■2014-01-

■(1月31日) 医薬品の特許調査セミナーを開催します。


情報機構さんのHPでは以前よりご案内しておりましたが、131日(金)に、医薬品の特許調査セミナーの講師を務めさせていただくことになりました。

セミナーの詳細は下記の通りです。 割引きチケットは、こちらからダウンロードできます。


日時: 2014131日(金) 13:00-16:30
会場: 東京都江東区産業会館 2階第6展示室、地図はこちら
■受講料: 1名39,900円 (税込、資料付)
■受講対象: 医薬品会社に所属の方
■主催者: 株式会社情報機構


タイトル
後発医薬品、バイオシミラー(バイオ後続品)上市のための
医薬品特許調査法 <入門講座>


講師
SK
特許業務法人 徳重 大輔

コメント
医薬品の特許調査に関しては、教科書やセミナーが少なく、社外から知識を吸収することは難しいのではないかと思います。 私自身、どうすれば予算の範囲内で効率的に、もれなく調査ができるかを日々模索しています。
本講座では、ジェネリック医薬品・バイオシミラー上市のための特許調査法に関して、私の知っている範囲で、できるだけ実務に近い具体的な話をしようと考えています。
講演内容としては下記を予定しており、クリアランスと無効資料調査の手法が中心になる予定です。
また、入門者の方にわかりやすいように、ある程度基本的なことも含めてお話しさせていただく予定です。

講演概要
1.
ジェネリック医薬品、バイオシミラーの基本
1.1 
ジェネリック医薬品、バイオシミラーとは
1.2 
ジェネリック医薬品、バイオシミラーの動向

2.
ジェネリック医薬品上市のための調査法の基本
2.1 
クリアランス調査
2.2 
無効資料調査
2.3 
データベース紹介

3.
医薬品特許のクリアランスの進め方
3.1 
クリアランスの基本
3.2 
何から始めるか
3.3 
データベースで検索・調査する

4.
医薬品特許の無効資料調査の進め方
4.1 
無効資料調査の基本
4.2 
何から始めるか
4.3 
データベースで検索・調査する

5.
バイオシミラー上市のための特許調査で気をつけること ~抗体医薬を中心に~
5.1 
バイオ医薬の特許調査の基本
5.1.1 
クレームの特徴
5.1.2 
抗体特許のクレーム限定の種類
5.1.3 
抗原を特定せずに抗体一般を権利範囲に含むような抗体特許に注意
5.1.4 
蛋白質を特定せずに蛋白質一般を権利範囲に含むような特許に注意
5.1.5 
ターゲットを特定せずに核酸一般を権利範囲に含むような特許に注意
5.1.6 
回避可能かどうかを検討する
5.2 
抗体特許のクリアランス・無効資料調査で気をつけること
5.3 
配列検索の進め方

6.
特許の有効性を検討する上で知っておきたい判決例

7.
検索・調査事例
7.1 
抗体医薬品Aのクリアランス例
7.2 
低分子医薬品Aの特許XXXの無効資料調査例

<質疑応答>


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■ハーセプチンのバイオシミラー、インドで発売(2014年2月)


ハーセプチンのバイオシミラーCANMAbBiocon Ltd)が、2月にインドで発売されるそうです。
先発品の25%ディスカウントで入手可能。 詳しくは
Biocon社のプレスリリースで。

Press Releases
http://www.biocon.com/biocon_press_release_details.asp?subLink=news&Fileid=509



■動機付けがあるとしても、顕著な効果により進歩性ありと判断された事例(シュープレス用ベルト)


<判決紹介>

コメント:
動機付けがあるとしても、顕著な効果により進歩性ありと判断された事例。 無効審決取消。 ☆☆☆

本件発明1と引用発明1の相違点は、前者の硬化剤が「ジメチルチオトルエンジアミン(以下、A)」であるのに対し、後者は「33-ジクロロ-44-ジアミノジフェニールメタン(以下、B)」である点。

審決は、「引用発明1Bを引用発明2Aに変えることには強い動機付けがあり、本件発明1の効果は単に確認した結果に過ぎない」という主旨の判断をした。

一方で裁判所は、「強く動機付けられるとまでいうことはできない」、「動機付けられることがあるとしても・・・予測することができない顕著な効果を奏するものであるからことに照らせば、・・・進歩性があると認められる」と判断した。


