■2019-11-

■<知財高裁/抗PCSK9抗体の侵害訴訟> 競合特許のサポート要件等が認められた事例


<判決紹介>
・平成31年(ネ)第10014号 特許権侵害差止請求控訴事件
・令和元年10月30日判決言渡
・知的財産高等裁判所第1部 高部眞規子 小林康彦 関根澄子
・控訴人:サノフィ株式会社
・被控訴人:アムジエン・インコーポレーテツド
・特許5705288、特許5906333
・発明の名称:プロタンパク質コンベルターゼスブチリシンケクシン9型(PCSK9)に対する抗原結合タンパク質


■コメント
抗PCSK9抗体特許の侵害訴訟の紹介です。
東京地裁で侵害と判断され、知財高裁へ控訴された案件です。
原判決(東京地裁)は先日のブログで紹介しています。

https://biopatentblog.blog.fc2.com/blog-entry-231.html


抗PCSK9抗体を有効成分とする抗体医薬として、被控訴人アムジェンはレパーサ(エボロクマブ)を販売しており、控訴人サノフィはプラルエント(アリロクマブ)を販売しています。

本件は、被控訴人のアムジェンが、プラルエント(アリロクマブ)の生産、販売等が特許5705288、特許5906333の特許権を侵害する旨を主張して、生産等の差止め及び廃棄を求めた事案です。 原判決では、東京地裁は、プラルエントが特許発明の技術的範囲に属し、且つ特許に無効理由はないと判断して、差し止め等を命じました。
サノフィは、原判決を不服として、控訴を提起しました。

2つの対象特許の請求項1は以下の通りです。


●特許5705288(満了:2028/08/22)
【請求項1】(本件訂正発明1-1)
1A   PCSK9とLDLRタンパク質の結合を中和することができ,
1B’   PCSK9との結合に関して,配列番号49のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖と,配列番号23のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖とを含む抗体と競合する,
1C   単離されたモノクローナル抗体。

●特許5906333(満了:2028/08/22)
【請求項1】(本件訂正発明2-1)
2A   PCSK9とLDLRタンパク質の結合を中和することができ,
2B’   PCSK9との結合に関して,配列番号67のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を含む重鎖と,配列番号12のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む軽鎖とを含む抗体と競合する,
2C   単離されたモノクローナル抗体。


争点は、技術的範囲、サポート要件、実施可能要件、進歩性です。

見どころは、知財高裁も、競合特許のサポート要件、実施可能要件を認めるのか、というところです。(なお、同特許の無効審判の審決取消訴訟では、知財高裁は有効と判断しました。)

まず、技術的範囲に関する裁判所の判断は以下の通りです。



●判決--------------------------------------------------------------------------------------
第4 当裁判所の判断
当裁判所も,被告モノクローナル抗体は,本件発明1-1及び2-1の,被告製品は,本件発明1-2及び2-2の技術的範囲に属し,また,本件各特許は特許無効審判により無効にされるべきものとは認められないものと判断する。その理由は,以下のとおりである。
1 本件発明について
・・・

イ 「競合」の意義
本件各特許の特許請求の範囲(請求項1)には,「PCSK9との結合に関して」参照抗体1又は2と「競合する」という記載があり,PCSK9との結合に関して,特定の参照抗体と競合することが記載されているが,「抗体と競合する」ことの意義を規定した記載はない。
そして,本件各明細書には,「同じエピトープに対して競合する抗原結合タンパク質(例えば,中和抗原結合タンパク質又は中和抗体)という文脈において使用される場合の「競合する」という用語は,検査されている抗原結合タンパク質…が共通の抗原(例えば,PCSK9…)への参照抗原結合タンパク質(例えば,リガンド又は参照抗体)の特異的結合を妨げ,又は阻害するアッセイ(例えば,低下させる)によって測定された抗原結合タンパク質間の競合を意味する。…競合アッセイによって同定される抗原結合タンパク質(競合抗原結合タンパク質)には,基準抗原結合タンパク質と同じエピトープに結合する抗原結合タンパク質及び立体的妨害が生じるのに,基準抗原結合タンパク質に結合されるエピトープに十分に近接した隣接エピトープに結合する抗原結合タンパク質が含まれる。」(【0140】),「中和ABPは,PCSK9がLDLRに結合するのを妨げる位置及び/又は様式で,PCSK9に結合する。このようなABPは,「競合的に中和する」ABPと特に記載することができる。」(【0155】),「幾つかの実施形態において,ABPは,本明細書中に論述されている抗体によって結合されるエピトープの何れか1つに結合する。
幾つかの実施形態において,これは,本明細書中に開示されている抗体と他の抗体の間の競合アッセイによって測定することができる。」(【0157】)との記載があるほか,実施例においても,「PCSK9への特異的結合に関して,本明細書中に記載されているエピトープに結合する例示された抗体…と競合する抗原結合タンパク質が提供される。このような抗原結合タンパク質は,本明細書中に例示されている抗原結合タンパク質の1つと同じエピトープ又は重複するエピトープにも結合し得る。」(【0269】)との記載がある。

