■並列に記載されていることと、容易に置換可能であることは別次元の問題と判断された事例(イットリウムの使用)


<判決紹介>

コメント:
先行文献に並列に記載されていることと、それらが容易に置換可能であることは別次元の問題と判断された事例。 拒絶審決取消。 ☆


平成25(行ケ)10277号 審決取消請求事件
平成26827日判決言渡、知的財産高等裁判所第2
原告: コンステリウム フランス、コンステリウム ロールド プロダクツ-レイヴンズウッド,エルエルシー
被告: 特許庁長官
出願: 特願2006-540530
請求項1:
管理された窒素の雰囲気下で無フラックスのろう付けによってろう付けされた部材を製造するための,重量パーセントで,少なくとも80%のアルミニウム,ならびに,Si1.0Fe1.0Cu1.0Mn2.0Mg3.0Zn6.0Ti0.3Zr0.3Cr0.3Hf0.6V0.3Ni2.0Co2.0In0.3Sn0.3%,合計0.15%であるその他の元素それぞれ<0.05%,を含む芯材用のアルミニウム合金製の帯材または板材における,0.010.5%のイットリウムの使用。


5 当裁判所の判断
2 取消事由2について
・・・。
(3)
相違点2の容易想到性について
審決は,フラックスレスろう付けの手法として,真空ろう付け法と窒素ガス雰囲気ろう付け法がともに技術常識であることから,相違点2に係る構成は,当業者が容易に想到できるものと判断した。
確かに,本願発明と引用発明とは,いずれも,ろう付けされた部材の製造に使用される,芯材用のアルミニウム合金製の帯材又は板材において,所定量のイットリウムを含有させる点で共通するものである。また,エロージョンは,ろう材が芯材を侵食する現象であり,芯材の中にシリコンが浸透して腐食が起きやすくなるために,ろう付けの際に回避すべきものであるが,エロージョンが起きれば,侵食された芯材部分にろう材が流れ込む結果,ろう付けのための充分なろう材が行き渡らずに所定の付着効果が得られず,ろう付け性が低下するから,エロージョンの抑制には,結果的にはろう付け性を改善するといえる側面もあり,本願発明と引用発明の技術課題に重なり合う部分が存在すること自体は否定し難い。しかしながら,本願発明は,管理された窒素雰囲気でのろう付けによるものであるのに対して,引用発明は,真空雰囲気下でのろう付けによるものであるという相違点があるのであり,相違点2に係る構成が当業者にとって容易に想到し得るものか否かは,結局,刊行物2に記載されたイットリウムの使用が,管理された窒素雰囲気下でのろう付けにも使用できるという示唆があるかどうか,また,本願出願時の技術常識から,それぞれのろう付け法におけるろう材や芯材の相互の互換性があるといえるか否かにより判断されるべきである。
しかるに,刊行物2そのものには,管理された窒素雰囲気下でのろう付けについて,何らの記載も示唆もない。また,芯材用アルミニウム合金にイットリウムを含有させることにより,管理された窒素雰囲気下でのろう付けにおいて,改善されたろう付け性が得られることについて,何らの記載も示唆もない。そして,上記のとおり,本願出願時には,ろう付け法ごとに,それぞれ特定の組成を持ったろう材や芯材が使用されることが既に技術常識となっており,ろう付け法の違いを超えて相互にろう材や芯材を容易に利用できるという技術的知見は認められない。したがって,真空雰囲気下でのろう付け法である引用発明において,芯材用アルミニウム合金にイットリウムを含有させることにより,ろう付けの際に生じるエロージョンを抑制することができるものであるとしても,管理された窒素雰囲気下でのろう付け法において,改善されたろう付け性が得られるかどうかは,試行錯誤なしに当然に導き出せる結論ではない。
したがって,相違点2に係る構成を当業者が容易に想到し得たとはいえず,この点に関する審決の判断は誤りである。

(4)
被告の主張に対する判断
ア 被告は,真空ろう付け法と窒素ガス雰囲気ろう付け法は,いずれもフラックスレスのろう付け法として,当業者において良く知られた技術であり(乙17),また,特開昭62-13259号公報(乙1),特開昭58-163573号公報(乙4),特開昭53-131253号公報(乙5),特開昭63-157000号公報(乙6),特開昭61-7088号公報(乙7)には,これらのろう付け法が並列して記載されていることからすると,これらのろう付け法は,当業者にとって適宜置換可能な方法といえるから,刊行物2に接した当業者であれば,刊行物2に記載された材料からなる芯材用アルミニウム合金製の帯材又は板材を,真空ろう付け法だけでなく,窒素ガス雰囲気ろう付け法にも使用できることを容易に理解すると主張する。
確かに,上記乙157の記載によると,昭和50年代から昭和60年代初めにかけて,ろう付け法の種類に着目することなく,芯材,ろう材や母材にBeBiを添加する方法がろう付け性向上のための技術思想として把握されていたことがうかがわれる(もっとも,乙6の第1表,第2表には,真空雰囲気下ではろう材にMgを必ず含めているのに対し,窒素雰囲気下ではろう材にMgを含ませておらず,特定の芯材やろう材が特定のろう付け法において意識的に使い分けられていたとみる余地もある。)。しかしながら,ろう付け法が並列に記載されていることと,各方法において利用されていた技術が相互に容易に置換可能であることは別次元の問題であって,上記(2)のとおり,その後の本願出願時においては,技術常識として,真空ろう付け法と窒素ガス雰囲気ろう付け法とでは,使用されるアルミニウム合金ブレージングシートは,通常,区別されるものであるとされていたと認められるから,当業者にとって,真空ろう付け法において使用できた芯材を,窒素ガス雰囲気下のろう付け法において,当然に利用できると認識することは困難といえる。
したがって,乙147に,真空ろう付け法と窒素ガス雰囲気ろう付け法が並列して記載されているからといって,これらのろう付け法が,当業者にとって適宜置換可能な方法であることにはならない。
また,被告の提出した乙110のいずれにも,ブレージングシートの芯材にイットリウムを含有させること,それにより窒素ガス雰囲気ろう付けにおいて改良されたろう付け性が得られることについての記載も示唆もないから,窒素ガス雰囲気ろう付け時のブレージングシートにおけるイットリウムの使用を技術常識ということもできないから,これらの書証をもって相違点2に係る構成に容易に想到することができるともいえない。
よって,被告の主張は採用できない。」




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徳重大輔


Author: 徳重大輔

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