■2012-03-

■3月に話題の新会社: バイオロジクス、ジャパンワクチン、AbbVie


3月にニュースになった新しい製薬会社を紹介します。

協和キリン富士フイルムバイオロジクス株式会社 
<3月27日、協和キリン>
富士フイルム株式会社と協和発酵キリン株式会社は、バイオシミラー医薬品の開発、製造、販売の合弁会社「協和キリン富士フイルムバイオロジクス株式会社」を発足したと発表しました。
3月27日設立。 資本金1億円(出資比率: 富士フイルム50%、協和キリン50%)。
まず、アダリムマブのバイオシミラー医薬品の開発を行うそうです。 2013年初めに臨床試験をスタート予定。

ジャパンワクチン株式会社 
<3月2日、第一三共株式会社>
グラクソ・スミスクライン・バイオロジカルズ(ベルギー)、グラクソ・スミスクライン株式会社と、第一三共株式会社は、日本国内でワクチン事業を展開する合弁会社「ジャパンワクチン株式会社」を設立することで合意し、契約を締結したと発表しました。
4月2日設立。 資本金1億円(出資比率: GSK 50%、第一三共50%)。
両社が保有する予防ワクチン製品に関する開発権ならびに販売権を継承し、日本国内における臨床開発、マーケティング、ならびに営業活動を行うそうです。

AbbVie 
<3月26日、アボット ジャパン株式会社>
米医薬品・医療器具大手のアボット・ラボラトリーズは2012年に会社分割を行い、研究開発型製薬企業(新薬を扱う)と、メディカルプロダクト企業(GE、医療機器、診断薬、栄養剤等を扱う)の独立した2社を設立する予定です。
3月26日のプレスリリースによれば、研究開発型製薬企業の名前がAbbVieに決まったそうです。 ヒュミラ、Lupron、シナジス、カレトラ、クレオン、Synthroid等を扱います。 メディカルプロダクト企業はこれまで通りアボットの社名を使用するそうです。

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■米国医薬: アムジェンのエリスロポエチン関連製品の独占が崩れたという話


情報をいただいたので紹介します。 
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Amgenが透析患者の貧血治療用製剤としてエリスロポエチン関連製品を独占していましたが、その独占が崩れたそうです。 Affymaxという会社が"Omontys"というペプチド製品を開発し、FDAが承認したそうです。
エスポは歴史上最も販売額の多いバイオ医薬なので、そのインパクトは結構大きいと思います。 (提供:宍戸知行弁理士)
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関連URL: New York Times
http://www.nytimes.com/2012/03/28/health/policy/fda-approves-new-anemia-drug.html?pagewanted=1&_r=2&sq=amgen&st=cse&scp=2

 Unlike the drugs found to infringe Amgen’s patent, Omontys is not a version of the Epo protein made in living cells. It consists of two small protein fragments, called peptides, that are made chemically and do not share amino acid sequences with Epo, according to Affymax. 」


アムジェンのEPO特許を回避するような製剤を、Affymaxが開発しFDAの承認を受けたという話のようです。
上記URLによれば、欧州の特許は切れているようです。 日本では、日本ケミカルリサーチとキッセイ薬品がエリスロポエチン製剤のバイオシミラーを共同開発し、
現在、キッセイ薬品から販売されています。

■PBPクレーム大合議:プラバスタチンナトリウム、平成22(ネ)10043号特許権侵害差止請求控訴事件


<判決紹介>
平成22(ネ)10043号特許権侵害差止請求控訴事件


■コメント: 今更な気もしますが、プロダクトバイプロセスクレームの知財高裁 大合議判決のご紹介。 仕事で同クレームの話が出てきたのでついでに要点をまとめておきます。 実務に大きな影響はなさそうです。 鑑定書は作りやすくなったと思います。

判決文はこちらから


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■要点
・技術的範囲
本件発明は不真正→製法限定で解釈→被告製品は工程a)非充足→技術的範囲外→非侵害
・要旨認定
本件発明は不真正→製法限定で認定→先行文献から容易→権利行使不可(104条の3①)


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■概要
・平成22(ネ)10043号特許権侵害差止請求控訴事件
・平成24年1月27日判決言渡 知的財産高等裁判所特別部
・控訴人: テバ ジョジセルジャール ザートケルエン ムケド レースベニュタール シャシャーグ
・被控訴人: 協和発酵キリン株式会社
・請求項1: 
次の段階:
  a)プラバスタチンの濃縮有機溶液を形成し,
  b)そのアンモニウム塩としてプラバスタチンを沈殿し,
  c)再結晶化によって当該アンモニウム塩を精製し,
  d)当該アンモニウム塩をプラバスタチンナトリウムに置き換え,そして
  e)プラバスタチンナトリウム単離すること,
  を含んで成る方法によって製造される,プラバスタチンラクトンの混入量が0.5重量%未満であり,エピプラバの混入量が0.2重量%未満であるプラバスタチンナトリウム。