平成24年(行ケ)10004号 審決取消請求事件
平成241113日判決言渡、知的財産高等裁判所
原告: ヤマウチ株式会社
被告: イチカワ株式会社
特許: 特許第3698984
請求項1
 
補強基材と熱硬化性ポリウレタンとが一体化してなり,前記補強基材が前記ポリウレタン中に埋設され,
 
外周面および内周面が前記ポリウレタンで構成されたシュープレス用ベルトにおいて,
 
外周面を構成するポリウレタンは,末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーと,ジメチルチオトルエンジアミンを含有する硬化剤と,を含む組成物から形成されている,
 
シュープレス用ベルト。


審決の理由:
「・・・引用発明1においては,「33-ジクロロ-44-ジアミノジフェニールメタン」,言い換えればMOCA44メチレン‐ビス‐(2‐クロロアニリン))が,熱硬化性ウレタン樹脂のための硬化剤として使用されているが,甲第2号証には,引用発明2,すなわち「熱硬化性ポリウレタンの硬化剤であって,少なくとも,35-ジメチルチオ-26-トルエンジアミン又は35-ジメチルチオ-24-トルエンジアミンを有効成分としているETHACURE300」がMOCA代替の新硬化剤」として紹介され,しかも,引用発明2は,発ガン性が指摘されていたMOCAに代わる新しい硬化剤として開発されたものであると記載されており,本件特許の出願当時において,その取り扱う対象が,身体健康上,悪い影響を与えるものよりは与えないものを採用することが,優先的に考慮されるべき事柄であったと認められることを考え合わせると,甲第2号証は,熱硬化性ポリウレタンの硬化剤としてMOCAに代えて引用発明2を用いることを強く動機づける刊行物といえ,引用発明1において,その硬化剤であるMOCAに代えて引用発明2を用いることは,格別な創作力を発揮することなくなし得るものである。そうである以上,仮に,本件発明1に予測できない効果が認められるとしても,その効果は,単に確認したにすぎないものといわざるを得ず,相違点Aは,容易に想到し得るものである。 」


原告の主張:
「・・・しかし,だからといって,MOCAは使用が禁止されていたわけではないため,証拠を示すまでもなく,「この出願当時において,その取り扱う対象が,身体健康上,悪い影響を与えるものよりは与えないものを採用することが,まずは,優先的に考慮されるべき事柄であったと認められる」ということにはならない。
・・・当業者にとっては,「身体健康上,悪い影響を与えるものよりも与えないものを採用すること」は,シュープレス用ベルトの耐クラック性その他の性能を差し置いてでも,まずは,優先的に考慮されるべき事柄であったとはいえない。

イ 審決は,甲第2号証は、熱硬化性ポリウレタンの硬化剤としてMOCAに代えて引用発明2を用いることを強く動機づける刊行物といえると認定している。
  
しかし,甲第2号証には、シュープレス用ベルトの技術分野については記載も示唆もされていないのであるから,甲第2号証に記載の事項が,シュープレス用ベルトの技術分野にも共通する事項であるとは直ちに認めることはできないし,仮に,技術分野が共通するといえたとしても,それだけでは当該技術分野において、引用発明1のシュープレス用ベルトの第二樹脂層の硬化剤である「MOCA」を引用発明2の「ETHACURE300」に変更する動機付けとしては十分とはいえない。」