以上の特許請求の範囲の記載及び本件各明細書の記載事項を総合すると,本件各発明の「抗体と競合する」とは,競合アッセイによって測定された抗原結合タンパク質間の競合をいい,参照抗体がPCSK9に結合するエピトープと同一又は重複するエピトープに結合することや,参照抗体とPCSK9との結合の立体的障害となる隣接エピトープに結合することを意味するものと認められる。
なお,免疫学辞典第2版には,「競合阻止試験」について,「競合阻害試験ともいう。たとえば,あるものが抗原分子と競合して抗体分子の抗原結合部位を取合う型の阻害や,あるものが抗体分子と競合して抗原分子の抗原決定基を取合う型の阻害である」との記載があり,生化学辞典第4版には,「競合阻害」について,「拮抗阻害,競争阻害ともいう。酵素は種々の化合物によってその触媒活性が可逆的に阻害される場合が多い。酵素活性の阻害にはいろいろな形式があるが,阻害剤分子が基質分子と競合して基質結合部位を取合う型の場合が競合阻害である」との記載があり,「競合」は,結合部位を取り合うという意味で用いられている。しかし,前記のとおり,本件各明細書においては,「競合」は,競合アッセイによって測定された抗原結合タンパク質間の競合を意味し,同じ結合部位を取り合う場合に限らず,参照抗体とPCSK9との結合の立体的障害となる隣接エピトープに結合することを含む意味で用いられていることが明らかである。

(2) 本件各発明の構成要件充足性
ア 被告モノクローナル抗体及び被告製品の構成
控訴人は,被告モノクローナル抗体が,「a PCSK9とLDLRタンパク質の結合を阻害し,b PCSK9との結合に関して,配列番号49のアミノ酸配列から成る重鎖可変領域を含む重鎖と,配列番号23のアミノ酸配列から成る軽鎖可変領域を含む軽鎖とを含む抗体と競合し,b’ PCSK9との結合に関して,配列番号67のアミノ酸配列から成る重鎖可変領域を含む重鎖と,配列番号12のアミノ酸配列から成る軽鎖可変領域を含む軽鎖とを含む抗体と競合する,c 単離されたモノクローナル抗体。」であること,また,被告製品が,「a PCSK9とLDLRタンパク質の結合を阻害し,b PCSK9との結合に関して,配列番号49のアミノ酸配列から成る重鎖可変領域を含む重鎖と,配列番号23のアミノ酸配列から成る軽鎖可変領域を含む軽鎖とを含む抗体と競合し,b’ PCSK9との結合に関して,配列番号67のアミノ酸配列から成る重鎖可変領域を含む重鎖と,配列番号12のアミノ酸配列から成る軽鎖可変領域を含む軽鎖とを含む抗体と競合する,c 単離されたモノクローナル抗体 d を含む,医薬組成物。」であることについて,明らかに争わない。
・・・

(3) 控訴人の主張について
ア 控訴人は,本件各発明は,参照抗体1又は2と競合する機能のみによって発明を特定する機能的クレームであり,このような機能的クレームの場合,当該機能ないし作用効果を果たし得る構成全てを技術的範囲に含まれると解すると,明細書に開示された技術思想と異なるものも発明の技術的範囲に含まれ得ることとなり,出願人が発明した範囲を超えて特許権による保護を与える結果となるから,機能的クレームについては,クレームの記載に加え,明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌し,出願人が明細書で開示した具体的な構成に示された技術思想に基づいて当該発明の技術的範囲を確定すべきであり,明細書の記載から当業者が実施し得る範囲に限定解釈すべきであると主張する。そして,本件各明細書の記載から当業者が実施可能な範囲は,本件各明細書記載の実施例である具体的な抗体又は当該抗体に対して特定の位置のアミノ酸の1若しくは数個のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を有する抗体に限られるから,本件各発明の技術的範囲は,上記各抗体又は当該抗体に対して特定の位置のアミノ酸の1若しくは数個のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列に限られ,これらとはアミノ酸配列が異なる被告モノクローナル抗体及び被告製品は,本件各発明の技術的範囲に属しない旨主張する。

