■2012-06-

■用途発明かどうか: 脱ロウ方法、平成10年(行ケ)第308号審決取消請求事件


平成12629日口頭弁論終結
原告: 東レ株式会社
被告: モービルオイルコーポレーション
特許: 特許770122
請求項1:  直鎖炭化水素および僅かに枝分かれした炭化水素と他の異なる分子形状を有する化合物との混合物を、一般に楕円形の形状を持ち、転化条件の下で該楕円形の長軸が6Åないし9Å短軸が約5Åの有効寸法を有する孔を有し、該直鎖炭化水素および僅かに枝分かれした炭化水素がその孔構造中に入ることができ、転化されることができる結晶性ゼオライト物質であって、酸化物のモル比の形で表わして一般式0.9±0.2M 2 / n O:Al 2 O 3 :5-100SiO 2 :zH 2 O(式中Mは水素イオンを含む陽イオンでnは該陽イオンの原子価でありzは0ないし40の値である。)
で示され且つ下記に示す主要な線をもつX線回折図を有する結晶性ゼオライト物質と接触させ前記混合物から直鎖炭化水素および僅かに枝分かれした炭化水素を選択的にクラッキングすることを特徴とする脱ロウ方法。
格子面間隔d(Å)
11.1±0.2 10.0±0.2 7.4±0.15 7.1±0.15 6.3±0.15 6.04±0.1 5.97±0.1 
5.56±0.1 5.01±0.1 4.60±0.08 4.25±0.08 3.85±0.07 3.71±0.05 
3.64±0.053.04±0.032.99±0.022.94±0.02

コメント: 用途発明に該当するかどうか、が判断された事例。
→NG。 特許維持審決取消。 ☆

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裁判所: 「(9) 被告は、本件発明は、「脱ロウ方法」、すなわち、脱ロウプロセスの発明であり、触媒からみると、用途を脱ロウプロセスに限定した一種の用途発明である旨主張する
 講学上、「用途発明」とは、物の有するある一面の性質に着目し、その性質に基づいた特定の用途でそれまで知られていなかったものに専ら利用する発明をいうものとされ、物が周知あるいは公知であっても、用途が新規性を有する場合には、特許性の認められる場合があることを示すためにされている用語である。
 しかしながら、上記認定のとおり、本件発明は、ゼオライトZSM-5を使用してクラッキングを行うプロセスが、原料油中のロウ分を消して別の生成物に変えるという点に着目し、ロウ分を含まない目的物質を得るという目的、効果の面からこれを「脱ロウ法」と称しているにすぎず、本件発明と引用発明とは、出発原料、反応、触媒を同じく、その結果、得られる目的物質も同じくしているのであるから、そこには何らの新規な用途の追加ともみることができないものであって、特許性の認定と結び付けられる上記の意味での用途発明となり得ないことは明らかである。」
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■数値限定が課題を解決できない範囲を含んでいてもよいか: 下限値を採用した減塩醤油、平成23年(行ケ)第10254号審決取消請求事件


平成2466日判決言渡
原告: X
被告: 花王株式会社
本願: 特願2004-122603
請求項1: 食塩濃度7~9w/w%,カリウム濃度1~3.7w/w%,窒素濃度1.9~2.2w/v%であり,かつ窒素/カリウムの重量比が0.44~1.62である減塩醤油。

コメント: 数値範囲の極限値付近が、「課題を解決できない範囲を含んでいる」としても、技術常識で数値範囲を調整して課題を解決できるならOK(サポート要件、実施可能要件を満たさないとはいえない)という主旨の判断がされた事例。 特許維持。 ☆☆☆☆

なお、本願実施例において直接的な比較結果が記載されている食塩濃度は、全て9
w/w%のようです

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裁判所: 「そうすると,本件明細書に接した当業者は,本件発明1において,食塩濃度が7w/w%台の減塩醤油であって,カリウム濃度が本件発明で特定される範囲で下限値に近い場合には,塩味が十分に感じられない可能性があると理解すると同時に,このような場合には,カリウム濃度を本件発明1で特定される範囲の上限値近くにすることにより,減塩醤油の塩味を強く感じさせることができると理解するものと解される。
そして,被告作成の試験結果報告書(乙8)によれば,食塩濃度7.0w/w%,カリウム濃度3.7w/w%の場合(試験品F),塩味の指標は3であって,通常の醤油と比較して若干弱い程度の塩味が感じられる結果が示されており,食塩濃度が本件発明1の下限値である7w/w%付近で,カリウム濃度が本件発明1において特定された数値範囲の上限である3.7w/w%の減塩醤油は,本件発明1の課題が解決されている。
すなわち,本件発明1において食塩濃度が7w/w%台と本件発明が特定する食塩濃度の下限に近い場合であっても,塩化カリウムが食塩の塩味を代替する成分であるという技術常識に照らし,カリウム濃度を本件発明1が特定する数値範囲の上限付近とすることによって,本件発明1の課題を解決できると当業者が理解することができ,本件発明は,発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載されているということができる。…。

