■2012-01-

■タキソールを有効成分とする制癌剤: 平成17年(行ケ)第10818号審決取消請求事件


コメント: タキソールの対象疾患と投与量(包装された薬剤)を限定した特許について、サポート要件、新規性、進歩性が否定された事例。 無効審決維持。 ☆☆☆

サポート要件について>
クレームの概要は下記の通り。
 ・クレーム1:  固形癌、白血病又は卵巣癌(約135mg/m2~約275mg/m2
 ・クレーム2 固形癌又は白血病(175mg/m2より大で約275mg/m2以下)
 ・クレーム3 卵巣癌(175mg/m2より大で約275mg/m2以下)

本願実施例には「卵巣癌」の薬理データはあるが、「固形癌全般や白血病」の薬理データはない。
また、「135と175mg/m2」の薬理データはあるが、「175mg/m2より大で約275mg/m2以下(請求項2及び3)」の薬理データはない。
裁判所は、「特許請求の範囲に記載された本件特許発明2及び3は,発明の詳細な説明に記載された発明であるということはできない」、「結局,本件特許発明1は,本件特許発明2及び3を包含する関係にあることになる。 そうであれば,本件特許発明2及び3が発明の詳細な説明に記載された発明であるということができない以上,これを包含する本件特許発明1も発明の詳細な説明に記載された発明であるということはできない。」と判示した。 

<新規性について>
引例には、臨床試験(フェイズⅡ)のデータが記載されていた。原告は「有効性及び安全性は未だ試験中であって,確立されていない」、「発明未完成」と主張したが、認められなかった。

平成19年3月1日  知的財産高等裁判所
原告  ブリストル-マイヤーズスクイブカンパニー
被告  日本ケミカルリサーチ株式会社
請求項1  固形癌,白血病または卵巣癌に罹患し,かつ過敏症反応を軽減または最小化するために予備投薬されており,タキソールによる治療に伴う血液学的毒性を呈する恐れのある患者を治療するためのタキソールを含有する薬剤であって,約135mg/m2~約275mg/m2のタキソールが約3時間に渡り投与されるように,非経口投与用に包装された薬剤。

スポンサーサイト

■ファイザー GE薬のレバミピド錠「ファイザー」を発売


医薬メモ: ファイザー(株)は、胃炎・胃潰瘍治療剤レバミピド錠100mg「ファイザー」(日本薬局方 レバミピド錠)を1月12日に発売する(2012.1.6同社ニュースリリースより)。
「つたわるフォント」の採用、含量表示とPTPシートの工夫といった医療安全を考慮した製品認識性向上の取り組みがされている。同剤は、エスタブリッシュ医薬品事業部門が扱う。 同部門では、これまでレバミピド錠を含め16成分、32品目の後発医薬品を販売している。

 レバミピド(Rebamipide): プロスタグランジン(PG)の産生を促進させることで胃壁を守る粘膜を増やし、胃粘膜の血流を促すことで、胃の胃酸に対する防御機能を高め、胃炎や胃潰瘍の治癒を促進する働きがある。ムコスタ(Mucosta、登録商標第2330326号)の商品名で大塚製薬から発売されている。同社のRebamipide関連特許は複数あるが、そのうち特許2812998は平成20年(行ケ)第10366号審決取消請求事件で進歩性欠如の無効審決が維持されている(一昨日のブログ参照)。 期間満了済。
・特許2812998 請求項1: 2-(4-クロルベンゾイルアミノ)-3-(2-キノロン-4-イル)プロピオン酸またはその塩を有効成分とする,胆汁酸の胃内への逆流に起因する胃炎の治療剤。

♪ エスタブリッシュ医薬品事業部門: 日本ファイザーにおいて、ジェネリック医薬品を扱う事業部門。 ファイザーでは、医療の現場で広く、長く使われてきた実績があり、特許が切れた医薬品をエスタブリッシュ医薬品と呼んでいる。 エスタブリッシュ医薬品は、特許の切れた自社の長期収載品と後発医薬品を含む。 下記の「ファイザー 後発医薬品特設サイト」に詳しい情報が記載されている。
https://pfizerpro.jp/lp/establish-g/top.html

■第2医薬用途の進歩性: 胆汁酸の胃内への逆流に起因する胃炎の治療剤、平成20年(行ケ)第10366号 審決取消請求事件


平成21年9月30日判決言渡
原告: 大塚製薬株式会社
被告: 大正薬品工業株式会社
請求項1: 2-(4-クロルベンゾイルアミノ)-3-(2-キノロン-4-イル)プロピオン酸またはその塩を有効成分とする,胆汁酸の胃内への逆流に起因する胃炎の治療剤。

コメント: 第2医薬用途の進歩性が認められなかった事例。
1用途は「胃潰瘍治療剤」で、第2用途は「胆汁酸の胃内への逆流に起因する胃炎の治療剤」。 胃炎と胃潰瘍は、普通に考えれば発症機序にかなり関係性がありそうなので、進歩性をだすのは難しそうな印象。 裁判所の進歩性の判断に当たっては、下記の点が考慮されている。☆☆

 ・胃潰瘍と胃炎の病態・発症機序が異なるとする確立した見解はなかった。
 ・胃潰瘍治療剤の中に胃炎治療剤としての用途を有するものが多数存在する。
 ・本件明細書には,本件化合物の抑制率が77%であるとの記載はあるものの,その記載のみをもって,本件特許発明をすることが容易ではなかったことの根拠として評価することができるかは疑問である(シメチジンの抑制率は2%(甲18))。
 ・シメチジンより酸分泌抑制効果に関して内視鏡改善度の高い胃炎治療剤が複数存在すること(甲56)に照らし,シメチジンとの比較のみで顕著な効果が示されたとすることができるかは疑問であること。 

-----------------------------------------------------------------
裁判所: 「第5 当裁判所の判断
当裁判所は,本件特許を無効であるとした審決には誤りがないと判断する。その理由は,以下のとおりである。物質の用途発明について,新規に発見した属性(用途)が,当業者において容易に想到し得たものであるか否かは,当該発明の属する技術分野における公知技術や技術常識を基礎として判断すべきであることはいうまでもない。

本件についてみると,本件出願前に,「胃潰瘍治療剤」としての薬効が知られている場合,当業者が,「胃炎治療剤」としての薬効も存在するとの技術思想に容易 に想到し得たか否かは,
①「胃潰瘍」と「胃炎」の病態・発症機序における相違の有無,
②「胃潰瘍治療剤」と「胃炎治療剤」の作用機序における相違の有無,
③「胃潰瘍治療剤」と「胃炎治療剤」の双方に効果のある他の薬剤の比較,検討,
④本件化合物の胃炎治療への適用を阻害する要素の有無等
を総合的に考慮 して判断すべきである。以下,上記の観点から検討する。」
-----------------------------------------------------------------

PR


プロフィール

徳重大輔


Author: 徳重大輔

バイオ、医薬、特許関連のブログです。
業界動向や知財判決などの情報をアップしていきます。

SK特許業務法人に勤務しています。明細書作成、特許調査、その他一通りやってます。明細書はバイオ医薬(特に抗体医薬)、調査は無効資料調査が特に得意です。

お問い合わせはbiopatentblog@gmail.com(@は半角)へお願いします。

QR code

QR

RSSリンク