本件各発明をいわゆる「機能的クレーム」と呼ぶかはさておき,特許発明の技術的範囲は,特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならず,明細書の記載及び図面を考慮して,そこに開示された技術的思想に基づいて解釈すべきであって,控訴人の主張は,サポート要件又は実施可能要件の問題として検討されるべきものである。本件各明細書に開示された技術的思想は,参照抗体1又は2と競合する単離されたモノクローナル抗体が,PCSK9がLDLRに結合するのを妨げる位置及び/又は様式で,PCSK9に結合し,PCSK9とLDLR間の結合を遮断し(中和),対象中のLDLの量を低下させ,対象中の血清コレステロールの低下をもたらす効果を奏するというものである。そして,被告モノクローナル抗体及び被告製品は,上記技術的思想に基づいて解釈された本件各発明の技術的範囲に属することは,前記のとおりである。
本件各発明は,PCSK9とLDLRタンパク質の結合を中和し,本件各参照抗体と競合する,単離されたモノクローナル抗体を提供するものであり,PCSK9とLDLR間の結合を遮断して「中和」すること(構成要件1A,2A)と,PCSK9との結合に関して参照抗体と「競合」すること(構成要件1B,2B)の双方を構成要件としている。そして,本件各明細書には,本件各発明が,参照抗体1又は2と競合する機能のみによって発明を特定するものであることをうかがわせる記載があるとはいえず,そのことを前提に実施例に限定されるとする控訴人の主張は採用できない。
また,本件各発明は,アミノ酸配列によって特定されるものではないから,本件各明細書記載の具体的な抗体又は当該抗体に対して特定の位置のアミノ酸の1若しくは数個のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を有する抗体に限られると解すべき理由はない。
・・・

(5) 小括
以上によれば,被告モノクローナル抗体は本件発明1-1及び2-1,本件訂正発明1-1及び2-1の技術的範囲に,被告製品は本件発明1-2及び2-2,本件訂正発明1-2及び2-2の技術的範囲に,それぞれ属する。
-------------------------------------------------------------------------------------------



無理に限定解釈しない考え方は賛成です。限定解釈が過ぎると権利範囲が不明確になっていくので。
次に、サポート要件に関する裁判所の判断は以下の通りです。



●判決--------------------------------------------------------------------------------------
3 争点(2)ア(サポート要件違反)について
(1) 本件各明細書には,本件各発明に関し,以下の記載がある(以下の記載中に引用する表8.3,表37.1については別紙を参照)。
・・・

「中和抗体」という用語は,リガンドに結合し,リガンドの生物学的効果を妨げ,又は低下させる抗体を表し,抗PCSK9抗体においては,PCSK9とLDLRの結合を妨げることによる中和と,PCSK9とLDLRの結合は妨げず,LDLRのPCSK9媒介性分解を妨げることによる中和がある(【0138】)。
「競合する」という用語は,検査されている抗体が抗原への参照抗体の特異的結合を妨げ,又は阻害する程度を測定する各種アッセイによって決定された,抗体間の競合を意味するものであり,競合アッセイによって同定される抗体には,参照抗体と同じエピトープに結合する抗体や,参照抗体がエピトープに結合するのを立体的に妨害するのに十分なほど近接した隣接エピトープに結合する抗体が含まれる(【0140】)。
「エピトープ」という用語は,抗体によって結合される抗原の領域であり,抗原がタンパク質の場合,抗体に直接接触する特定のアミノ酸を含む(【0142】)。

イ 配列番号49のアミノ酸配列から成る重鎖可変領域と,配列番号23のアミノ酸配列から成る軽鎖可変領域とを含む抗体(「21B12」)と「競合」する,単離されたモノクローナル抗体,配列番号67のアミノ酸配列から成る重鎖可変領域と,配列番号12のアミノ酸配列から成る軽鎖可変領域とを含む抗体(「31H4」)と「競合」する,単離されたモノクローナル抗体は,いずれも,PCSK9がLDLRに結合するのを妨げる位置及び/又は様式で,PCSK9に結合し,PCSK9とLDLR間の相互作用(結合)を遮断し,又は低下させ,「競合的に中和する」中和抗原結合タンパク質(中和ABP)である(【0138】,【0140】,【0155】,【0269】,表2)。
PCSK9に対する中和ABPは,PCSK9とLDLRとの結合を中和し,LDLRの量を増加させることにより,対象中のLDLの量を低下させ,対象中の血清コレステロールの低下をもたらす効果を奏し,また,この効果により,高コレステロール血症などの上昇したコレステロールレベルが関連する疾患を治療し,又は予防し,疾患のリスクを低減することができるので,治療的に有用であり得る(【0066】,【0155】,【0270】,【0271】,【0276】)。