原告は,本件発明において食塩濃度7w/w%の場合,塩味が弱く,発明の課題を解決できない場合があることから(乙8の試験品D),本件発明は全ての数値範囲において所期の効果が得られると認識できる程度に記載されているということができない旨を主張する。
しかし,前記のとおり,本件明細書に接した当業者は,本件特許の優先権主張日当時の技術常識に照らして,食塩濃度が本件発明で特定される範囲の下限値の7w/w%の減塩醤油の場合,カリウム濃度を本件発明で特定される範囲の上限値近くにすることにより,塩味をより強く感じる減塩醤油とするものであることから,特許請求の範囲において特定された数値範囲の極限において発明の課題を解決できない場合があるとしても,本件発明がサポート要件を満たさないということは適切ではない。」
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■データの後出し: 膀胱癌で発現させるためのベクター、平成22年(行ケ)第10203号審決取消請求事件


平成24年5月28日判決言渡

原告: イッサム リサーチ ディヴェロップメント カンパニー オブ ザ ヘブリュー ユニバーシティ オブ エルサレム エルティディー

被告: 特許庁長官

本願: 特願2000-514993

請求項1: 細胞傷害性の遺伝子産物をコードする異種配列に機能的に連結された H19調節配列を含むポリヌクレオチドを含有する,腫瘍細胞において配列を発現させるためのベクターであって,前記腫瘍細胞が膀胱癌細胞または膀胱癌である,前記ベクター。

 

コメント: 実施例が現在形(している。)で(数値等を盛り込まずに)書かれていたとしても、それは「まがりなりにも実験結果」なので、それに基づいて出された後出しの実験データを、進歩性の判断において参酌してもいいですよ、という主旨の判断がされた事例。 拒絶審決取消。 ☆☆☆☆

 

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裁判所: (2)  加えて,本願明細書の段落【0078】には,化学的に膀胱腫瘍を発症させたマウスに対し,H19調節配列を使用した遺伝子療法を施した実施例につき,「対照及び実験群の間で,腫瘍のサイズ,数及び壊死を比較する。シュードモナス毒素の発現は,マウスの実験群からの膀胱腫瘍内のH19の発現と同時局在化することがわかる。さらに,マウスの実験群の膀胱腫瘍は,マウスの対照群内の膀胱腫瘍に比べてサイズ及び壊死が減少している。」との記載があり(なお,最後の1文は,「膀胱腫瘍のサイズが減少し,膀胱腫瘍が壊死している」の誤りであることが明らかである。),本願発明1のベクターによって,マウスを使用した膀胱腫瘍に対する実験で,対照群に対して膀胱腫瘍の大きさが有意に小さくなり,腫瘍細胞の壊死が見られた旨が明らかにされている。…。

 

本願明細書の段落【0078】には,具体的に数値等を盛り込んで作用効果が記載されているわけではないが,上記①,②は上記段落中の本願発明1の作用効果の記載の範囲内のものであることが明らかであり,甲第10号証の実験結果を本願明細書中の実験結果を補充するものとして参酌しても,先願主義との関係で第三者との間の公平を害することにはならないというべきである。

そうすると,本願発明1には,引用例1,3ないし6からは当業者が予測し得ない格別有利な効果があるといい得るから,前記(1)の結論にもかんがみれば,本件優先日当時,当業者において容易に本願発明1を発明できたものであるとはいえず,本願発明1は進歩性を欠くものではない。…。

 

  また,被告は,本願明細書の9節では,他の実施例には存在する「結果と考察」欄が記載されていない上に,他の実施例では過去形で実験結果が記載されているのとは対照的に,現在形で実験結果が記載されているし,原告が真に実験を行っていれば,乙第6号証のように容易にその結果を本願当初明細書に記載できたはずであって,作用効果の記載(段落【0078】)は,いわば願望を記載したものにすぎない旨を主張する。

確かに,本願明細書(甲7)の他の実施例に係る8,10,11節中には「結果と考察」欄がある一方,9節には同欄がなく,9節では現在形で実験結果が記載されている。しかしながら,段落【0078】を含む9節には曲がりなりにも実験結果が記載されているのであって,記載中の項目立ての体裁や文章の時制が異なるからといって,架空の実験を記載したものと断定することはできない。」

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プロフィール

徳重大輔


Author: 徳重大輔

バイオ、医薬、特許関連のブログです。
業界動向や知財判決などの情報をアップしていきます。

SK特許業務法人に勤務しています。明細書作成、特許調査、その他一通りやってます。明細書はバイオ医薬(特に抗体医薬)、調査は無効資料調査が特に得意です。

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