■2015-02-

■(2月25日) バイオ医薬品特許のセミナーを開催します。


2月25日(水)にバイオ医薬品の特許出願の留意点に関するセミナーを開催いたします。 分野は抗体医薬を中心に、RNAi、幹細胞、特許調査などです。 一般的な話にとどまらず、私自身が実務の中で気付いたことや、独自調査により見えてきたことなども含めてお話させていただきます。
ご不明な点がございましたらお気軽にお問い合わせください。 皆様のご参加を心よりお待ちしております。


■日時: 2015225() 13:00-16:30
■会場: 東京都中小企業振興公社3階第4会議室(最寄駅:秋葉原駅)、地図は
こちら
■受講料: 141,040円 (税込・資料付)
■受講対象: 製薬会社・医薬系大学に所属の方
■主催者: 株式会社情報機構
■お申込みページへのリンク
主催者WEBページ
割引チケット

■タイトル
バイオ医薬品の特許明細書作成・OA応答の留意点
-抗体医薬品特許を中心に-


■講師
SK
特許業務法人 徳重大輔

■コメント
抗体医薬品の市場規模は年々増加しており、医薬品の年間売上トップ10の半数を占めるようになりました。 また、核酸医薬や幹細胞関連技術の開発も着実に進んでおり、バイオ医薬品の市場規模は今後も拡大することが見込まれます。 そのような中、バイオ医薬品の特許を上手く取得することは製薬会社にとって重要なミッションといえます。

本講座では、バイオ医薬品の特許出願、拒絶理由通知への応答の際の留意点に関して、私の知っている範囲で、できるだけ実務に近い具体的な話をしようと考えています。 分野は抗体医薬特許が中心になります(6割程度を予定)。 内容はバイオ医薬特許の種類紹介、明細書作成・OA応答上の注意点、事例紹介などになる予定です。 バイオ医薬特許に興味がある研究者の方や、この分野での経験が少ない方が参加されても理解しやすいように、ある程度基本的なことも含めてテキストを作成させていただく予定です。

■講演概要
1.
バイオ医薬特許の基本
 1.1 バイオ医薬品とは
 1.2 バイオ医薬特許の種類
 1.3 大型バイオ医薬品の特許切れ
 1.4 バイオ医薬特許に特有の限定
2. RNAi
関連特許の明細書作成・OA応答の留意点
 2.1 RNAiとは
 2.2 請求項の種類
 2.3 留意点
 2.4 簡易調査結果・事例紹介
3.
幹細胞関連特許の明細書作成・OA応答の留意点
 3.1 幹細胞とは
 3.2 請求項の種類
 3.3 留意点
 3.4 簡易調査結果・事例紹介
4.
その他のバイオ医薬特許の明細書作成・OA応答の留意点
5.
バイオ医薬特許の特許調査の留意点
6.
抗体医薬特許の明細書作成・OA応答の留意点
 6.1 抗体医薬特許の基本
 6.2 請求項の種類
  ・抗原、用途、エピトープ、結合部位、結合性、交差反応、阻害、機能、ADC、組合わせ、組成、ヒト化、構造、配列、寄託、製法、CDRFvなど
 6.3 抗体医薬特許のクレーム作成の留意点
 6.4 抗体医薬特許の明細書作成の留意点
 6.5 抗体医薬特許のストーリー作成の留意点
 6.6 抗体医薬特許の拒絶理由通知への応答の留意点
 6.7 抗原を特定せずに抗体一般を権利範囲に含むような抗体医薬特許
 6.8 レアケース
 6.9 抗体医薬品XYZの出願分析

<質疑応答>


■関連記事
(1月31日) 医薬品の特許調査セミナーを開催します。

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■HFO-1234zeとPOEの組合わせの顕著な効果が認められなかった事例


<判決紹介>
平成26(行ケ)10104号 審決取消請求事件


コメント
原告は、HFO-1234zeとポリオールエステルの組み合わせに、優れた混和性及び安定性という当業者にとって予想外の顕著な効果があることを主張したが、認められなかった。 審決維持。 ☆☆


抜粋
・平成26(行ケ)10104号 審決取消請求事件
・平成27128日判決言渡、知的財産高等裁判所第3
・原告: ハネウエル・インターナショナル・インコーポレーテッド
・被告: 特許庁長官
・特許: 特許4699758
・請求項1:
化学式(II
【化1