ウ 表3記載の免疫化プログラムの手順及びスケジュールに従って,ヒト免疫グロブリン遺伝子を含有する二つのグループのマウスにヒトPCSK9抗原を11回注射して免疫化マウスを作製し,PCSK9に対して特異的な抗体を産生するマウス(10匹)を選択した(実施例1,【0312】,【0313】,【0320】,表3)。
これらの選択された免疫化マウスを使用して,PCSK9に対する抗原結合タンパク質を産生するハイブリドーマを作製し(実施例2,【0322】~【0324】),ニュートラビジン被覆したプレートに結合させたV5タグを持たないビオチン化合されたPCSK9を捕捉試料とするELISAによる「一次スクリーニング」によって,合計3104の抗原特異的ハイブリドーマが得られた(実施例3,【0325】~【0328】)。
安定なハイブリドーマが確立されたことを確認するため,「一次スクリーニング」によって得られた上記ハイブリドーマのうち,合計3000の陽性を再スクリーニングし,更に合計2441の陽性を第二のスクリーニング(「確認用スクリーニング」)で反復し,次いで,「マウス交叉反応スクリーニング」によって579の抗体がマウスPCSK9と交叉反応することを確認し(【0329】,【0330】),さらに,LDLRへのPCSK9結合を遮断する抗体をスクリーニングするために,「大規模受容体リガンド遮断スクリーニング」を行い,PCSK9とLDLRウェル間での相互作用を強く遮断する384の抗体が同定され,100の抗体は,PCSK9とLDLRの結合相互作用を90%超阻害した(【0332】)。
同定された384の中和物質(遮断物質)のサブセットに対して,「遮断物質のサブセットに対する受容体リガンド結合アッセイ」を行い,90%を超えて,PCSK9変異体酵素とLDLR間の相互作用を遮断する85の抗体が同定された(【0333】,【0334】)。
これらのアッセイの結果に基づいて同定されたPCSK9との所望の相互作用を有する抗体を産生するいくつかのハイブリドーマ株中に含まれていた参照抗体(21B12,31H4)(【0336】,表2)は,PCSK9とLDLRとの結合を強く遮断する中和抗体である(実施例11,【0138】,【0377】,【0378】)。
エ 表2(PCSK9との所望の相互作用を有する抗体を産生するいくつかのハイブリドーマ株)記載の32の抗体のうち,27B2,13H1,13B5及び3C4は非中和抗体,3B6,9C9及び31A4は弱い中和抗体,その他(参照抗体を含む。)は,強い中和抗体である(【0138】,【0336】)。
これらの32の抗体に対するエピトープビニングの結果によれば,21B12と競合するもの(ビン1)が19個,31H4と競合するもの(ビン3)が7個であり,これらは互いに排他的であり,21B12と31H4のいずれとも競合するもの(ビン2)が1個,21B12と31H4のいずれとも競合しないもの(ビン4)が1個である(実施例10,【0373】,【0494】,表8.3)。

上記実施例10中の組に加えて,これとは別の組(合計39抗体)に実施したエピトープビニングの結果によれば,21B12と競合するが,31H4と競合しないもの(ビン1)が19個,21B12と31H4のいずれとも競合するもの(ビン2)が3個,31H4と競合するが21B12と競合しないもの(ビン3)が10個である。そして,ビン1に含まれる抗体のうち16個は,表2に掲げられた抗体であり,そのうち27B12抗体を除く15個は中和抗体であること,ビン3に含まれる抗体のうち7個は,表2に掲げられた抗体であり,中和抗体であることが確認されている(実施例37,【0138】,【0489】~【0495】,表37.1)。

(2) 上記(1)の認定事実によれば,本件発明1は,PCSK9とLDLRタンパク質の結合を中和し,参照抗体1と競合する,単離されたモノクローナル抗体及びこれを使用した医薬組成物を,本件発明2は,PCSK9とLDLRタンパク質の結合を中和し,参照抗体2と競合する,単離されたモノクローナル抗体及びこれを使用した医薬組成物を,それぞれ提供するものである。そして,本件各発明の課題は,かかる新規の抗体を提供し,これを使用した医薬組成物を作製することをもって,PCSK9とLDLRとの結合を中和し,LDLRの量を増加させることにより,対象中の血清コレステロールの低下をもたらす効果を奏し,高コレステロール血症などの上昇したコレステロールレベルが関連する疾患を治療し,又は予防し,疾患のリスクを低減することにあると理解することができる。

本件各明細書には,本件各明細書の記載に従って作製された免疫化マウスを使用してハイブリドーマを作製し,スクリーニングによってPCSK9に結合する抗体を産生する2441の安定なハイブリドーマが確立され,そのうちの合計39抗体について,エピトープビニングを行い,21B12と競合するが,31H4と競合しないもの(ビン1)が19個含まれ,そのうち15個は,中和抗体であること,また,31H4と競合するが,21B12と競合しないもの(ビン3)が10個含まれ,そのうち7個は,中和抗体であることが,それぞれ確認されたことが開示されている。また,本件各明細書には,21B12と31H4は,PCSK9とLDLRのEGFaドメインとの結合を極めて良好に遮断することも開示されている。
21B12は参照抗体1に含まれ,31H4は参照抗体2に含まれるから,21B12と競合する抗体は参照抗体1と競合する抗体であり,31H4と競合する抗体は参照抗体2と競合する抗体であることが理解できる。そうすると,本件各明細書に接した当業者は,上記エピトープビニングアッセイの結果確認された,15個の本件発明1の具体的抗体,7個の本件発明2の具体的抗体が得られることに加えて,上記2441の安定なハイブリドーマから得られる残りの抗体についても,同様のエピトープビニングアッセイを行えば,参照抗体1又は2と競合する中和抗体を得られ,それが対象中の血清コレステロールの低下をもたらす効果を有すると認識できると認められる。