被告の反論:
「・・・。
(2)
動機付けについて
ア 甲1と甲2の記載,及び,ETHACURE300が,熱硬化性ウレタン樹脂に用いられる硬化剤としてMOCAの代替の硬化剤であったことが本件発明の出願時において周知であったことからすれば,当業者であれば,甲1と甲2を結びつけることは容易に想到できること
(
) 1と甲2の記載からすれば,当業者であれば,甲1と甲2を結びつけることは容易に想到できること
a
原告は,シュープレス用ベルトの技術分野において,身体健康上,悪い影響を与えるもの(MOCA)よりも与えないものを採用することが,優先的に考慮されるべき事柄であったかどうかを問題にしているが,そもそも,甲2は,ポリウレタン等の熱硬化性樹脂の硬化剤であるMOCA及びETHACURE300についての文献であり,かつ,その当時,ポリウレタン等の熱硬化性樹脂がシュープレス用ベルトに用いられることは主流であり,かつその事実は周知といえるほどに知られていた。そして,引用発明1においてはMOCAが熱硬化性ウレタン樹脂のための硬化剤として使用されているが,甲2においては,ETHACURE300が熱硬化性ポリウレタンにおける「MOCA代替の新硬化剤」として紹介されている。 したがって,甲1及び2の記載からすれば,甲1と甲2を結びつける動機付けは十分にあり,当業者であれば,甲1と甲2を結びつけることは容易に想到できる。
b
原告は,甲2には,シュープレス用ベルトの技術分野について記載も示唆もされていないと主張する。
しかし,甲2は,ポリウレタン等の熱硬化性樹脂の硬化剤であるMOCA及びETHACURE300についての文献であり,かつ,本件出願当時において,ポリウレタン等の熱硬化性樹脂がシュープレス用ベルトに用いられることは主流であり,かつその事実は周知といえるほどに知られていたから,甲2は,ポリウレタン等の熱硬化性樹脂の硬化剤の技術分野に関する文献であって,シュープレス用ベルトをも包含する技術分野に関する文献であるといえる。そして,甲2には,ポリウレタン等の熱硬化性樹脂の硬化剤として,MOCAに替えて,ETHACURE300を用いることが直接的に記載されている。・・・。

イ シュープレス用ベルトの技術分野において,身体健康上,悪い影響を与えるものよりは与えないものを採用するこが優先的に考慮されるべき事柄であったこと () シュープレス用ベルトの技術分野において,身体健康上,悪い影響を与えるもの(MOCA)よりも与えないものを採用することが,優先的に考慮されるべき事柄であったことは,本件発明の出願時,証拠を示すまでもなく当業者には自明ないし当然であった。
すなわち,シュープレス用ベルトはポリウレタン製のものが主流であるところ,労働安全衛生法,製造物責任法,その他環境汚染防止に関連する法令は,・・・。
(
) シュープレス用ベルトの技術分野において,身体健康上,悪い影響を与えるもの(MOCA)よりも与えないものを採用することが,優先的に考慮されるべき事柄であったことは,種々の文献(甲2,乙615)からも明らかである。・・・。

(3)
効果について
前記12のとおり,原告は,本件発明1の認定を誤り,したがって,本件発明1と引用発明1との相違点の認定も誤っている。原告は,かかる誤った主張を前提に,効果に関する主張をしており,前提自体が誤りであるから,かかる主張は失当である。」


裁判所の判断:
「・・・。
 (
以上によれば,甲第2号証に接した当業者が安全性の点からMOCAに代えてETHACURE300を用いることを動機付けられることがあるとしても,ETHACURE300をシュープレス用ベルトの硬化剤として使用した場合に,安全性以外の点(例えば耐久性)についてどのような効果を奏するかは不明である上,安全性の点からみても他にも選択肢は多数あり,その中から特にETHACURE300を選択する理由はなく,かえって,他の代替品を選択する可能性が高いといえるため,ETHACURE300の使用を強く動機付けられるとまでいうことはできない。
(
なお,顕著な効果については,被告は,原告の主張の誤りを指摘するのみで,具体的な反論をしていない。
  上記アないしウのとおり,甲第2号証に接した当業者が,安全性の点からMOCAに代えてETHACURE300を使用することを動機付けられることがあるとしても,本件発明1が,ベルトの外周面を構成するポリウレタンにクラックが発生することを防止できるという,当業者といえども予測することができない顕著な効果を奏するものであることに照らせば,本件発明1は,当業者が容易に想到するものであるとはいえず,進歩性があると認められるから,これを無効とすることはできない。