20150207.jpg
(式中,各々のRは独立にF,またはHであり,
R’
は(CR2nYであり,
Y
CF3であり,
n
0であり,かつ,
不飽和な末端炭素上のRの少なくとも1つはHであり,残るRのうち少なくとも1つはFである)
の少なくとも1つの化合物と,ポリオールエステルの潤滑剤とを含む蒸気圧縮システム用の熱移動組成物であって,
前記化学式(II)の少なくとも1つの化合物が,1333-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)である,熱移動組成物。


・概要
第2 事案の概要
・・・。
3
審決の理由
・・・。
(2)
 審決が上記結論を導くに当たり認定した,引用例1に記載された発明(以下「引用発明」という。)の内容,本件発明1と引用発明との一致点及び相違点は,次のとおりである。
・・・。
イ 一致点
「化学式(II)の少なくとも1つの化合物と,潤滑剤とを含む蒸気圧縮システム用の熱移動組成物であって,前記化学式(II)の少なくとも1つの化合物が,1333-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)である,熱移動組成物」である点。
ウ 相違点
「潤滑剤」につき,本件発明1では,「ポリオールエステルの潤滑剤」であるのに対し,引用発明においては「ヒートポンプ用の熱媒体に用いられる潤滑油」である点。
・・・。

5 当裁判所の判断
当裁判所は,原告の主張は理由がなく,審決に取り消されるべき違法はないと判断する。その理由は次のとおりである。
・・・。
2
取消事由2(本件発明1の予想外かつ顕著な効果の看過)について
原告は,審決が,相違点1に係る本件発明1の構成の容易想到性の判断に関して,本件発明1において,HFO-1234zePOEとを組み合わせることにより,優れた混和性及び安定性という当業者にとって予想外の顕著な効果を奏することを看過したと主張する(前記第32)。そこで,引用例1及び本件優先日以前に頒布された刊行物の記載内容並びに技術常識等を踏まえ,本件明細書に記載された上記の冷媒化合物と潤滑剤との組合せの奏する混和性及び安定性の程度が,当業者の予想を超える顕著なものであるといえるかどうかを検討する。
・・・。
(3)
 検討
・・・。

これらの記載を踏まえると,当業者において,本件発明1に係る冷媒化合物と潤滑剤の組合せがある程度の化学的安定性を有することは,十分に予想することができることである。したがって,本件明細書にHFO-1234zePAGとを組み合わせた場合の化学的安定性についてのシールドチューブ試験の結果が記載され,HFO-1234zePOEとの組合せについても,かかる試験結果と同程度の化学的安定性があると考えられるとしても,そのことは当業者が予想することができたものであり,また,その化学的安定性の程度が予想を超える程に格別顕著なものであることを認めるに足りる証拠もない。

(4)
原告の主張について
ア 原告は,冷媒化合物と潤滑剤との混和性は,実験なしに予測することができず,冷媒全般に適した「当業界慣用の潤滑剤」は存在しないし,潤滑剤には様々な種類が存在しており,HFO-1234zePOEとの組合せは,「当然の考慮の対象」ではなかったと主張する(前記第32(2))。
しかしながら,本件優先日の当時の公知文献の記載や技術常識を踏まえると,様々な種類の潤滑剤のうち,POEHFC系の冷媒に対して一般的に用いられていたということができること,冷媒全般に適した「当業界慣用の潤滑剤」の存否はともかく,HFO-1234zePOEとの相溶性を予測した上で,かかる組合せを選択することができると認められることは,いずれも前記(3)のとおりである。なお,原告が取消事由3において指摘するフルオロオレフィンの反応性や毒性への懸念は,上記のような相溶性についての予測それ自体を妨げるものではない。

イ 原告は,引用例1に本件発明1への示唆があるとはいえないと主張する(前記第32(3))。
しかしながら,引用例1に係る発明の特許出願時ではなく本件優先日の当時における公知文献の記載や技術常識を踏まえると,HFO-1234zePOEとの相溶性を予測した上で,かかる組合せを選択することができることは前記(3)のとおりである。
なお,原告は,引用例1の実施例1において示された冷媒の能力の値に誤りがあるとも指摘する。しかし,仮に,本件優先日当時,原告が提出するシミュレーション(甲24)と同様のシミュレーションを行い,実施例1の冷媒化合物の能力の値がその記載されたものよりも低いとの結果を得た当業者がいたとしても,これとは化合物の構造の異なるHFO-1234zeを冷媒として用いた実施例2について追加の確認等を行うことなく,直ちに引用例1の記載全体の信用性を疑うものと考えることはできない。