さらに,本件各明細書には,免疫プログラムの手順及びスケジュールに従った免疫化マウスの作製,免疫化マウスを使用したハイブリドーマの作製,21B12や31H4と競合する,PCSK9-LDLRとの結合を強く遮断する抗体を同定するためのスクリーニング及びエピトープビニングアッセイの方法が記載され,当業者は,これらの記載に基づき,一連の手順を最初から繰り返し行うことによって,本件各明細書に具体的に記載された参照抗体と競合する中和抗体以外にも,参照抗体1又は2と競合する中和抗体を得ることができることを認識できるものと認められる。

以上によれば,当業者は,本件各明細書の記載から,PCSK9とLDLRタンパク質の結合を中和し,参照抗体1又は2と競合する,単離されたモノクローナル抗体を得ることができるため,新規の抗体である本件発明1-1及び2-1のモノクローナル抗体が提供され,これを使用した本件発明1-2及び2-2の医薬組成物によって,高コレステロール血症などの上昇したコレステロールレベルが関連する疾患を治療し,又は予防し,疾患のリスクを低減するとの課題を解決できることを認識できるものと認められる。よって,本件各発明は,いずれもサポート要件に適合するものと認められる。

(3) 控訴人の主張について
控訴人は,本件各発明は,「参照抗体と競合する」というパラメータ要件と,「結合中和することができる」という解決すべき課題(所望の効果)のみによって特定される抗体及びこれを使用した医薬組成物の発明であるところ,競合することのみにより課題を解決できるとはいえないから,サポート要件に適合しない旨主張する。
しかし,本件各明細書の記載から,「結合中和することができる」ことと,「参照抗体と競合する」こととが,課題と解決手段の関係であるということはできないし,参照抗体と競合するとの構成要件が,パラメータ要件であるということもできない。そして,特定の結合特性を有する抗体を同定する過程において,アミノ酸配列が特定されていくことは技術常識であり,特定の結合特性を有する抗体を得るために,その抗体の構造(アミノ酸配列)をあらかじめ特定することが必須であるとは認められない(甲34,35)。
前記のとおり,本件各発明は,PCSK9とLDLRタンパク質の結合を中和し,本件各参照抗体と競合する,単離されたモノクローナル抗体を提供するもので,参照抗体と「競合」する単離されたモノクローナル抗体であること及びPCSK9とLDLR間の相互作用(結合)を遮断(「中和」)することができるものであることを構成要件としているのであるから,控訴人の主張は採用できない。

(4) 本件各訂正発明のサポート要件適合性
なお,本件訂正発明1は,本件発明1の参照抗体1(構成要件1B)を可変領域のアミノ酸配列によってさらに限定した参照抗体1’(構成要件1B’)とするものであり,本件訂正発明2は,本件発明2の参照抗体2(構成要件2B)を可変領域のアミノ酸配列によってさらに限定した参照抗体2’(構成要件2B’)とするものであるから,本件各訂正発明も,いずれもサポート要件に適合するものと認められる。

(5) 小括
以上によれば,本件各発明及び本件各訂正発明は,いずれもサポート要件に適合するというべきである。
-------------------------------------------------------------------------------------------



この論理付けは、機能限定クレームの中間処理のときの参考になりそうですね。
次に、実施可能要件に関する裁判所の判断は以下の通りです。



●判決--------------------------------------------------------------------------------------
4 争点(2)イ(実施可能要件違反)について
(1) 前記3(1)の認定事実によれば,本件各明細書の記載から,本件発明1-1及び2-1の抗体及び本件発明1-2及び2-2の医薬組成物を作製し,使用することができるものと認められるから,本件各明細書の発明の詳細な説明の記載は,当業者が本件各発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるということができる。
したがって,本件各発明は,いずれも,実施可能要件に適合するものと認められる。

(2) 控訴人の主張について
控訴人は,本件各発明は,抗体の構造を特定することなく,機能的にのみ定義されており,極めて広範な抗体を含むところ,当業者が,実施例抗体以外の,構造が特定されていない本件各発明の範囲の全体に含まれる抗体を取得するには,膨大な時間と労力を要し,過度の試行錯誤を要するのであるから,本件各発明は実施可能要件を満たさない旨主張する。