裁判所は、技術的範囲の解釈において、プロダクトバイプロセスクレームを「真性」と「不真性」に分類して、下記のように判断しました。

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裁判所: 「(2) 特許権侵害訴訟における特許発明の技術的範囲の確定について

…プロダクト・バイ・プロセス・クレームには,「物の特定を直接的にその構造又は特性によることが出願時において不可能又は困難であるとの事情が存在するため,製造方法によりこれを行っているとき」

(本件では,このようなクレームを,便宜上「真正プロダクト・バイ・プロセス・クレーム」ということとする。)と,

「物の製造方法が付加して記載されている場合において,当該発明の対象となる物を,その構造又は特性により直接的に特定することが出願時において不可能又は困難であるとの事情が存在するとはいえないとき」

(本件では,このようなクレームを,便宜上「不真正プロダクト・バイ・プロセス・クレーム」ということとする。)

の2種類があることになるから,これを区別して検討を加えることとする。
そして,前記アによれば,真正プロダクト・バイ・プロセス・クレームにおいては,当該発明の技術的範囲は,「特許請求の範囲に記載された製造方法に限定されることなく,同方法により製造される物と同一の物」と解釈されるのに対し,不真正プロダクト・バイ・プロセス・クレームにおいては,当該発明の技術的範囲は,「特許請求の範囲に記載された製造方法により製造される物」に限定されると解釈されることになる。」
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さらに、立証責任は特許権者が負うと判断しました。

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裁判所: 「また,特許権侵害訴訟における立証責任の分配という観点からいうと,物の発明に係る特許請求の範囲に,製造方法が記載されている場合,その記載は文言どおりに解釈するのが原則であるから,真正プロダクト・バイ・プロセス・クレームに該当すると主張する者において「物の特定を直接的にその構造又は特性によることが出願時において不可能又は困難である」ことについての立証を負担すべきであり,もしその立証を尽くすことができないときは,不真正プロダクト・バイ・プロセス・クレームであるものとして,発明の技術的範囲を特許請求の範囲の文言に記載されたとおりに解釈・確定するのが相当である。」
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さらに、上記の解釈は104条の3の抗弁(無効の抗弁)の要旨認定でも同様である、と判断しました。

なお、本件に関して、裁判所は「乙30発明も,本件発明1で特定される工程a)~工程e)を備えるものである…29条2項に違反してなされたもの」と述べています。
即ち、方法が一致している点で、技術的範囲の解釈のときとは状況が若干異なります。

・技術的範囲の解釈 → 被告製品は「方法不一致×物同一」 → 「構成要件非充足」
・要旨認定 → 乙30発明は「方法一致×物同程度(本件発明1は不純物量が限定されている)」→「進歩性欠如」

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裁判所: 「法104条の3は,「特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟において,当該特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるときは,特許権者又は専用実施権者は,相手方に対しその権利を行使することができない。」と規定するが,法104条の3に係る抗弁の成否を判断する前提となる発明の要旨は,上記特許無効審判請求手続において特許庁(審判体)が把握すべき請求項の具体的内容と同様に認定されるべきである。
すなわち,本件のように,「物の発明」に係る特許請求の範囲にその物の「製造方法」が記載されている前記プロダクト・バイ・プロセス・クレームの場合の発明の要旨の認定については,前述した特許権侵害訴訟における特許発明の技術的範囲の認定方法の場合と同様の理由により,
① 発明の対象となる物の構成を,製造方法によることなく,物の構造又は特性により直接的に特定することが出願時において不可能又は困難であるとの事情が存在するときは,その発明の要旨は,特許請求の範囲に記載された製造方法に限定されることなく,「物」一般に及ぶと認定されるべきであるが(真正プロダクト・バイ・プロセス・クレーム),
② 上記①のような事情が存在するといえないときは,その発明の要旨は,記載された製造方法により製造された物に限定して認定されるべきである(不真正プロダクト・バイ・プロセス・クレーム)。
上記の観点から本件を検討するに,本件特許には,上記①にいう不可能又は困難であるとの事情の存在が認められないことは前述のとおりであるから,特許無効審判請求における発明の要旨の認定に際しても,特許請求の範囲に記載されたとおりの製造方法により製造された物として,その手続を進めるべきものと解され,法104条の3に係る抗弁においても同様に解すべきである