ウ 原告は,HFO-1234zePOEとの優れた混和性は,引用例2に開示されたHFO-1336POEとの混和性や,引用例3及び4に開示された幾つかのHFCとエステル油との混和性から予測することができないと主張する(前記第32(4)及び(5))。
しかしながら,HFO系冷媒であるという点でHFO-1234zeと共通するHFO-1336や,HFOと構造上の共通性が一部認められる幾つかのHFC系冷媒と,POEとの相溶性についての上記各文献の記載から,HFO-1234zePOEとの組合せについて,実際に混合することなしには具体的な相溶性の程度を確認することはできないものの,同程度の相溶性があると予測することができることは前記(3)のとおりである。

これに対し,原告は,本件発明におけるHFO-1234zePOEとの混和性が,引用例2ないし4の開示する混和性と同程度であるとはいえないし,本件発明の効果が同程度である可能性が「それなりに高い」との曖昧な見込みは,容易想到性の評価根拠事実として価値が乏しいとも主張する(前記第32(6))。
しかしながら,引用例4には,HFC系の冷媒化合物のうちHFC-125及びHFC-152aが,本件明細書に記載されたHFO-1234zePOEとの相溶性が認められた温度条件の範囲を含む,あるいはそれと概ね重なり合う温度条件の範囲内で,同文献において試験された潤滑剤濃度(2050及び80重量%)の限りではその濃度を問わず,POEとの相溶性を示したことが開示されている。そして,引用例4が,HFCの冷媒としての実用化の可能性を検討するため,一般的に冷媒として用いられる温度条件や濃度条件下での相溶性の試験を行ったものと考えられることを踏まえると,上記の試験結果に照らし,HFC系の化合物と構造上の共通性があるHFO-1234zeが,本件明細書に記載された上記温度条件の範囲内で,かつ熱移動組成物として一般的に想定される潤滑剤濃度の範囲内にある限り,POEと相溶性を有する可能性がそれなりに高いと予測することは,当業者において十分に可能であるということができる。

なお,本件発明1ないし4が,いずれも原告の指摘するような低潤滑剤濃度におけるHFO-1234zePOEとの組合せに限定されていない以上,仮に,かかる低潤滑剤濃度における両者の相溶性を,引用例2ないし4から直接に予測することが困難であったとしても,そのこと自体は,本件発明が当業者の予測を超える顕著な効果を奏することを裏付けるものではない。
以上によれば,本件明細書に開示されたHFO-1234zePOEとの混和性(相溶性)の程度をもって,本件発明が当業者の予測を超える顕著な効果を奏するものであると評価することはできない。
エ したがって,原告の前記主張は,いずれも採用することができない。

(5)
 小括
以上によれば,本件発明1は,混和性(相溶性)や化学的安定性に関して当業者の予測を超える顕著な効果を奏するとはいえないから,審決の認定判断にこの点を看過した誤りがあるということはできない。



■結晶特許において回折角が一致しないので非侵害と判断された事例


<判決紹介>
平成25()33993号 特許権侵害差止等請求事件


コメント
結晶特許に関する新薬vsジェネリックの侵害訴訟。 先発品はリバロ(一般名:ピタバスタチンカルシウム)。
被告製品の15本のピークの回折角のうち、9本がクレームの回折角(構成要件C・C’)と一致していなかった。 原告は以下の点を主張したが認められなかった。 構成要件非充足。 ☆☆

(1)
クレームの回折角の数値は結晶形態Aとの同一性を判断するための数値にすぎない。
(2)
同一性の判断は、日本薬局方等によれば、X線粉末回折法において±0.2°以内の誤差で一致するピークが10本以上確認されるなどすれば十分である。別紙原告測定結果によれば,被告製品は10本以上確認されており、構成要件CC’を充足する。


抜粋
・平成25()33993号 特許権侵害差止等請求事件
・平成27127日判決言渡、東京地方裁判所民事第29
・原告: 日産化学工業株式会社
・原告補助参加人: 興和株式会社
・被告: ダイト株式会社、持田製薬株式会社、東和薬品株式会社、鶴原製薬株式会社、科研製薬株式会社、小林化工株式会社、Meiji Seika
・特許: 特許51861085267643
・請求項:
【請求項1
:特許5186108
式(1)で表される化合物であり,
【化1
20150201.jpg
B  713%の水分を含み,
C  CuK
α放射線を使用して測定するX線粉末解析において,4.96°6.72°9.08°10.40°10.88°13.20°13.60°13.96°18.32°
20.68°
21.52°23.64°24.12°及び27.00°の回折角(2θ)にピークを有し,かつ,30.16°の回折角(2θ)に,20.68°の回折角(2θ)のピーク強度を100%とした場合の相対強度が25%より大きなピークを有することを特徴とする
ピタバスタチンカルシウム塩の結晶
(但し,示差走査熱量測定による融点95℃を有するものを除く)。