(3)
被告の主張について
被告は,シュープレス用ベルトの技術分野において,身体健康上,悪い影響を与えるものよりも与えないものを採用することが,優先的に考慮されるべき事柄であったことは,本件特許出願時,当業者には自明ないし当然であり,熱硬化性ウレタン樹脂に用いられる硬化剤として,ETHACURE300が,引用発明1において使用されているMOCAの代替の硬化剤であったことは,甲第2号証に記載されているほか,本件特許出願時において周知であったから,甲第2号証に接した当業者であれば,引用発明1において,MOCAに代えてETHACURE300を使用することは,容易に想到できると主張する。
しかし,前示のとおり,本件発明1は,当業者といえども予測することができない顕著な効果を奏するものであるから,甲第2号証に上記のような記載があることを考慮してもなお,当業者が容易に想到するものであるとはいえない。」

■ファモチジン事件


<判決紹介>

コメント:
ちょっと古いけど、ファモチジン事件。 結晶特許発明の技術的範囲を検討する上で参考になる事例。 裁判所は、出願経過等を考慮し、技術的範囲に属さないと判断した。☆☆☆☆



平成15(ネ)第3034号 特許権侵害差止請求控訴事件、東京高等裁判所
控訴人: リヒター ゲデオン ジェセティ ジャール アールテー
被控訴人: 日本医薬品工業株式会社、株式会社陽進堂
特許: 特許第2708715
請求項1
その融解吸熱最大がDSC159℃であり,その赤外スペクトルにおける特性吸収帯が35063103及び777cm-1にあり,及びその融点が159162℃であることを特徴とする、再結晶により析出された形態学的に均質なB」型のファモチジン。 (下線は訂正部分)

裁判所の判断:
「第3 当裁判所の判断
 1
 本件発明のファモチジンについて
 (1)
控訴人は,構成要件①ないし③の3パラメータによって特定される範囲内において形態学的組成が一様である再結晶により析出されたB型ファモチジンが,本件発明の「『B』型のファモチジン」であり,A型ファモチジンの混在を排除するものではないと主張し,被控訴人らは,構成要件⑤の「『B』型のファモチジン」との記載部分は,純粋なB型ファモチジン結晶を意味し,A型とB型の混合物を排除する意味を有すると主張するので,検討する。
・・・。

次に,本件特許出願の経過についてみると,本件特許出願に対して,特許庁は,平成8312日付け拒絶理由通知書をもって,特許法292項の規定により特許を受けることができない旨の拒絶理由を通知したが,これに対する控訴人提出の平成8926日付け意見書(乙6-1添付)には,「B型ファモチジンの方がA型より強い生物吸収力を有し,従いましてB型の方が有利な効能を発揮し得ることとなります。このことは,本願発明により純品なB型ファモチジンを得ることではじめて見出されたことであります」(1頁最終段落),「よって,B型ファモチジンを純品で得ることは,薬理効能が優れている化合物が得られるという点で有利であるのみならず,薬剤の製造バッチ間差も回避できるという点で有利な効果をも奏します。このようなことは,ファモチジンの混合物についてしか述べていない引例13記載の発明から当業者が容易に想到し得るものではありません」(2頁下から第2段落)と記載されている。
そうすると,上記の発明の詳細な説明の記載及び出願経過を参酌して解釈すれば,本件明細書の特許請求の範囲【請求項1】の「『B』型のファモチジン」との記載は,ファモチジンには,A型ファモチジン,B型ファモチジン及び両者の混合物が存在することを前提とした上で,特定の結晶形である「『B』型のファモチジン」に限定したものであることが明らかであるから,A型とB型の混合物を排除する意味を有するものというべきである。
・・・。

これらの記載によれば,控訴人は,明りょうでない記載の釈明又は特許請求の範囲の減縮を目的として,「B」型のファモチジンを「再結晶により析出された形態学的に均質な」ものに限定し,本件訂正に係る訂正を請求したものであるところ,甲21審決及び甲24-3審決は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものとして,本件訂正を認めたものであることが認められる。したがって,「形態学的に均質な」の要件を付加する訂正が特許請求の範囲の減縮として認められている以上,本件発明の構成要件⑤のB型ファモチジンが,本件訂正前のA型ファモチジンを含まない純粋なB型ファモチジンの範囲を超えて,控訴人主張のように,その主要部においてB型ファモチジンであり,全体として実質的にB型ファモチジンと同等な組成物であるB型ファモチジン均質体を意味すると解釈する余地はない。
・・・。

