■ファモチジン事件


<判決紹介>

コメント:
ちょっと古いけど、ファモチジン事件。 結晶特許発明の技術的範囲を検討する上で参考になる事例。 裁判所は、出願経過等を考慮し、技術的範囲に属さないと判断した。☆☆☆☆



平成15(ネ)第3034号 特許権侵害差止請求控訴事件、東京高等裁判所
控訴人: リヒター ゲデオン ジェセティ ジャール アールテー
被控訴人: 日本医薬品工業株式会社、株式会社陽進堂
特許: 特許第2708715
請求項1
その融解吸熱最大がDSC159℃であり,その赤外スペクトルにおける特性吸収帯が35063103及び777cm-1にあり,及びその融点が159162℃であることを特徴とする、再結晶により析出された形態学的に均質なB」型のファモチジン。 (下線は訂正部分)

裁判所の判断:
「第3 当裁判所の判断
 1
 本件発明のファモチジンについて
 (1)
控訴人は,構成要件①ないし③の3パラメータによって特定される範囲内において形態学的組成が一様である再結晶により析出されたB型ファモチジンが,本件発明の「『B』型のファモチジン」であり,A型ファモチジンの混在を排除するものではないと主張し,被控訴人らは,構成要件⑤の「『B』型のファモチジン」との記載部分は,純粋なB型ファモチジン結晶を意味し,A型とB型の混合物を排除する意味を有すると主張するので,検討する。
・・・。

次に,本件特許出願の経過についてみると,本件特許出願に対して,特許庁は,平成8312日付け拒絶理由通知書をもって,特許法292項の規定により特許を受けることができない旨の拒絶理由を通知したが,これに対する控訴人提出の平成8926日付け意見書(乙6-1添付)には,「B型ファモチジンの方がA型より強い生物吸収力を有し,従いましてB型の方が有利な効能を発揮し得ることとなります。このことは,本願発明により純品なB型ファモチジンを得ることではじめて見出されたことであります」(1頁最終段落),「よって,B型ファモチジンを純品で得ることは,薬理効能が優れている化合物が得られるという点で有利であるのみならず,薬剤の製造バッチ間差も回避できるという点で有利な効果をも奏します。このようなことは,ファモチジンの混合物についてしか述べていない引例13記載の発明から当業者が容易に想到し得るものではありません」(2頁下から第2段落)と記載されている。
そうすると,上記の発明の詳細な説明の記載及び出願経過を参酌して解釈すれば,本件明細書の特許請求の範囲【請求項1】の「『B』型のファモチジン」との記載は,ファモチジンには,A型ファモチジン,B型ファモチジン及び両者の混合物が存在することを前提とした上で,特定の結晶形である「『B』型のファモチジン」に限定したものであることが明らかであるから,A型とB型の混合物を排除する意味を有するものというべきである。
・・・。

これらの記載によれば,控訴人は,明りょうでない記載の釈明又は特許請求の範囲の減縮を目的として,「B」型のファモチジンを「再結晶により析出された形態学的に均質な」ものに限定し,本件訂正に係る訂正を請求したものであるところ,甲21審決及び甲24-3審決は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものとして,本件訂正を認めたものであることが認められる。したがって,「形態学的に均質な」の要件を付加する訂正が特許請求の範囲の減縮として認められている以上,本件発明の構成要件⑤のB型ファモチジンが,本件訂正前のA型ファモチジンを含まない純粋なB型ファモチジンの範囲を超えて,控訴人主張のように,その主要部においてB型ファモチジンであり,全体として実質的にB型ファモチジンと同等な組成物であるB型ファモチジン均質体を意味すると解釈する余地はない。
・・・。

しかしながら,そもそも,本件明細書には,控訴人主張のように,A型ファモチジンの混合が約15%まで許容される範囲のB型ファモチジンが形態学的に均質なB型ファモチジンであることを示唆する記載は何ら存在しない。
・・・。

(4)
ところで,本件発明の「『B』型のファモチジン」は,上記(2)のとおり,A型ファモチジンを含まない純粋なB型ファモチジンを意味するものであるとしても,全く純粋な結晶を製造することは極めて困難であり,また,高純度の結晶であっても,通常の測定法では検出できない程度の不純物が混合することが避け難いことは当裁判所に顕著であるから,通常の測定法では検出できない程度の量のA型ファモチジンが混合したB型ファモチジンも,本件発明の「『B』型のファモチジン」に含まれると解する余地がある。そこで,更に検討すると,本件明細書(甲24-2添付)の特許請求の範囲【請求項1】の「その融解吸熱最大がDSC159℃にあり,その赤外スペクトルにおける特性吸収帯が35063103及び777cm-1にあり,及びその融点が159~162℃であることを特徴とする」との記載,及び発明の詳細な説明において,融解吸熱最大について,B型はDSC159℃,A型は167℃であることを明確に区分して記載していること(段落【0002】,【0010】,【0011】,【0016】,【0017】),赤外吸収スペクトルの特性吸収帯について,B型は35063103777cm-1にあり,A型は345016701138611cm-1であることを明確に区分して記載していること(段落【0010】,【0011】,【0016】,【0017】)に照らすと,融解吸熱最大(構成要件①),赤外吸収スペクトル特性(構成要件②)及び融点(構成要件③)について,特許請求の範囲【請求項1】に記載された上記各特性のみが検出され,A型の特性が検出されない限度のA型ファモチジンを含むB型ファモチジンは,本件発明の技術的範囲に含まれるが,A型の特性が検出される程度までA型ファモチジンを含むB型ファモチジンは,本件発明の技術的範囲に属しないと解するのが相当である
・・・。

そうすると,被控訴人ら医薬品が,いずれもA型ファモチジンを含むものであることは,別紙物件目録の記載のとおり,控訴人の自認するところであり,上記事実によれば,被控訴人ら医薬品の原薬であるファモチジンは,融解吸熱最大(構成要件①)について,A型の特性が検出される程度までA型ファモチジンを含むものと認められるから,本件発明の構成要件⑤を上記1(4)のとおり解釈するとしても,これを充足せず,被控訴人ら医薬品は,本件発明の技術的範囲に属しないというべきである。」




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