しかし,明細書の発明の詳細な説明の記載について,当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであるとの要件に適合することが求められるのは,明細書の発明の詳細な説明に,当業者が容易にその実施をできる程度に発明の構成等が記載されていない場合には,発明が公開されていないことに帰し,発明者に対して特許法の規定する独占的権利を付与する前提を欠くことになるからである。
本件各発明は,PCSK9とLDLRタンパク質の結合を中和することができ,PCSK9との結合に関して,参照抗体と競合する,単離されたモノクローナル抗体についての技術的思想であり,機能的にのみ定義されているとはいえない。そして,発明の詳細な説明の記載に,PCSK9とLDLRタンパク質の結合を中和することができ,PCSK9との結合に関して,参照抗体1又は2と競合する,単離されたモノクローナル抗体の技術的思想を具体化した抗体を作ることができる程度の記載があれば,当業者は,その実施をすることが可能というべきであり,特許発明の技術的範囲に属し得るあらゆるアミノ酸配列の抗体を全て取得することができることまで記載されている必要はない。
また,本件各発明は,抗原上のどのアミノ酸を認識するかについては特定しない抗体の発明であるから,LDLRが認識するPCSK9上のアミノ酸の大部分を認識する特定の抗体(EGFaミミック)が発明の詳細な説明の記載から実施可能に記載されているかどうかは,実施可能要件とは関係しないというべきである。
そして,前記(1)のとおり,当業者は,本件各明細書の記載に従って,本件各明細書に記載された参照抗体と競合する中和抗体以外にも,本件各特許の特許請求の範囲(請求項1)に含まれる参照抗体と競合する中和抗体を得ることができるのであるから,本件各発明の技術的範囲に含まれる抗体を得るために,当業者に期待し得る程度を超える過度の試行錯誤を要するものとはいえない。
よって,控訴人の主張は採用できない。

(3) 本件各訂正発明の実施可能要件の適合性
なお,前記3(4)のとおり,本件訂正発明1は,本件発明1の参照抗体1(構成要件1B)を可変領域のアミノ酸配列によってさらに限定した参照抗体1’(構成要件1B’)とするものであり,本件訂正発明2は,本件発明2の参照抗体2(構成要件2B)を可変領域のアミノ酸配列によってさらに限定した参照抗体2’(構成要件2B’)とするものであるから,当業者は,本件各明細書の記載から,本件訂正発明1-1及び2-1の抗体及び本件訂正発明1-2及び2-2の医薬組成物を作製し,使用することができるものと認められ,本件各訂正発明も,いずれも実施可能要件に適合するものと認められる。

(4) 小括
以上によれば,本件各発明及び本件各訂正発明は,いずれも実施可能要件に適合するというべきである。
-------------------------------------------------------------------------------------------



「機能的にのみ定義されているとはいえない」のところはもう少し詳しい説明がほしいなと思いました。
次に、進歩性に関する裁判所の判断は以下の通りです。



●判決--------------------------------------------------------------------------------------
5 争点(2)ウ(乙1文献に基づく進歩性欠如)について
(1) 乙1文献の記載事項
・・・

イ 前記アの記載事項を総合すると,本件優先日当時,抗原に対して特異的な結合を有するモノクローナル抗体を作製する方法として,ハイブリドーマを利用する方法(乙15,16)やファージディスプレイ法(乙17~19)があること,ハイブリドーマ法においては,対象とする抗原で免疫された動物から採集した細胞を用いて多数のハイブリドーマを作製し,それらのハイブリドーマの産生する抗体の中からスクリーニングによって,抗原に対する結合能を有する抗体を選択する手段が採用されること,ファージディスプレイ法においても,ヒトや動物から得た抗体遺伝子を元に,抗体遺伝子とライブラリを調製し,スクリーニングによって,抗原に対する結合能を有する抗体を選択する手段が採用されることは,周知の技術事項であったと認められる。

(5) 相違点についての判断
ア 相違点1について
前記のとおり,乙1文献には,「高コレステロール血症の治療として,細胞内におけるPCSK9のプロテアーゼ活性の阻害剤がLDLRのレベルを減少させる能力を阻害するのに十分であろうが,本研究のデータが示唆するとおり,PCSK9とLDLRとの相互作用(結合)を遮断する抗体又は血漿におけるその活性を遮断する阻害剤の開発などのPCSK9の活性を中和する追加の手法も,高コレステロール血症の治療として探求し得ること」の開示があり,この開示事項は,PCSK9とLDLRとの相互作用(結合)を遮断し,PCSK9の活性を中和する抗体は,高コレステロール血症の治療に有用であり得ることを示唆するものといえるから,乙1文献に接した当業者に対し,PCSK9とLDLRとの結合中和抗体を得ることの動機付けとなるものと認められる。
また,前記(4)のとおり,本件優先日当時,ハイブリドーマ法又はファージディスプレイ法により,モノクローナル抗体を作製する一般的な方法は,周知であったことが認められる。
そうすると,乙1発明に周知技術を適用することにより,PCSK9とLDLRタンパク質との結合を中和することができる,何らかの単離されたモノクローナル抗体を得ること自体は,可能であるといえる。