【請求項1:特許5267643
C’  CuKα
放射線を使用して測定するX線粉末解析において,4. 96°6.72°9.08°
10.40°
10.88°13. 20°13.60°13.96°18.32°20.68°21.52°23.64°24.12°27.00°及び30. 16°の回折角()にピークを有し,かつ
B  7
重量%~13重量%の水分を含む,
A  
式(1)で表される
【化1
20150201.jpg
D  
ピタバスタチンカルシウム塩の結晶
E  
(但し,示差走査熱量測定による融点95℃を有するものを除く)を,
その含有水分が4重量%より多く,15重量%以下の量に維持することを特徴とする
I  
ピタバスタチンカルシウム塩の保存方法。


・概要
第2 事案の概要
本件は,ピタバスタチンカルシウム塩の結晶及びその保存方法に関する2件の特許権を有する原告が,被告らによる原薬及び製剤の製造・販売等が上記各特許権の侵害に当たる旨主張して,特許法100条1項に基づきその差止めを求める事案である。
1 前提事実(後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実を含む。なお,特に断らない限り,証拠の枝番号の記載は省略する。以下同じ。)
(1) 当事者原告は,基礎化学品,医薬品の製造・販売等を業とする株式会社である。被告ダイトは,医薬品製剤の原薬,医薬品の製造・販売等を業とする株式会社であり,その余の被告らは,いずれも医薬品の製造・販売等を業とする株式会社である。
・・・。

3 当裁判所の判断
・・・。
(2)
前記前提事実及び上記認定事実に基づき,構成要件CC’の回折角について検討する。
ア 本件各発明の構成要件CC’においては,発明の構成が15本のピークの小数点以下2桁の回折角により特定されており,その数値に一定の誤差が許容される旨の記載や,15本中の一部のピークのみの対比によって特定される旨の記載はない。
また,上記認定の発明の詳細な説明の記載によれば,本件各発明は,ピタバスタチンカルシウム原薬に含まれる水分量を特定の範囲にコントロールすることでその安定性が格段に向上すること,及び,結晶形態ACの中で結晶形態Aが医薬品の原薬として最も好ましいことを見いだしたというものである。そして,結晶形態B及びCは,水分量が結晶形態Aと同等で,単に,CuKα放射線を使用して測定した粉末X線回折図で結晶形態Aに特徴的な3本のピークの回折角が存在しないことによって結晶形態Aと区別される結晶多形というのであるから,構成要件CC’の小数点以下2桁の数値で表される15本のピーク中3本のみ相違することが,技術的範囲の属否を判別する根拠とされていることになる。
さらに,本件明細書のその余の記載をみても,結晶形態Aは構成要件CC’の回折角等の粉末X線回折パターンによって特徴付けられるという以上の特定がされておらず(段落【0008】,【0010】,【0016】,【0033】参照。本件保存方法特許の明細書についても同様である。甲21及び2),回折角に一定の誤差が許容されることなどをうかがわせる記載も見当たらない。
そうすると,本件各発明の技術的範囲に属するというためには構成要件CC’の回折角の数値が15本全てのピークについて小数点第2位まで一致することを要するというべきである。

イ 上記アの解釈は,前記(1)イ~エの事実からも裏付けられる。
すなわち,ピタバスタチンカルシウム塩の結晶形態には,本件明細書の結晶形態AC及びチバ特許明細書の結晶多形AF以外にも未知の結晶多形が存在し得るところ,粉末X線回折測定の回折角の数値により結晶形態を特定した医薬化合物の発明の特許出願には,ピークの回折角に±0.1°0.2°の許容誤差を設けるものが多数存在し,結晶形態を特定するピークの本数も数本~十数本で特定するものなど多様であって,その技術的範囲が一定の許容誤差ないし一定のピーク本数によって判断されるとの技術常識は存在しないことがうかがわれるから,構成要件CC’に記載された15本の数値のうち一部のみが一致し,又は一定の誤差の範囲で一致するにとどまる結晶がこれに含まれると解する場合には,本件各発明の技術的範囲への属否が一義的には定まらないこととなる。また,上記のように解すると,原告自身が本件各発明の技術的範囲に属しないことを認めている結晶形態までもがこれに属する結果になるなど(例えば,チバ特許明細書に記載の結晶形態Eは,構成要件CC’に記載の15本のピークが全て±0.2°以内で一致する回折角を含んでいる。),不合理な結果となる。さらに,原告は,本件結晶特許の出願当初は1本のピークの回折角(許容誤差のない小数点以下2桁の数値)及び相対強度をもって発明を特定していたが,拒絶理由通知を受けて構成要件Cの回折角に係る補正をし,この補正が限定的減縮に当たる旨の意見を表明したのであるから,上記補正により,発明の技術的範囲を字義どおり小数点以下2桁の回折角の数値が15個全て一致する結晶に限定したとみるほかなく,このように解釈することが補正の趣旨に沿うものというべきである。
ウ 以上によれば,本件各発明の構成要件CC’を充足するためには,15本のピークの全ての回折角の数値が小数点第2位まで一致することを要し,その全部又は一部が一致しないピタバスタチンカルシウム塩の結晶又はその保存方法はその技術的範囲に属するということができないものと解するのが相当である。