しかしながら,そもそも,本件明細書には,控訴人主張のように,A型ファモチジンの混合が約15%まで許容される範囲のB型ファモチジンが形態学的に均質なB型ファモチジンであることを示唆する記載は何ら存在しない。
・・・。

(4)
ところで,本件発明の「『B』型のファモチジン」は,上記(2)のとおり,A型ファモチジンを含まない純粋なB型ファモチジンを意味するものであるとしても,全く純粋な結晶を製造することは極めて困難であり,また,高純度の結晶であっても,通常の測定法では検出できない程度の不純物が混合することが避け難いことは当裁判所に顕著であるから,通常の測定法では検出できない程度の量のA型ファモチジンが混合したB型ファモチジンも,本件発明の「『B』型のファモチジン」に含まれると解する余地がある。そこで,更に検討すると,本件明細書(甲24-2添付)の特許請求の範囲【請求項1】の「その融解吸熱最大がDSC159℃にあり,その赤外スペクトルにおける特性吸収帯が35063103及び777cm-1にあり,及びその融点が159~162℃であることを特徴とする」との記載,及び発明の詳細な説明において,融解吸熱最大について,B型はDSC159℃,A型は167℃であることを明確に区分して記載していること(段落【0002】,【0010】,【0011】,【0016】,【0017】),赤外吸収スペクトルの特性吸収帯について,B型は35063103777cm-1にあり,A型は345016701138611cm-1であることを明確に区分して記載していること(段落【0010】,【0011】,【0016】,【0017】)に照らすと,融解吸熱最大(構成要件①),赤外吸収スペクトル特性(構成要件②)及び融点(構成要件③)について,特許請求の範囲【請求項1】に記載された上記各特性のみが検出され,A型の特性が検出されない限度のA型ファモチジンを含むB型ファモチジンは,本件発明の技術的範囲に含まれるが,A型の特性が検出される程度までA型ファモチジンを含むB型ファモチジンは,本件発明の技術的範囲に属しないと解するのが相当である
・・・。

そうすると,被控訴人ら医薬品が,いずれもA型ファモチジンを含むものであることは,別紙物件目録の記載のとおり,控訴人の自認するところであり,上記事実によれば,被控訴人ら医薬品の原薬であるファモチジンは,融解吸熱最大(構成要件①)について,A型の特性が検出される程度までA型ファモチジンを含むものと認められるから,本件発明の構成要件⑤を上記1(4)のとおり解釈するとしても,これを充足せず,被控訴人ら医薬品は,本件発明の技術的範囲に属しないというべきである。」


■ニカルジピン事件


<判決紹介>

コメント:
ちょっと古いけど、ニカルジピン事件。 結晶特許発明の技術的範囲を検討する上で参考になる事例。 裁判所は、作用効果を考慮した上で、控訴人製剤は技術的範囲に属すると判断した。☆☆☆☆


平成14()1567号 損害賠償請求控訴事件、大阪高等裁判所
控訴人: 大正薬品工業株式会社、日清キョーリン製薬株式会社
被控訴人: 山之内製薬株式会社
特許: 特許第1272484
請求項1
無定形26‐ジメチル‐4‐(3'‐ニトロフエニル)‐14‐ジヒドロピリジン‐35‐ジカルボン酸‐3‐メチルエステル‐5‐β‐(N‐ベンジル‐N‐メチルアミノ)エチルエステル(ニカルジピン)またはその塩を含有することを特徴とするニカルジピン含有持続性製剤用組成物

裁判所の判断:
「第4 当裁判所の判断
 1
争点(1)(本件発明の技術的範囲は,①無定形塩酸ニカルジピンの含有量,②無定形塩酸ニカルジピンの生成方法の観点からの限定を受けるか。)について
 
当裁判所も,製剤中の無定形塩酸ニカルジピンの含有量が極微量で本件発明の作用効果を生じないことが明らかであるような場合を除いて,当該製剤は本件発明の技術的範囲に含まれ,無定形塩酸ニカルジピンの含有量や生成方法の観点からの限定を受けることはないものと判断する
・・・。