イ 相違点2A及び2Bについて
しかしながら,乙1文献には,PCSK9との結合に関して参照抗体1又は2と競合することの記載や示唆はなく,PCSK9とLDLRの結合を中和する抗体の中から,参照抗体1又は2と競合する抗体を得るための手掛かりとなるような情報は何ら記載されていない。 また,前記(4)イのとおり,周知技術である一般的なモノクローナル抗体の取得手段においては,いずれも,多数の抗体が生じるようにする工程と,それらの多数の抗体の中から,スクリーニングによって抗体を選択する工程とを有し,スクリーニングによって抗体が選択されて初めて特定のモノクローナル抗体が得られるものであると認められるところ,本件優先日前に,参照抗体1又は2が得られていたことを認めるに足りる証拠はなく,競合アッセイによるスクリーニングによって参照抗体1又は2と競合する抗体を選択することができたとはいえない。
したがって,乙1発明及び周知技術に基づいて,当業者が,参照抗体1又は2と競合する抗体を得ることを容易に想到できたと認めることはできない。

ウ 以上によれば,乙1文献に接した当業者は,乙1発明及び周知技術に基づいて,PCSK9とLDLRとの結合を中和することのできる,何らかのモノクローナル抗体(相違点1)を得ることが可能であったとしても,参照抗体1又は2と「競合する」抗体(相違点2A,B)について,容易に想到することができたものと認めることはできない。

エ 控訴人は,①本件各明細書には,参照抗体1又は2と競合するか否かを指標とすることなく,PCSK9-LDLR結合中和抗体を複数作製したところ,そのほとんどが参照抗体1又は2と競合するものであったことが記載されていること,②Aの供述書によれば,PCSK9-LDLR結合中和抗体を取得した場合,その中には参照抗体1又は2と競合する抗体が多く含まれるとされることを根拠に,当業者は,乙1及び本件優先日当時の周知技術に基づき,何らかのPCSK9-LDLR結合中和抗体をいくつか作製するだけで,参照抗体1又は2と競合する結合中和抗体を容易に想到できた旨主張する。

しかし,本件各明細書の表37.1は,確認用スクリーニングによってPCSK9に結合する抗体を産生する2441の安定なハイブリドーマが確立したことを確認し(【0329】),そのうちの一部(合計39抗体)についてエピトープビニングした結果を要約したものであり(【0489】~【0493】),この表を分析しても,PCSK9とLDLRとの結合中和抗体のうち,参照抗体と競合する抗体の割合を導き出すことはできないから,PCSK9-LDLR結合中和抗体のほとんどが参照抗体1又は2と競合するものであったことが記載されているとはいえない。

また,Aの供述書は,PCSK9とLDLRとの結合を中和する抗PCSK9抗体は,「(本件各明細書の)図27Dに図示されるとおり,それらの抗体の結合の態様及びLDLRのPCSK9表面上の結合部位から,PCSK9とLDLRとの結合を中和する抗PCSK9抗体のほとんどが21B12又は31H4のいずれかと競合することは明らかである。」旨を述べたものであって(乙4),PCSK9とLDLRとの結合を中和する抗PCSK9抗体が参照抗体1又は2のいずれかと競合することを述べたにすぎず,PCSK9-LDLR結合中和抗体のほとんどが参照抗体1又は2と競合するということは示されていない。

したがって,控訴人の主張するように,PCSK9-LDLR結合中和抗体を作りさえすれば,本件発明1-1又は2-1に到達するとはいえない。
かえって,乙15の記載によれば,動物免疫法による抗体の作製においては,動物の選択,抗原の投与量及び形態,免疫補助剤(アジュバント)の使用,注射の経路及び回数及び注射の間に置かれる期間を含む(動物に対する)「注射の条件」の違いによって,抗原に対する反応性の異なる抗体が得られることが認められ(前記(4)ア(ア)),このことは,ファージディスプレイ法において,抗体の作製に用いる抗体遺伝子を得るための動物についても同様であると理解することができる。ところが,乙1文献には,動物免疫の具体的な条件を含め,参照抗体と競合する抗体を得るための工程について何ら記載がないのであるから,乙1発明に,モノクローナル抗体の作製に関する一般的な周知技術を適用しても,可変領域に特定のアミノ酸配列を有する抗体である参照抗体1又は2を得ることが容易であるとはいえず,参照抗体1又は2と競合する抗体を得ることができたとはいえない。
よって,控訴人の主張は採用できない。
・・・

6 争点(2)エ(乙27文献に基づく進歩性欠如)について
・・・

8 結語
以上によれば,被控訴人の被告製品及び被告モノクローナル抗体の生産,譲渡,輸入,譲渡の申出の差止請求並びに被告製品の廃棄請求を認め,その余の請求を棄却した原判決は相当であるから,本件控訴を棄却することとして,主文のとおり判決する。
-------------------------------------------------------------------------------------------



ほとんど、とすると証明のハードルが上がりますね。明細書からそう理解できればいいのですが。実際のところはどうなんでしょうか。実験してみてもよさそうですね。

ところで、競合クレームは、エピトープが異なる抗体を技術的範囲に含んでしまうため、権利範囲の外延を評価しにくいところに問題があると思います(前回のブログ参照)。

試しに、エピトープが異なる抗体を含むという点を意識して、サポート要件違反の論理構成を作ってみました。



●================================================
競合抗体は、参照抗体に対して、①エピトープが同じ抗体、②エピトープが重複する抗体、③エピトープが異なる抗体(本件明細書の定義では隣接エピトープを含むとされている)に分けることができる。