(3)
これを被告原薬等についてみると,別紙原告測定結果の記載に被告らの主張するような問題点がある(甲52755等によっても,原告がピークに当たると主張する角度の測定値がノイズではなくピークと判別される根拠が必ずしも明らかではない部分がある。)ことをおいても,原告測定においては,15本全てのピークについて回折角の数値が小数点第2位まで一致するような測定結果は得られなかったというのである(前記前提事実(3)エ)。そして,原告が被告原薬等に含まれるとするピタバスタチンカルシウム塩における15本のピークの回折角は別紙物件目録記載1のとおりであり,うち9本は構成要件CC’と相違している。そうすると,同目録記載の回折角自体から,被告原薬等は構成要件CC’を充足しないと判断すべきことになる。

(4)
以上の認定判断に対し,原告は,①本件発明の対象は本件明細書記載の結晶形態Aであり,その充足性は当該ピタバスタチンカルシウム塩の結晶の粉末X線回折測定で得られたチャートにおいて結晶形態Aとの同一性を判断するのに十分な数のピークが確認されれば足りる,②上記の同一性の判断は,日本薬局方等の記載によれば,X線粉末回折法において±0.2°以内の誤差で一致するピークが10本以上確認されるなどすれば十分である,③別紙原告測定結果によればモチダ錠及びこれに用いられた被告原薬は構成要件CC’の回折角を充足すると主張する。
しかしながら,本件各発明の特許請求の範囲に結晶形態Aという記載はなく,また,前記発明の詳細な説明によっても,結晶形態Aとの同一性は構成要件CC’の回折角の数値が全て一致するか否かにより判定すべきものと解されるから,構成要件CC’の回折角の充足性は,端的に,当該結晶がその数値を全て充足するか否かにより判断すべきものであって,上記①の主張は失当である。

また,日本薬局方は,厚生労働大臣が医薬品の性状及び品質の適正を図るため,医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律41条(平成25年法律第84号による廃止前の薬事法41条も同趣旨)に基づき定める医薬品の規格基準書であり,原告の挙げる各文献中の記載も,上記法律の目的とする保健衛生の向上という公益的見地から医薬品の同一性等を判断する基準として記載されたものと解される。これに対し,医薬品等に係る特許発明の技術的範囲は,明細書の記載及び図面を考慮し当該発明に係る特許請求の範囲の記載に基づいて定めるべきものであるから(特許法701項,2項),日本薬局方の記載と常に一致しなければならないものではない。したがって,上記②の主張も理由がない。
さらに,上記③の主張は,原告の主張する回折角の解釈を前提とするものであるから,明らかに失当である。
(3)
なお,本件結晶特許については本件訂正請求がされているが,構成要件CC’の回折角は訂正の対象となっていないから,訂正の許否は本件の結論に影響するものではない。



■結晶特許において29条の2の拒絶審決が取り消された2事例


<判決紹介>
平成25(行ケ)10285号、第10286号 審決取消請求事件


コメント
引例の技術内容の認定に誤りがあると判断された。 ☆


抜粋
・平成25(行ケ)10285号、第10286号 審決取消請求事件
・平成27122日判決言渡、知的財産高等裁判所第4
・原告: エフ.ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
・被告: 特許庁長官
・出願: 特願2007-553501、特願2007-553502
・特願2007-553501の請求項1:
角度で示す特性ピークを
角度2θ±0.2°
10.2°
11.5°
15.7°
19.4°
26.3°
に有する,CuKα放射線を用いて得られたX線粉末回折パターンを特徴とする,3-N-メチル-N-ペンチル)アミノ-1-ヒドロキシプロパン-11-ジホスホン酸一ナトリウム塩一水和物(イバンドロネート)の結晶多形。