 
(当審における控訴人らの主張についての判断)
 (1)
控訴人らは,ニカルジピンの無定形化比率と腸内溶解度の改善効果ひいては持続性効果とは比例関係にあるから,無定形物の含有量が低い場合には持続性効果も低く,無定形塩酸ニカルジピンの含有量が,含有塩酸ニカルジピンが結晶形ばかりである既知の通常製剤と比較して,実用的に意味のある持続性効果が付加されていると認め得る量でなければ,本件発明の技術的範囲に属しないと主張する。
 
しかし,引用に係る原判決「事実及び理由」第41(1)(2)(5)のとおり,本件明細書中には,製剤の全ニカルジピン中の無定形物の含有割合等について何らの限定を加えているような記載は見当たらず,かつ,本件発明が無定形塩酸ニカルジピンに腸管粘膜からの吸収性に富み優れた持続性効果を有することを見出した点に特徴があることからすると,控訴人製剤が無定形塩酸ニカルジピンを含有していると認定された場合(もとより,当裁判所も無定形物の必要量が無制限と解するわけでないことは,引用に係る原判決222行目ないし5行目で判示したとおりである。),それにもかかわらず控訴人製剤において,腸管粘膜からの吸収性に富み優れた持続性効果を有するといった効果を奏しないような特段の事情が認定できない限り,控訴人製剤は本件発明の技術的範囲に属するというべきである。そして,控訴人製剤についてかかる特段の事情の存在を窺わせるような証拠はなく,かえって,乙48及び弁論の全趣旨によると,控訴人製剤は,乙48の実施例1の製法に基づいて製造されたもので,「胃液および腸液における溶解性が適宜に調節されて,充分な初期効果と持続効果」を有するものであると認められるから,控訴人製剤に無定形塩酸ニカルジピンが含有されていた場合,控訴人製剤は本件発明の技術的範囲に属するというべきである。

 (2)
控訴人らは,本件明細書には,すべての塩酸ニカルジピンが無定形である場合しか記載がなく,本件発明の作用効果を生じないことが明らかである下限量の認定ができなければ,無定形物の必要量が無制限であると解してはならず,全部無定形物であるか,それと均等と認められる範囲以外の部分については,発明が完成するに至っていなかったと解すべきであると主張する。
 
しかし,本件明細書の実施例1ないし5では,いずれもニカルジピン塩酸塩原末及び賦形剤の混合物を振動ボールミルを用いて相当時間処理したところ,「ニカルジピン塩酸塩結晶は無定形化していた。」との記載があるが,これらの記載をもって,本件発明が塩酸ニカルジピンにつき無定形のものを100%含む場合に限定する趣旨と直ちに解することはできず,ほかに本件明細書中に,本件発明が塩酸ニカルジピンにつき無定形のものを100%含む場合に限定することを明示又は示唆するような記載は見当たらない。
 
そして,無定形塩酸ニカルジピンが含まれていれば,「添加物を配合することなく優れた持続性効果を有」し,「長時間にわたり安定したニカルジピンの有効血中濃度を維持できる」という本件発明の作用効果を奏するものと予測できるのであり,そうである以上,あえて下限量を画する必要はないというべきである。 また,本件発明が全部無定形物であるか,それと均等と認められる範囲を除いては未完成であるとする控訴人らの主張も独自の見解にすぎない。
 
したがって,控訴人らの上記主張を採用することはできない。

 (3)
さらに,控訴人らは,控訴人製剤が,本件発明の実施品である被控訴人製品と同一の作用効果を奏しているのは,控訴人製剤が本件発明の要件を充足しているからではなく,三重被覆製剤技術という独自の製剤技術によってもたらされたものであり,あるいは,控訴人製剤のように溶解補助剤CMECを添加すれば,塩酸ニカルジピンを無定形化した場合と同程度以上の溶解度上昇効果を苦もなく達成できると主張し,乙4864にもこれらに沿った記載がある。
 
しかし,仮に三重被覆製剤技術やCMECの添加によって控訴人ら主張のような効果を挙げられるとしても,同時に控訴人製剤に無定形塩酸ニカルジピンが含有されていると認定された場合には,控訴人製剤は前記(1)のとおり本件発明の技術的範囲に属することとなり,控訴人ら主張の三重被覆製剤技術やCMECの添加は,単なる付加にすぎないというべきであるから,控訴人らの上記主張を採用することはできない。」