①の抗体は、エピトープが同じであるため、比較的効率的に立体障害が生じ、両抗体が競合すると想定される。一方で、③はエピトープが同じではないため、立体的障害が生じるかどうかは、両抗体の抗原への結合部位以外の部分の構造に依存すると考えられる。また、③の抗体が中和作用を奏するかどうかは、「両抗体の抗原への結合部位以外の部分の構造」ではなく、「PCSK9と③の抗体の抗原への結合部位以外の部分の構造」に依存すると考えられるため、競合したとしても中和するとは限らない。

請求項1の抗体は、参照抗体に競合する抗体を包括的に含むものであり、③の抗体を含むが、本件明細書のエピトープビニングの実施例からは、③の抗体が得られたことや、③の抗体がPCSK9とLDLRとの結合を阻害できることは理解できない。また、本件明細書の実施例において競合抗体の一部に中和活性が見られた結果は、特定の実験プロトコル(特定の形態の抗原、特定の免疫動物等)により得られた特定の母集団を対象としたときの結果であり、他の実験プロトコルによって③の抗体を含む母集団が得られた場合にも、競合抗体が中和活性を奏することを本件明細書からは推認できない。
そうすると、当業者は、本件明細書の記載に基づいて、請求項1の抗体のうち、③の抗体であって中和活性を有する抗体を得ることができると認識できない。

以上を考慮すると、請求項1の発明は、課題を解決できると認識できる範囲のものではない。従って、サポート要件を満たさない。
=================================================●



ざっくり書いたので、技術常識を補足する文献や、肉付けは必要ですが、一理ある論理構成になってるかなと思います。



スポンサーサイト



■競合抗体特許は侵害してるかどうかの評価を難しくする!


先日、抗PCSK9抗体特許の侵害訴訟の件で、知財高裁の判決が公開されました。

・平成31年(ネ)第10014号 特許権侵害差止請求控訴事件(PDF)
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/010/089010_hanrei.pdf


東京地裁に引き続き、知財高裁も競合特許の特許性(サポート要件、実施可能要件、進歩性)を認めました。(判決紹介記事を近日アップ予定です。)
原判決(東京地裁)は先日のブログで紹介しています。
https://biopatentblog.blog.fc2.com/blog-entry-231.html


ところで、競合特許のサポート要件、実施可能要件が認められると、侵害予防調査(侵害評価)がちょっと面倒なことになるなと思っています。
以下に仮想事例を考えてみました。


●仮想事例======================================
A社は、独自に受容体Zに対する中和抗体の研究を行った。その結果、抗体Xが受容体Zを中和し、且つ癌治療効果を示した。
侵害予防調査(FTO調査)を行ったところ、抗体のアミノ酸配列やエピトープに特徴のある中和抗体の特許が見つかったが、それらの特許の特徴(アミノ酸配列、エピトープ)を抗体Xは有していなかった。
しかし、以下のようなクレームを有するB社の特許が見つかった。

【請求項1】抗体Yと競合し、且つ受容体Zに対する中和活性を有する、抗受容体Z抗体。

B社の特許の明細書と、A社が調査時点で有する抗体Xの情報を検討しても、抗体XがB社の特許の権利範囲に含まれるかを評価することはできなかった。なぜならば、抗体Yと、抗体Xとの競合試験を行わなければ、競合するかがわからないためである。
そこで、A社はB社の特許の明細書に記載されている抗体のアミノ酸配列をもとに、抗体Yを作製し、抗体Xとの競合試験を行った。
その結果、抗体Xは抗体Yと競合しなかったため、無事に開発を進められることとなった。
===========================================


アミノ酸配列やエピトープなどに特徴のある特許は、自社の抗体を分析するだけで侵害の評価ができたのですが、競合特許の場合は、上記のように、他者の抗体を作製(又は購入)しなければ侵害の評価ができないと思われます。エピトープが競合の有無の参考になると思いますが、エピトープが違っても競合する場合がありますので、確実ではありません。

さらに、自社抗体の競合の程度がわずかな場合は権利範囲内なのか、外なのかの判断がより難しくなります。



PR


プロフィール

徳重大輔


Author: 徳重大輔

バイオ、医薬、特許関連のブログです。
業界動向や知財判決などの情報をアップしていきます。

SK特許業務法人に勤務しています。明細書作成、特許調査、その他一通りやってます。明細書はバイオ医薬(特に抗体医薬)、調査は無効資料調査が特に得意です。

お問い合わせは、
biopatentblog@gmail.com
もしくは、
info@iyakunews.com
へお願いします(@は半角に変換してください)。

QR code

QR

RSSリンク