■2013-09-

■中国特許における医薬用途クレームのQ&A


中国で医薬用途クレームを狙う場合には、クレーム表現に気を付ける必要があります。
この点に関して、ユニ-インテル特許事務所の龔敏(ゴンミン)先生にご協力いただき、Q&A形式でまとめましたので、ご紹介いたします。


Q1. 下記クレームの「悪性腫瘍の治療薬」の医薬用途は、中国の審査で、新規性・進歩性のために考慮されるか。また、考慮されないとすれば、スイスタイプクレームにすればよいのか。

 【請求項1
 配列番号1のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む、悪性腫瘍の治療薬。

 ※上記ポリペプチドは公知物質(以下Qも同様)。


▼A1.
まず、「物」の発明における用途限定に対する中国の審査基準についてご説明させて頂きます。中国審査指南に、用途限定について以下の審査基準が規定されています。

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「主題の名称に用途限定を含む製品請求項について、その用途限定は当該製品請求項の保護範囲を確定する時には配慮しなければならないが、実際の限定役目は、保護を求めている製品そのものに与える影響が如何なるものかによって決まる。例えば、主題名称が「鋼湯鋳造用金型」である請求項において、その「鋼湯鋳造用」という用途は主題の「金型」に対して限定役目がある。「氷塊成型用プラスチックボックス型」については、その融解点が「鋼湯鋳造用金型」の融解点よりは遥かに低いもので、鋼湯鋳造に用いられないため、前述の請求項の保護範囲に入らない。但し、「…用」との限定は、保護を求めている製品又は設備そのものに影響を与えることなく、単に製品又は設備の用途や使い方を記述しているだけであるならば、製品又は設備の、例えば新規性、創造性を備えるかどうかの判断には役目を果たさないことになる。例えば、「…用の化合物X」において、もしその中の「…用」は化合物X そのものに何の影響も与えないものなら、当該化合物X が新規性と創造性を備えるかどうかを判断する時に、その中の用途限定は役目を果たさないことになる。」(審査指南第第2部分第3章第3.1.1節第3段落)

「請求項における用途特徴は保護を請求する製品にある特定の構造及び/又は組成を備えていることが示唆されているか否かを考慮しなければならない。
もし、当該用途は製品そのものの固有の特性によって決まるものであり、用途特徴にも製品の構造及び/又は組成上の変化が暗に含まれていないならば、当該用途特徴に限定された製品請求項は対比文献の製品に比べては新規性を具備しない。例えば、抗ウイルス用の化合物X の発明は、触媒用化合物X
対比文献に比べると、化合物Xの用途が変化しているものの、その本質的な特性を決定する化学構造式には何らかの変化もないため、抗ウイルス用化合物Xの発明は新規性を具備しない。
但し、もし当該用途には製品が特定の構造及び/又は組成が暗に含まれているならば、つまり、当該用途に製品の構造及び/又は組成上の変化を示すこととなり、当該用途における製品の構造及び/又は組成を限定する特徴を考慮しなければならない。例えば、「クレーン用フック」はクレーンの寸法と強度などの構造だけに対応するフックを指すものであり、同じ形状を持つ一般つり人向けの「魚釣り用フック」に比べて、構造が異なり、両者は違う製品である」(審査指南第2部分第3章第3.2.5節)
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纏めると、用途限定が保護を請求する製品にある特定の構造及び/又は組成を備えていることを示唆している場合では、新規性を有すると判断されますが、示唆していない場合では新規性の判断に考慮されません。
医薬用途は用途限定の一種であり、上記の本質的な審査基準を把握すれば、用途限定が「物」発明の審査で考慮されるか否かを判断できるようになります。
また、用途限定が保護を請求する製品にある特定の構造及び/又は組成を備えていることを示唆していないが、一方で当該用途が新規性・進歩性を有する場合では、スイスタイプクレームに補正することで、中国の実務でいう用途発明(方法発明)とすることができます。

当該ポリヌクレオチドは公知物質であり、また「悪性腫瘍の治療」という用途限定は、当該ポリヌクレオチドがある特定の構造及び/又は組成を備えていることを示唆していないと思われます。もし「悪性腫瘍の治療」という用途が新規であれば、スイスタイプクレームに補正することで、特許される可能性があります。また、上記補正はOA段階で行うこともできます。



Q2. 下記のクレームはどうか。

 【請求項1
 配列番号1のアミノ酸配列を
有するポリペプチドと、薬理学的に許容される担体と、を含む、治療薬。


▼A2.
もし従来技術において、当該ポリヌクレオチドのみが開示されている場合では、当該ポリヌクレオチドと、「薬理学的に許容される担体」とを含む治療薬は新規性を有すると思われます。



Q3. 下記のクレームはどうか。

 【請求項1
 悪性腫瘍の治療に使用するための、配列番号1のアミノ酸配列を
有するポリペプチド。


▼A3.
まず、上記発明は製品発明に該当します。次に、「悪性腫瘍の治療に使用する」という用途限定は保護を請求する製品にある特定の構造及び/又は組成を備えていることを示唆していないと思われます。そのため、上記用途限定は審査で考慮されません。



Q4. 下記のクレームはどうか。

 【請求項1
 配列番号1のアミノ酸配列を
有するポリペプチドを含む、血糖値抑制剤。

 【請求項2
 配列番号1のアミノ酸配列を
有するポリペプチドを含む、血糖値を抑制する機能を有する剤。


▼A4.
上記の通り、用途限定が保護を請求する製品にある特定の構造及び/又は組成を備えていることを示唆している場合では、新規性を有すると判断されますが、示唆していない場合では新規性の判断に考慮されません。
当該ポリペプチドが公知である場合、当該ポリペプチドを100%含む血糖値抑制剤(即ち、当該ポリペプチドそのもの)が公知であるため、「当該ポリペプチドを含む血糖値抑制剤」は新規性を有しないと思われます。
よって、上記請求項12は、当該ポリヌクレオチドが公知物質である場合には、係る用途限定は当該ポリヌクレオチドにある特定の構造及び/又は組成を備えていることを示唆していないと思われますので、新規性の主張は難しいでしょう。


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徳重大輔


Author: 徳重大輔

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SK特許業務法人に勤務しています。明細書作成、特許調査、その他一通りやってます。明細書はバイオ医薬(特に抗体医薬)、調査は無効資料調査が特に得意です。

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