■製品サンプルの一部が特許発明の構成要件を充足していても差止めが認められなかった事例


<判決紹介>
平成24()15621号 特許権侵害行為差止等請求事件


コメント
合金特許の特許侵害訴訟。 被告製品サンプルの中には、本件特許発明の構成要件を充足しているものがあったが、種々の事情を総合考慮して差止めが認められなかった。

さらに、構成要件Cの「残部が
および不可避的不純物からなり」のクレーム解釈が以下のように判断された。

 構成要件Cは,本件発明に係る銅合金の組成につき,構成要件A及びBに続いて,「残部が銅および不可避的不純物からなり,」と規定するものであり,これは,「残部が銅および不可避的不純物のみからなり,」などと規定するのとは異なるから,構成要件Aが規定する「1.0~4.5質量%のNi」及び構成要件Bが規定する「0.25~1.5質量%のSi」のほか,銅及び不可避的不純物のみが本件発明に係る銅合金を構成すると,当然に限定して解釈すべきものではない
そして,証拠(甲2,29,39)によれば,本件特許請求の範囲の請求項3は,「Zn,Sn,Fe,Ti,Zr,Cr,Al,P,Mn,Agのうち1種類以上を総量で0.005~2.0質量%含有する請求項1および2に記載のCu-Ni-Si系合金。」というもので,ZnやSn等の物質の含有を予定した記載がされていること,本件明細書の発明の詳細な説明には,「(A)本発明は,上記知見に基づくものであり,1.0~4.5質量%のNiと0.25~1.5質量%のSiを含有し,残部が銅および不可避的不純物から実質的になり,…」(段落【0008】),「[その他の添加物]Zn,Sn,Fe,Ti,Zr,Cr,Al,P,Mn,Agは,Cu-Ni-Si系合金の強度及び耐熱性を改善する作用がある。…」(段落【0015】)などとSnやZn等の物質の含有を予定した記載がされているほか,実施例で用いられている合金は,0.5質量%のSn及び0.4質量%のZnを含有する合金Aと0.1質量%のMgを含有する合金Bであること(段落【0023】)が記載されていることが認められる。
そうすると,構成要件Cは,所定量のNiとSi,銅及び不可避的不純物以外に,SnやZn等の物質の含有を排除するものではないと解するのが相当である。

というわけで、合金分野の実務者にとって重要判決。 従属クレームや明細書の内容が考慮されているので、明細書作成の参考になりそう。
「からなる」が「のみからなる」と解釈されない場合があるという点は、医薬・バイオ・化学分野の実務者も要注意。 ☆☆☆


抜粋
・平成24()15621号 特許権侵害行為差止等請求事件
・平成27122日判決言渡、東京地方裁判所民事第47
・原告: JX日鉱日石金属株式会社
・被告: 三菱電機メテックス株式会社
・特許: 特許4408275
・請求項:
【請求項1
A  1.0
4.5質量%のNi
B  0.25
1.5質量%のSiを含有し,
C  
残部が銅および不可避的不純物からなり,
D  {111}
正極点図において,以下の(1)(2)の範囲のX線ランダム強度比の極大値が6.5以上10.0以下であることを特徴とする集合組織を有する
1)α=20±10°、β=90±10°
2)α=20±10°、β=270±10°
(但し、α:シュルツ法に規定する回折用ゴニオメータの回転軸に垂直な軸、β:前記回転軸に平行な軸)
E  
強度と曲げ加工性に優れたCu-Ni-Si系合金。
【請求項2
Mg
0.0050.3質量%含有する請求項1に記載のCu-Ni-Si系合金。
【請求項3
Zn
SnFeTiZrCrAlPMnAgのうち1種類以上を総量で0.0052.0質量%含有する請求項1および2に記載のCu-Ni-Si系合金。

・被告合金1:
1-a  2.2~3.2質量%のNiと
1-b  0.4~0.8質量%のSiを含有し,
1-c  残部が主として銅からなり,さらにSn,Zn,Ag,Bを含有し,
1-e  引張強さが750~850N/mm2,0.2%耐力が730STDN/mm2,90°曲げ試験結果が圧延方向及びこれと直角な方向において夫々1.0maxR/tであるCu-Ni-Si系合金。
・被告合金2:
2-a  2.2~3.2質量%のNiと
2-b  0.4~0.8質量%のSiを含有し,
2-c  残部が主として銅からなり,さらにZnを含有し,
2-e  引張強さが750~850N/mm2,0.2%耐力が730N/mm2,90°曲げ試験結果が圧延方向に直角な方向において1.5max(厚さ0.3mm以上では2.0max)R/tであるCu-Ni-Si系合金。