…そして,本件発明1は,クレームに特定される工程a)~工程e)によって高純度のプラバスタチンナトリウムを得るものであるが,乙30発明も,本件発明1で特定される工程a)~工程e)を備えるものであるから,乙30文献に記載された精製方法によって,本件発明1で達成できた純度が達成できないとは考えられず,そのようにして達成された高度に精製されたプラバスタチンナトリウム塩の純度は,本件明細書の実施例と同程度であると考えられる。
さらに,不純物がより少ない方がよいことは技術常識であるから,この高度に精製されたプラバスタチンナトリウム塩について,低減すべき不純物の含有量の上限値を特定することも,当業者の容易になし得ることである。
したがって,本件発明1は,乙30発明並びに乙1文献及び技術常識によって,当業者が容易に想到し得た発明であると認められる。

…以上のとおり,本件発明1は,乙30発明並びに乙1文献及び技術常識から本件優先日当時当業者が容易に発明することができたものと認められるから,法29条2項に違反してなされたものであり,特許無効審判において無効にされるべきものである。」
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■カナダのsmall entityは厳しい(特許規則3.02 条)


カナダにも米国と同じように、スモールエンティティ(small entity)の
制度があります。 出願人がsmall entityに該当すると、いくつかの特許庁費用が半額になります。 但し条件は米国よりも厳しいです。 また過去の判決や用語の不明確性を考慮すると、多少の減額に対してリスクが大きいので、あまりお勧めはできません…。

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3.01
(1) Subject to section 3.02, a small entity declaration
  (a) shall be filed with the Commissioner by the authorized correspondent, in the case of an application, or by the patentee, in the case of a patent;
  (b) may be filed as part of the petition or as a separate document;
  (c) shall, if not filed as part of the petition, identify the application or patent to which it relates;
  (d) shall contain a statement to the effect that the applicant or patentee believes that in accordance with subsection (2) they are entitled to pay fees at the small entity level in respect of that application or patent;
  (e) shall be signed by the applicant or patentee or by a patent agent appointed by the applicant or patentee; and
  (f) shall indicate the name of the applicant or patentee and, if applicable, the name of the patent agent signing the declaration.

(2) An applicant or patentee may pay fees at the small entity level in respect of an application or patent if
  (a) in respect of an application other than a PCT national phase application or a patent issued on the basis of such an application, on the filing date of the application the applicant originally identified in the petition is a small entity in respect of the invention to which the application or patent relates; and
  (b) in respect of a PCT national phase application or a patent issued on the basis of such an application, on the date when the requirements of subsection 58(1) and, if applicable, subsection 58(2) are complied with, the applicant who complies with those requirements is a small entity in respect of the invention to which the application or patent relates.

(3) For the purposes of subsection (2), “small entity”, in respect of an invention, means an entity that employs 50 or fewer employees or that is a university, but does not include an entity that
  (a) is controlled directly or indirectly by an entity, other than a university, that employs more than 50 employees; or
  (b) has transferred or licensed or has an obligation, other than a contingent obligation, to transfer or license any right in the invention to an entity, other than a university, that employs more than 50 employees.

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第3.01条
(1) 第 3.02 条に従うことを条件として,小規模事業体宣言書については,
  (a) 出願の場合は権限ある通信者により又は特許の場合は特許権者により長官に提出しなければならない。
  (b) 願書の一部として又は別の書類として提出することができる。
  (c) 願書の一部として提出しない場合は,それが関連する出願又は特許を特定しなければならない。
  (d) (2)に従って出願人又は特許権者は当該出願又は特許に関して小規模事業体レベルの手数料を納付する権原を有すると確信する旨の陳述を含めなければならない。
  (e) 出願人又は特許権者により又は当該出願人又は特許権者により選任された特許代理人により署名されなければならない。
  (f) 出願人又は特許権者の名称,及び該当する場合は当該宣言書に署名する特許代理人の名称を記載しなければならない

(2) 出願人又は特許権者は、次の場合は、出願又は特許に関して小規模事業体レベルでの手数料を納付することができる
  (a) PCT 国内段階出願以外の出願又は当該出願を基礎として発行された特許に関して、当該出願の出願日に願書において当初特定された出願人が当該出願又は特許が関連する発明に関して小規模事業体である場合
  (b) PCT 国内段階出願又は当該出願を基礎として発行された特許に関して、第 58 条(1)及び該当する場合は第 58 条(2)の要件が遵守された日にそれら要件を遵守した出願人が当該出願又は特許が関連する発明に関して小規模事業体である場合