■広告宣伝の内容から、被告化粧料は部分肥満改善用を満たすと判断した事例


<判決紹介>

コメント:
被告化粧料が「部分肥満改善用」の構成要件を充足するかどうかという点について、広告宣伝(ウェブ、商品説明書)の内容から、充足すると判断した事例。 ☆☆


平成23()4836号 特許権侵害差止等請求事件
平成25117日判決言渡、大阪地方裁判所
原告: 株式会社メディオン・リサーチ・ラボラトリーズ
被告: 有限会社サンクス製薬 等
特許: 特許第4659980
請求項1
 部分肥満改善用化粧料,或いは水虫,アトピー性皮膚炎又は褥創の治療用医薬組成物として使用される二酸化炭素含有粘性組成物を得るためのキットであって,
1
)炭酸塩及びアルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物と,酸を含む顆粒(細粒,粉末)剤の組み合わせ;又は
2
)炭酸塩及び酸を含む複合顆粒(細粒,粉末)剤と,アルギン酸ナトリウムを含有する含水粘性組成物の組み合わせ
からなり,
含水粘性組成物が,二酸化炭素を気泡状で保持できるものであることを特徴とする,
含水粘性組成物中で炭酸塩と酸を反応させることにより気泡状の二酸化炭素を含有する前記二酸化炭素含有粘性組成物を得ることができるキット。

裁判所の判断:
「(3) 「部分肥満改善」について
ア 被告各製品に係る広告宣伝
 
後掲各証拠によれば,被告各製品の広告宣伝には以下の記載がされているものと認められる。
(ア) 被告製品1を紹介するウェブページ(甲102
「肌自体が健全になり,代謝が活発化。余分なもの(老廃物・メラニン)をどんどん排泄することで皮膚がしまって透明感のある小顔へと導きます。」「エステサロン生まれのリフトアップ」
(イ) 被告製品2を紹介するウェブページ(甲121
「たった1回で顔やせ,美白を実感。」
(ウ) 被告製品5の商品説明文書(甲16
KIARACO2ジェル)は,傷の治療薬の研究過程で発見されました。本製品の製造の元になった医薬品は,深い傷を早くきれいに治しましたが,同時に脂肪がなくなっていくのを試験担当ドクターが発見したのです。
 
そこで,その医薬品を自分の顔半分に塗布したところ,誰が見てもはっきりわかるほど顔半分が見事に痩せました。この結果をうけて皮膚科や美容外科のドクターに協力を求め効果を検討したところ,顔痩せはほぼ100%誰にでも効くことがわかりました。」
3,部分痩せ
 
毎日パックします。
 
早い人は1週間で効果が出せますが,普通は1ヶ月を目安にしてください。
 
美白効果が出にくい人でも顔痩せ効果は確実です。
 
腕・足・腹部にも効果がありますが,2ヶ月以上の使用が必要です。」
・・・。

イ 構成要件充足性
 
前記アの被告各製品に係る広告宣伝の内容からすれば,被告各製品は,小顔効果,顔やせ,部分痩せの効果を奏する化粧料として販売されていることが認められる。
 
そうすると,被告各製品が本件各特許発明の「部分肥満改善用化粧料として使用される」という構成を文言上充足することは明らかである。
 
被告らは,前記アの被告各製品に係る広告宣伝には関与していない旨主張する。しかしながら,上記各広告宣伝は,その体裁・内容自体からして真正に成立したものであると認めることができる(被告らも第三者の作成名義で真正に成立した文書であることについてまで争っているとは解されない。)。そして,被告各製品について上記のような類似した広告宣伝がされていることからすれば,被告らが,小売店等に対し,上記のような作用効果を奏する化粧料として被告各製品を販売していることは優に認められるものというべきである。」



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徳重大輔


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バイオ、医薬、特許関連のブログです。
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SK特許業務法人に勤務しています。明細書作成、特許調査、その他一通りやってます。明細書はバイオ医薬(特に抗体医薬)、調査は無効資料調査が特に得意です。

お問い合わせはbiopatentblog@gmail.com(@は半角)へお願いします。

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