・概要
第2 事案の概要
本件は,Cu-Ni-Si系合金に関する特許権を有する原告が,被告に対し,被告の製造,販売する別紙被告製品目録記載1及び2の各製品(以下「被告各製品」といい,それぞれをその番号に従い「被告製品1」のようにいう。)が原告の特許権の特許発明の技術的範囲に属すると主張して,特許法(以下「法」という。)100条に基づき,上記製品の生産,使用,譲渡及び譲渡の申出の差止めを求める事案である。
・・・。

3 当裁判所の判断
1  
争点1(被告各製品の特定とその適法性)について
(1)
争点1(被告各製品の特定とその適法性)について被告各製品は,別紙被告製品目録記載1及び2のとおりであるが,これは,被告各製品を型式番号で特定し,更に構成要件Dを充足するものに限定するというものである。すなわち,原告による被告各製品の特定は,型式番号により特定される被告合金1及び2であるとしつつも,被告合金1及び2のうち構成要件Dを充足しないものがある場合を慮って,差止めの対象について,被告合金1及び2からX線ランダム強度比の極大値が6.5未満のものを除外する趣旨であると理解することができるのであり,被告も,このことを前提に認否反論をしてきたものである。
そうであるから,本件における審理の対象は,明確であって,適法に特定されているというべきである。

(2)
被告は,①原告の特定方法は,本件発明の構成要件Dの記載を引き写したもので,これによる特定は,審理及び差止めの対象を不明確にすること,②製品出荷毎にX線ランダム強度比の極大値を測定することは現実的に不可能であり,原告の特定方法により差止めが認められるとすると過剰な差止めになることなどから,原告による特定は不適法であると主張する。①については,明確であるし,②については,被告各製品の差止めが認められた場合における現実的な不都合性等を指摘するものであって,差止めの必要性の有無に関わるところであり,これについては,後に検討することとする。なお,原告による被告各製品の特定の趣旨を上記のとおりに理解する以上,本件発明の技術的範囲の属否は,被告合金1及び2について検討すべきことになる。そこで,以下,これを前提として判断をする。

2  
争点2(被告各製品が本件発明の技術的範囲に属するか否か)について
(1)
争点2-1(被告各製品が(1)構成要件Cを充足するか否か)について
ア 構成要件Cは,本件発明に係る銅合金の組成につき,構成要件A及びBに続いて,「残部が銅および不可避的不純物からなり,」と規定するものであり,これは,「残部が銅および不可避的不純物のみからなり,」などと規定するのとは異なるから,構成要件Aが規定する「1.04.5質量%のNi」及び構成要件Bが規定する「0.251.5質量%のSi」のほか,銅及び不可避的不純物のみが本件発明に係る銅合金を構成すると,当然に限定して解釈すべきものではない。そして,証拠(甲22939)によれば,本件特許請求の範囲の請求項3は,「Zn,Sn,Fe,TiZrCrAlPMnAgのうち1種類以上を総量で0.0052.0質量%含有する請求項1および2に記載のCu-Ni-Si系合金。」というもので,ZnSn等の物質の含有を予定した記載がされていること,本件明細書の発明の詳細な説明には,「(A)本発明は,上記知見に基づくものであり,1.04.5質量%のNi0.251.5質量%のSiを含有し,残部が銅および不可避的不純物から実質的になり,」(段落【0008】),「[その他の添加物]ZnSnFeTiZrCrAlPMnAgは,Cu-Ni-Si系合金の強度及び耐熱性を改善する作用がある。」(段落【0015】)などとSnZn等の物質の含有を予定した記載がされているほか,実施例で用いられている合金は,0.5質量%のSn及び0.4質量%のZnを含有する合金A0.1質量%のMgを含有する合金Bであること(段落【0023】)が記載されていることが認められる。
そうすると,構成要件Cは,所定量のNiSi,銅及び不可避的不純物以外に,SnZn等の物質の含有を排除するものではないと解するのが相当である。

イ 前記前提事実によれば,被告合金1は,「残部が主として銅からなり,さらにSnZnAgBを含有し,」(構成1-c)との構成を有し,被告合金2は,「残部が主として銅からなり,さらにZnを含有し,」(構成2-c)との構成を有する。そして,証拠(甲674344)によれば,被告合金1に含まれるAg及びBの量は,AgB0.1max質量%と微量であることが認められるところ,被告もこれらが不可避的不純物に当たることを争っていないことを考慮すれば,被告合金1の構成1-c及び被告合金2の構成2-cは,いずれも構成要件Cを充足するものと認められる。
・・・。