(3) (2)の適用上、「小規模事業体」とは、発明に関して 50 人以下の従業者を雇用するentity、又は大学であるentityを意味するが、次のentityは含まない。
  (a) 大学以外であって、50 人を超える従業者を雇用するentityによって直接又は間接に管理されているentity
  (b) 大学以外であって、50 人を超える従業者を雇用するentityに対し、発明の何らかの権利について、移転若しくはライセンスしているか又は不確定な義務以外で移転若しくはライセンスすべき義務を有するentity

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58. (1) An applicant who designates Canada, or who designates and elects Canada, in an international application shall, within the time prescribed by subsection (3),
  (a) where the International Bureau of the World Intellectual Property Organization has not published the international application, provide the Commissioner with a copy of the international application;
  (b) where the international application is not in English or French, provide the Commissioner with a translation of the international application into either English or French; and
  (c) pay the appropriate basic national fee prescribed by subsection 3(5).
(2) An applicant who complies with the requirements of subsection (1) after the second anniversary of the international filing date shall, within the time prescribed by subsection (3), pay any fee set out in item 30 of Schedule II that would have been payable in accordance with section 99 or 154 had the international application been filed in Canada as a Canadian application on the international filing date.
(3) An applicant shall comply with the requirements of subsection (1) and, where applicable, subsection (2) not later than on the expiry of
  (a) the 30-month period after the priority date; or
  (b) if the applicant pays the additional fee for late payment set out in item 11 of Schedule II before the expiry of the 42-month period after the priority date, the 42-month period after the priority date.

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第58条 (1) 国際出願においてカナダを指定し又はカナダを指定し、かつ、選択した出願人は、(3)に定める期間内に、次の手続を行わなければならない。
  (a) 世界知的所有権機関の国際事務局が国際出願を公開していない場合は、当該国際出願の謄本を長官に提出し、
  (b) 国際出願が英語又はフランス語でされていない場合は、当該国際出願の英語又はフランス語への翻訳文を長官に提出し、また
  (c) 第 3 条(5)に規定する適切な基本国内手数料を納付すること
(2) 国際出願日の第 2 年応答日の後に(1)の要件を遵守する出願人は、(3)に規定する期間内に、当該国際出願が国際出願日にカナダ出願としてカナダにおいて出願されたとした場合に第 99 条又は第 154 条に従って納付すべきものとなる附則 II 項目 30 に掲げる何れかの手数料を納付しなければならない。
(3) 出願人は、次の期間の満了以前に、(1)及び該当する場合は(2)の要件を遵守しなければならない。
  (a) 優先日の後 30 月の期間、又は
  (b) 出願人が附則 II 項目 11 に掲げる追納に対する追加手数料を優先日の後 42 月の期間の満了前に納付の場合は、優先日の後 42 月の期間


■クレーム解釈: エンドグルカナーゼ酵素、平成12年(ワ)第26626号特許権侵害差止請求事件


平成14年2月5日 東京地方裁判所
原告: ノボザイムズアクティーゼルスカブ
被告: 明治製菓株式会社
請求項1: 次の性質:
  (a)SDS-PAGEにより測定した見かけ分子量が約43kDである;
  (b)pH6.0~10.0の範囲で活性である;
  (c)pH3~9.5の範囲のpH値において安定である;
  (d)非晶質セルロ-スを分解する;及び
  (e)セロビオ-スβ-p-ニトロフェニルを実質的に分解しない;
  を有するフミコ-ラ(Humicola)属微生物由来のエンドグルカナーゼ酵素。
請求項4: 配列番号:2に示す1位のアミノ酸から284位のアミノ酸までのアミノ酸配列を有するエンドグルカナーゼ酵素。

コメント: クレーム1の「pH6.010.0の範囲で活性である」は、その範囲外では「活性がない」と解釈するのが相応であると判断された例。 請求棄却(構成要件非充足、非均等)。 ☆

裁判所: 「…発明の詳細な説明を参酌しても,上記範囲外のpH値において活性かどうか,安定かどうかという点については,明らかではない。このように特許請求の範囲の文言及び発明の詳細な説明の記載が不明確である以上,特許権侵害訴訟においては,特許請求の範囲を限定的に解釈せざるを得ない。

