は下記の点を説明した。

 ・刊行物B等は虚血性・非虚血性に共通する技術常識、カルベジロールを含む全てのβ遮断薬の技術常識を示すものではない
 ・虚血性(本願)と非虚血性の違い
 ・治療と死亡率改善(本願)は異なる
 ・短期間と長期間(本願)の試験は異なる
 ・虚血性の心不全に対して死亡率の危険性を67%減少させた、という顕著な効果

なお、刊行物Aには「カルベジロールで症状改善」の記載はあるが、「死亡率改善」の記載がない。 死亡率改善に関しては、甲212等に「16ないし27%減少」の記載があるが、本願よりも明らかに低い。 しかも、甲212等は「β遮断薬(本願)」ではなく「ACE阻害剤」の例であり、対象も「非虚血性心不全患者(本願)」ではなく「虚血性と非虚血性を含む心不全患者」であった。 甲20にはβ遮断薬であるビソプロロールを虚血性心不全患者に投与したことが記載されているが、死亡率は改善していない。

ただ、構成だけを見ると、本願と刊行物Aの相違は小さいように思われる。 効果に関して、被告は「単なる効果の確認に過ぎない」と反論しているが、死亡率の減少量に関しては言及していない。
裁判所は、「
被告の論旨は,原告主張に係る取消事由4(「死亡率の減少が予測を超えた顕著性を有する」)に対しては,有効な反論と評価することはできず」と結論づけた。 ☆☆☆


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▼原告
「1  取消事由に関する原告の主張
…。
(4)  顕著な作用効果を看過した誤り(取消事由4)
ア  訂正発明1には以下のとおり顕著な作用効果があるところ,審決には,これを看過した上で,訂正発明1が容易想到であると判断した誤りがある。
イ  訂正発明1は,虚血性の心不全に対して,「全ての原因での死亡率が危険性を67%減少させた。」という従来技術から到底予想もつかない顕著な作用効果を奏するものである。
β遮断薬について,本願優先日前に大規模臨床試験が行われたMDC試験(メトプロロール)とCIBIS試験(ビソプロロール)では,死亡率改善効果に有意差は認められなかった。また,本願優先日当時に心不全に対する死亡率減少効果が認められていたACE阻害薬であるエナラプリルによるうっ血性心不全患者の死亡率減少は16~27%であった。
これらと比較すると,訂正発明1の作用効果は,本願優先日当時,従来技術から当業者が予想もつかない顕著なものであった。
ウ  訂正発明1は,通常の心不全の進展,心筋虚血による死亡を抑えることに加え,心不全において死亡原因として高い割合を占めていた突然死をも抑制した。
心不全は,心不全の悪化ではなく突然死による死亡割合が高い病気であり,駆出率等の改善は死亡率減少効果に結びつかず,また,生命予後の代用評価指標となるものも現在まで見つかっていない。
心不全の死亡率低減を期待させる薬剤であっても,突然死への効果は予測できず,どの程度の死亡率低減効果を奏するかについて,他の薬剤の結果や少数例のパイロット試験結果などから予測することは不可能である。
本 願優先日当時,β遮断薬であるメトプロロールや心不全の死亡率低減効果が認められ治療に使用され始めていたACE阻害薬において,突然死抑制への効果は認 められておらず,このことからも,虚血性及び非虚血性の心不全両方に対して,実質的に同等で,しかも,全ての原因で死亡率が67%減少するという訂正発明 1の効果を予測することは,不可能である。
エ  以上のとおり,訂正発明1は,従来技術から予想できない,顕著な作用効果を奏するものである。」

▼被告
「2  被告の反論
…。
(4)  顕著な作用効果を看過した誤り(取消事由4)に対して
訂正発明1は治療目的の投与と何ら差異のない構成であり,当業者がその効果を期待できると評価していたといえることから,たとえ,その効果が学術的に価値あるものであったとしても,それは単なる効果の確認に過ぎない。
そして,うっ血性心不全という生命に直接関与する心臓という臓器に関する疾患であるから,その治療目的の投与と死亡率減少目的の投与とは実質的には区別できず,死亡率の減少は治療の延長線上にあるといい得る。
したがって,たとえ学術的に価値のある効果であったとしても,これをもって訂正発明1の進歩性を認めることはできない。」

▼裁判所
「第4  当裁判所の判断
…。
オ  被告の主張に対して
こ の点,被告は,訂正発明1に係る特許請求の範囲において,「死亡率の減少」という効果に係る臨界的意義と関連する構成が記載されておらず,訂正発明1は, 薬剤の使用態様としては,この分野で従来行われてきた治療のための使用態様と差異がなく,カルベジロールをうっ血性心不全患者に対して「治療」のために投 与することと明確には区別できないことから,死亡率の減少は単なる発見にすぎないことを理由に,訂正発明1が容易想到であるとした審決の判断に,違法はな い旨主張する。
しかし,被告の主張は,以下のとおり採用の限りでない。
す なわち,特許法29条2項の容易想到性の有無の判断に当たって,特許請求の範囲に記載されていない限り,発明の作用,効果の顕著性等を考慮要素とすること が許されないものではない(この点は,例えば,遺伝子配列に係る発明の容易想到性の有無を判断するに当たって,特許請求の範囲には記載されず,発明の詳細 な説明欄にのみ記載されている効果等を総合考慮することは,一般的に合理的な判断手法として許容されているところである。)。
ま た,カルベジロールをうっ血性心不全患者に対して「治療」のために投与する例が従来から存在すること,及び「治療」目的と「死亡率減少」目的との間には, 相互に共通する要素があり得ることは,原告主張に係る取消理由2の4に対する反論としては,成り立ち得ないではない。すなわち,「『死亡率の減少』との効 果が存在することのみによって,直ちに当該発明が容易想到でないとはいえない」という限りにおいては,合理的な反論になり得るといえよう。しかし,被告の論旨は,原告主張に係る取消事由4(「死亡率の減少が予測を超えた顕著性を有する」)に対しては,有効な反論と評価することはできず,その点は,既に述べたとおりである。
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プロフィール

徳重大輔


Author: 徳重大輔

バイオ、医薬、特許関連のブログです。
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SK特許業務法人に勤務しています。明細書作成、特許調査、その他一通りやってます。明細書はバイオ医薬(特に抗体医薬)、調査は無効資料調査が特に得意です。

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