5  
争点5(差止めの必要性があるか否か)について
(1)
被告各合金について,X線ランダム強度比の極大値を測定した結果は,別紙「被告各合金のX線ランダム強度比の極大値一覧」のとおりであり,被告合金1について構成要件Dを充足するのは,番号3の甲4のサンプル(質別1/2HT)のみであり,これより後に製造された同じ質別1/2HTの番号4の合金は,構成要件Dを充足せず,質別EHTの番号5の合金や質別HTの番号6の合金も,構成要件Dを充足しない。また,被告合金2について構成要件Dを充足するのは,番号8の甲5のサンプル1のみであり,番号9の甲5のサンプル2やこれより後に製造された番号10ないし12の各合金は,構成要件Dを充足しない。なお,本件特許出願前に製造された被告合金1及び2(番号127)も,構成要件Dを充足しない。

原告は,同一の製造ロットから得られる限り,同一の製造工程を経て製造するものであり,そのX線ランダム強度比の極大値は,誰がどこを測定しても同一であると主張するが,このことを認めるに足りる的確な証拠はないから,同一ロットの製品であっても,測定部位によりX線ランダム強度比の極大値が変動する可能性があることは否定し難く,ましてや質別や製造ロットが異なれば,X線ランダム強度比の極大値が異なると考えられるのであって,上記の測定結果は,まさにそのことを示すものともいえる。

そして,被告は,本件特許出願の前後を通じ,構成要件Dを充足しない被告合金1及び2を製造しているのであり,X線ランダム強度比の極大値を6.5以上10.0以下の範囲に収めることを意図して被告合金1及び2を製造していることを認めるに足りる証拠はないから,被告が,今後,あえて構成要件Dを充足する被告合金1及び2を製造するとは認め難い。もっとも,このことは,偶然等の事情により構成要件Dを充足する被告合金1及び2が製造される可能性があることを否定するものではないが,上記のとおり,本件証拠において,構成要件Dを充足するものが甲4のサンプルと甲5のサンプル1に限られていることからすれば,そのような事態となる蓋然性が高いとは認め難いというべきである。

(2)
また,原告は,本件における差止めの対象を,被告合金1及び2のうち,X線ランダム強度比の極大値が6.5以上のものであると限定するが,同一の製造条件で同一組成のCu-Ni-Si系合金を製造した場合,当然に,X線ランダム強度比の極大値が同一になることまでをも認めるに足りる証拠はなく,かえって,前記のとおり,製造ロットや測定部位の違いによりこれが変動する可能性があることからすると,正確なX線ランダム強度比の極大値については,製造後の合金を測定して判断せざるを得ないことになるが,この場合,どの部位を測定すればよいか,また,ある部位において構成要件Dを充足するX線ランダム強度比の極大値が測定されたとしても,どこまでの部分が構成要件Dを充足することになるのかといった点について,原告は,その基準を何ら明らかにしていない。

そうすると,被告の製品において,たまたま構成要件Dを充足するX線ランダム強度比の極大値が測定されたとして,当該製品全体の製造,販売等を差し止めると,構成要件を充足しない部分まで差し止めてしまうことになるおそれがあるし,逆に,一定箇所において構成要件Dを充足しないX線ランダム強度比の極大値が測定されたとしても,他の部分が構成要件Dを充足しないとは言い切れないのであるから,結局のところ,被告としては,当該製品全体の製造,販売等を中止せざるを得ないことになる。そして,構成要件Dを充足する被告合金1及び2が製造される蓋然性が高いとはいえないにせよ,甲5のサンプル2のように,下限値付近の測定値が出た例もあること(なお,原告は,これが構成要件Dを充足しないことを自認している。)に照らすと,本件で,原告が特定した被告各製品について差止めを認めると,過剰な差止めとなるおそれを内包するものといわざるを得ない。

(3)
さらに,原告が特定した被告各製品を差し止めると,被告が製造した製品毎にX線ランダム強度比の極大値の測定をしなければならないことになるが,これは,被告に多大な負担を強いるものであり,こうした被告の負担は,本件発明の内容や本件における原告による被告各製品の特定方法等に起因するものというべきであるから,被告にこのような負担を負わせることは,衡平を欠くというべきである。

(4)
これらの事情を総合考慮すると,本件において,原告が特定した被告各製品の差止めを認めることはできないというべきである。



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プロフィール

徳重大輔


Author: 徳重大輔

バイオ、医薬、特許関連のブログです。
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SK特許業務法人に勤務しています。明細書作成、特許調査、その他一通りやってます。明細書はバイオ医薬(特に抗体医薬)、調査は無効資料調査が特に得意です。

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