…特許発明は,産業上利用することができるものでなければならない(特許法29条1項柱書)から,構成要件A②及びA③が,上記原告が主張するような意味のものであれば,産業上利用することができる酵素として当然の性質を記載したものに過ぎず,上記(1)ウ認定の出願経過を経て本件第1発明に係るエンドグルカナーゼ酵素を更に特定したものと解することはできない。
(4)そうすると,本件第1発明に係る構成要件A②及びA③の各要件は,①当該酵素が,pH6.0~10.0の範囲において活性であり,それ以外の範囲で活性でない(構成要件A②),②当該酵素が,pH3~9.5の範囲において安定であり,それ以外の範囲で安定でない(構成要件A③),とそれぞれ解釈するのが相当である。」

②「1個~複数個のアミノ酸の置換等」をOA応答でクレームから削除し、その後分割したことは、意識的除外にあたる。 そのため、「1個~複数個のアミノ酸の置換等」したエンドグルカナーゼ酵素は均等の範囲に入らないと判断された例。 上記請求項4の話。
なお、被告の酵素は、4個のアミノ酸が異なり、5個のアミノ酸が付加されている。

裁判所: 「…本件アミノ酸配列の一部のアミノ酸が置換・欠失・付加されたアミノ酸配列のエンドグルカナーゼ酵素の発明を,本件特許の請求の範囲から削除し,分割出願しているのであるから,本件第2発明には,本件アミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有するエンドグルカナーゼ酵素は含まれないことはもとより,本件アミノ酸配列の一部のアミノ酸が置換・欠失・付加されたアミノ酸配列のエンドグルカナーゼ酵素は,本件第2発明に係る特許請求の範囲の記載から意識的に除外されたものと認められる。
そうすると,被告製品は,本件第2発明の技術的範囲に属さないし,均等となることもないというべきである。」

■クレーム解釈: テレビジョン番組リスト、平成19年(ワ)第27187号 特許権侵害差止等請求事件


平成21年7月15日 東京地方裁判所
原告: スターサイトテレキャストインコーポレイテッド
被告: 株式会社東芝
請求項1: タイトル,放送時間そしてチャンネルをそれぞれが含んでいる複数のテレビジョン番組リストを電子メモリに記憶するステップ,時間とチャンネルのグリッドガイド形式で前記の複数のテレビジョン番組リストのチャンネルの中の幾つかをモニタースクリーン上に表示するステップ,このモニタースクリーン上でカーソルを移動してグリッドガイド形式で表示されたチャンネルの一つに目印を付けるステップ,そしてグリッドガイド形式の代わりに単一チャンネル形式でその目印を付けたチャンネルを表示するステップを備え,前記の単一チャンネル形式はその目印を付けたチャンネルに対応するチャンネルのテレビジョン番組リストを順次配列した行を含んでいることを特徴としたテレビジョン番組リストのデータベースを閲覧する方法。

コメント: 分割出願の権利行使の際に、原告の主張するクレームの用語の解釈が、原出願のときと異なっていてもOK(禁反言にならない)と判断された例。 請求棄却(構成要件非充足、進歩性欠如)。 ☆☆

裁判所: 「被告は,原出願の拒絶査定に対する審判手続及び原出願審決に対する審決取消訴訟手続では,原告が,「テレビジョン番組リスト」の用語を「個々の番組単位における番組情報」の意味では使用しておらず,各手続における特許庁の主張及び裁判所の判決においても,「テレビジョン番組リスト」とは,テレビジョン番組のタイトルのリスト,すなわち,テレビジョン番組のタイトルが並んだものと解されているから,本件発明における「テレビジョン番組リスト」の文言についても,「テレビジョン番組のタイトルが並んだもの」を意味すると解すべきであり,分割出願に係る本件特許権による権利行使の際に,同用語の意義を違えて主張することは,信義則に基づく禁反言法理から許されないと主張する。

しかしながら,分割出願制度は,一つの出願において二つ以上の異なる発明の特許出願をした出願人に対し,出願を分割する方法により,各発明につき,それぞれ元の出願の時に遡って出願がされたものとみなして特許を受けさせるものであるから,原出願で特許出願された発明と,分割出願で特許出願された発明は,本来,内容を異にするものであり,分割出願された発明の「特許請求の範囲」に記載された文言の解釈が,原出願の手続における文言の解釈と必ずしも一致する必要はないというべきである。したがって,本件特許の「テレビジョン番組リスト」の文言の解釈において,仮に,原出願の拒絶査定に対する審判手続及び原出願審決に対する審決取消訴訟手続において使用された「テレビジョン番組リスト」の文言の意味とは異なる解釈をしたとしても,禁反言法理から許されないとはいえず,被告の上記主張は採用できない。」

