■2013-04-

■公知技術が多いなら動機付けが重要/包装用アルミニウム箔/平成22年(行ケ)第10273号審決取消請求事件


平成23年3月8日判決言渡
原告: 日本製箔株式会社
被告: 特許庁長官
特許出願: 特願2003-372727号
請求項1: 少なくとも下記手段及び装置を具えた外観検査装置を用いて,アルミニウム箔製包装体を製造する際に用いるアルミニウム箔であって,該アルミニウム箔は,その本体表面に,文字や図柄などの表示が印刷されてなり,該表示は,樹脂ワニスに顔料を添加してなる印刷インキを用いて印刷することによって形成されたものであり,該顔料は,顔料本体表面が合成樹脂膜によって被覆されていることを特徴とする赤外線透過性に優れた表示を印刷してなる包装用アルミニウム箔。

コメント: 副引例のような公知技術は多く存在し、且つ動機付けがないので、副引例の構成を選択することは容易に想到できるものではないという主旨の判断がされた例。 拒絶審決取消。 ☆☆

裁判所:

「そもそも,「塗料」又は「インク」に関する公知技術は,世上数限りなく存在するのであり,その中から特定の技術思想を発明として選択し,他の発明と組み合わせて進歩性を否定するには,その組合せについての示唆ないし動機付けが明らかとされなければならないところ,審決では,当業者が,引用発明1に対してどのような技術的観点から被覆顔料を使用する引用発明2の構成が適用できるのか,その動機付けが示されていない(当該技術が,当業者にとっての慣用技術等にすぎないような場合は,必ずしも動機付け等が示されることは要しないが,引用発明2の構成を慣用技術と認めることはできないし,被告もその主張をしていない。)。
(4) 
この点について,被告は,引用例2の段落【0006】の記載を根拠に,色相,着色力及び分散性に優れているのが好ましいことは, インキや塗料の顔料について一般的にいえることであり,引用発明1のインクについてもあてはまることであるから,引用発明1のインクとして引用発明2の油 性塗料を適用してみようという程度のことは,当業者が容易に考えつくことであると主張する。
確かに,インクや塗料において,色相,着色力及び分散性に優れているのが一般的に好ましいと解されるところ,それに応じて,色相,着色力,分散性などのいずれかに優れていることをその特性として開示するインクや塗料も,多数存在すると認められるのであり,その中から,上記の一般論のみを根拠として引用発明2を選択することは,当業者が容易に想到できるものではない。
したがって,被告の上記主張は,採用することができない。」

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■設計的事項に阻害事由は認められない/冷却システム/平成21年(行ケ)第10273号審決取消請求事件


平成22年4月27日判決言渡
原告: 古河電気工業株式会社
被告: 鴻海精密工業股份有限公司
特許: 特許第2995176号
請求項1: バーリング加工孔を複数個設けたフィンからなるフィン群と,上記フィン群のバーリング加工孔を貫通してプレス挿入された複数の実棒と,上記実棒の少なくとも一方の端部にプレス挿入した受熱プレートからなるヒートシンクを有する冷却システム。

コメント: 阻害事由の主張が認められなかった事例。無効審決維持。☆
「必須の要件だからこの構成を変えることには阻害事由がある」という主張をすると、「コスト等の関係で決められる設計的事項にすぎず、阻害事由は認められない」と判断される場合がある。

裁判所:

「ア  甲2の記載について甲2は,フィンと,そこに差し込まれたヒートパイプから構成されるヒートシンクに係る発明(請求項の数4)が記載されているが,いずれの請求項にも,フィンとヒートパイプを,溶接法,鑞接合,半田接合などで接合することの記載はない。そして,次のとおりの記載がある。

「【0009】フィンとヒートパイプの取り付け方法は,特に限定はないが,フィンにバーリング加工等によって孔を設け,その孔にヒートパイプを差し込む形態が実用的である。もちろんヒートパイプとフィンとの熱抵抗は小さいことが望ましいので,コスト面で許されれば,単に差し込むだけでなく,例えば溶接法を併用して,より熱抵抗を小さくさせることは有効である。溶接法の他,ろう接合,半田接合等もある。またフィンの取り付け強度を高める意味でヒートパイプの差し込み部を接着剤等で接着しても構わない。」

上記の甲2の記載によれば,フィンと,そこに差し込まれたヒートパイプから成るヒートシンクにおいて,フィンにバーリング加工等によって設けられた孔にヒートパイプを差し込んだ上,コスト面で許されれば,熱抵抗を小さくするために鑞接合をすることもあるが,コスト面で許されない場合は,フィンの孔にヒートパイプを差し込んだ状態で,フィンとヒートパイプの取り付けが完了することが認められる。そして,フィンにヒートパイプを差し込んで鑞接合するという上記の製造工程は,鑞材を塗布した放熱金属平板を加工してピンフィンと組み立て,熱処理して鑞付けする工程,すなわち引用発明の,放熱金属平板にピンフィンを嵌合して接合するという製造工程を,その一態様として含むものと認められる。そうすると,引用発明において,鑞接合を省略し,放熱金属平板への鑞材の塗布と熱処理を行わずに,フィンのバーリング壁に実棒の位置が固定されている状態,すなわち本件発明1の「プレス挿入された」状態とし,相違点1に係る本件発明1の構成(実棒がフィン群に「プレス挿入された」ものであること)を実現することは,容易に想到することができたものと認められる。

したがって,審決が,引用発明において,コスト面を考慮して,鑞材塗布と鑞付けによる接合を省略すること,すなわち相違点1を解消することは,甲1,2の記載から当業者が容易に想到することができたとした判断に誤りはない。

  原告の主張に対し

 

 

(ウ)原告は,引用発明は,鑞材塗布と鑞付けによる接合が必須の要件であるから,このことは,鑞材塗布と鑞付けによる接合を省略することに対し,阻害事由となると主張する。

しかし,前記1(1)イ(イ)のとおり,甲1の特許請求の範囲の請求項2と実施例には,嵌合されて接合されたヒートシンクが記載されているものの,甲1の記載により,嵌合された後で接合される前の状態は明確に認めることができる。そして,甲2の【0009】の記載によれば,鑞付け等による接合の有無は,コストと熱抵抗との関係で決められる設計的事項にすぎないものと認められるから,引用発明は,鑞材塗布と鑞付けによる接合を省略することに対し,阻害事由とはならないものと認められ,原告の上記主張は,採用することができない。」

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プロフィール

徳重大輔


Author: 徳重大輔

バイオ、医薬、特許関連のブログです。
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SK特許業務法人に勤務しています。明細書作成、特許調査、その他一通りやってます。明細書はバイオ医薬(特に抗体医薬)、調査は無効資料調査が特に得意です。

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