■23年改正: 4月に国優せずに出願すれば新30条の適用を受けられるという話


平成23年度特許法等改正により、新規性喪失の例外規定の適用対象が拡大しました。 これにより、学会は長官指定でなくてもよくなり、テレビもOKになりました。

30条

但し、下記のようなケースでは、国内優先出願Yに係る発明のうち「発明イ」について、30条の適用を受けられません。
国内優先権主張を伴う出願において、優先権の基礎出願の明細書等に記載された発明については、優先日基準で適用法が判断されるためです。

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▼ケース
2012/3/1 学会Aで発明イを口頭発表(30条指定なしの学会)
2012/3/5 特許出願X(発明イを記載)(30条の申請せず)
2012/4/10 特許出願Xに基づく国内優先出願Y(発明イ、ロを記載)(学会Aの30条適用を申請)
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一方で、Xを3月に出願せず、4月以降に出願をすれば30条の適用を受けることが可能です。

但し、4月を待っている間に、誰かが独自に同様の発明をして出願又は公開した場合や、公開された発明を見た第三者が独自に改良を加えるなどして出願又は公開した場合には、それらについて新規性喪失の例外規定の適用は受けられませんので、注意が必要です

参考
新30 条の適用対象となる出願は以下の通り。

・通常の出願:
出願日が平成24年4月1日以降のもの
・分割出願/変更出願/実用新案登録に基づく特許出願:
原出願の出願日が平成24年4月1日以降のもの
・パリ条約の優先権主張を伴う出願:
優先権主張を伴う出願の出願日が平成24年4月1日以降のもの
・国内優先権主張を伴う出願:
原則として、優先権主張の基礎出願の出願日が平成24年4月1日以降のもの
(*基礎出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(明細書等)に記載されていない発明については、国内優先権主張を伴う出願の出願日が平成24年4月1日以降のもの)

「平成23年改正法対応・発明の新規性喪失の例外規定の適用を受けるための出願人の手引き」
http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pdf/hatumei_reigai/tebiki.pdf

■カナダの実施可能要件は特許法27条(3)

特許メモ

APPLICATION FOR PATENTS
Commissioner may grant patents
27. (1) …
 (2) …
 (3) The specification of an invention must
  (a) correctly and fully describe the invention and its operation or use as contemplated by the inventor;
  (b) set out clearly the various steps in a process, or the method of constructing、 making, compounding or using a machine, manufacture or composition of matter, in such full, clear, concise and exact terms as to enable any person skilled in the art or science to which it pertains, or with which it is most closely connected, to make, construct, compound or use it;
  (c) in the case of a machine, explain the principle of the machine and the best mode in which the inventor has contemplated the application of that principle; and
  (d) in the case of a process, explain the necessary sequence, if any, of the various steps, so as to distinguish the invention from other inventions.

 (3) 発明の明細書には、
  (a) その発明及び発明者が考えたその作用又は用途について正確かつ十分に記載し、
  (b) その発明が属するか又は極めて密接に関係する技術若しくは科学分野における熟練者が、それを製造し、組立てし、調合し又は使用することができる程度に、完全、明瞭、簡潔かつ正確な用語で、方法においては各種の工程について、また機械、製造物又は合成物においてはそれを組立てし、製造し、合成し若しくは使用する方法について明確に記載し、
  (c) 機械の場合は、機械の原理及び発明者がその原理の応用として考える最良の実施態様について説明し、また
  (d) 方法の場合は、その発明を他の発明から区別することができるように、もしあれば、種々の工程の必要な順について説明しなければならない。

■カナダのサポート要件は特許規則84条

特許メモ

84. The claims shall be clear and concise and shall be fully supported by the description independently of any document referred to in the description.

第84条
クレームは、明瞭かつ簡潔であって、詳細な説明に引用される如何なる書類からも独立し、詳細な説明により完全に裏付けられていなければならない。

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プロフィール

徳重大輔


Author: 徳重大輔

バイオ、医薬、特許関連のブログです。
業界動向や知財判決などの情報をアップしていきます。

SK特許業務法人に勤務しています。明細書作成、特許調査、その他一通りやってます。明細書はバイオ医薬(特に抗体医薬)、調査は無効資料調査が特に得意です。

お問い合わせはbiopatentblog@gmail.com(@は半角)へお願いします。

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