■ジェネンテックの延長登録出願に関する知財高裁大合議判決


<判決紹介>

■コメント:
遅ればせながら、知財高裁大合議判決。 クレームに「用法、用量」の記載が無くても、「用法、用量」の一部変更承認に基づいて特許権の延長登録が可能であるという主旨の判断がなされた。 拒絶審決取消。 ☆☆☆☆


■平成25(行ケ)10195-8号 審決取消請求事件
■平成26530日判決言渡、知的財産高等裁判所特別部
■原告: ジェネンテック,インコーポレイテッド
■被告: 特許庁長官
■特許: 特許3398382
■請求項1:
VEGF抗体であるhVEGFアンタゴニストを治療有効量含有する,癌を治療するための組成物。


■第2 前提となる事実
1
特許庁における手続の経緯等
・・・。

(2
) 平成2496日付け手続補正後における延長登録の理由となる処分(以下「本件処分」という場合がある。)の内容及び本件出願の理由は,以下のとおりである(甲23)。
 
ア 延長登録の理由となる処分
 
薬事法149項に規定する医薬品に係る同項の承認
 
イ 処分を特定する番号
 
承認番号 21900AMX00910000
 
ウ 処分の対象となったもの
 
販売名 アバスチン点滴静注用100mg/4mL
 
一般名 ベバシズマブ(遺伝子組換え)
 
(以下,上記販売名及び一般名で特定される医薬品を「本件医薬品」という。)
 
エ 処分の対象となったものについて特定された用途
 
「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌に対する他の抗悪性腫瘍剤との併用における,成人への,ベバシズマブとして17.5mg/kg(体重)での,投与間隔3週間以上の点滴静脈内注射」
 
オ 処分を受けた日
 
平成21918
 
カ 政令で定める処分を受けた物が特許請求の範囲に記載されていること
 
請求項1に記載の抗hVEGF抗体が処分を受けたベバシズマブ(遺伝子組換え)である。

(3
) 本件医薬品については,本件処分に先立って,平成19418日付けで以下の医薬品製造販売承認(以下「本件先行処分」という。)がされている。本件処分は,本件先行処分の製造販売承認事項一部変更承認であり,主な変更事項は,「用法及び用量」に新たな用法・用量を追加した点にある。(甲13ないし16
 
ア 処分の根拠
 
薬事法141
 
イ 承認番号
  21900AMX00910000

 
ウ 効能又は効果
 
「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」
 
エ 用法及び用量
 
他の抗悪性腫瘍剤との併用において,通常,成人には,ベバシズマブとして15mg/kg(体重)又は10mg/kg(体重)を点滴静脈内投与する。投与間隔は2週間以上とする。

・・・。

4 当裁判所の判断
 
当裁判所は,審決には,以下のとおりの誤りがあると判断する。
・・・。
1
特許法67条の311号該当性判断の誤り(取消事由1)について
・・・。

(4
) 特許法67条の311号所定の要件充足性の判断について
 
前記のとおり,特許法67条の311号は,特許権の存続期間の延長登録出願を拒絶する要件として,「その特許発明の実施に・・・政令で定める処分を受けることが必要であつたとは認められないとき。」と規定している。この要件のうち,前記①の「政令で定める処分を受けたことによっては,禁止が解除されたとはいえないこと」との第1要件の有無を判断するに当たっては,医薬品の審査事項である「名称,成分,分量,用法,用量,効能,効果,副作用その他の品質,有効性及び安全性に関する事項」の各要素を形式的に適用して判断するのではなく,存続期間の延長登録制度を設けた特許法の趣旨に照らして実質的に判断することが必要である。
 
上記の観点から,医薬品の成分を対象とする特許(製法特許,プロダクトバイプロセスクレームに係る特許等を除く。以下同じ。)について検討すると,品目を構成する要素のうち,「名称」は医薬品としての客観的な同一性を左右するものではないから,禁止が解除されたかどうかの判断要素とは解されない。また,「副作用その他の品質」,「有効性及び安全性に関する事項」は,通常,医薬品としての実質的な同一性に直接関わる事項とはいえないから,禁止が解除されたかどうかの判断要素とするまでの必要はないと解される。
 
以上によると,医薬品の成分を対象とする特許については,薬事法141項又は9項に基づく承認を受けることによって禁止が解除される「特許発明の実施」の範囲は,上記審査事項のうち「名称」,「副作用その他の品質」や「有効性及び安全性に関する事項」を除いた事項(成分,分量,用法,用量,効能,効果)によって特定される医薬品の製造販売等の行為であると解するのが相当である。

(5
) 本件事案について
 
本件特許発明は,医薬品の成分を対象とする発明であるが,その医薬品に関連する製造販売等の行為について本件先行処分がされている。そこで,本件先行処分により禁止が解除されたと判断される範囲と本件処分により禁止が解除されたと判断される範囲との関係について,上記(4)の観点を踏まえて検討する。
 
前記のとおり,本件先行処分は,薬事法141項に基づいて,平成19418日付けでされた,販売名を「アバスチン点滴静注用100mg/4mL」,有効成分を「ベバシズマブ(遺伝子組換え)」,効能又は効果を「治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」,用法及び用量を「他の抗悪性腫瘍剤との併用において,通常,成人には,ベバシズマブとして15mg/kg(体重)又は10mg/kg(体重)を点滴静脈内投与する。投与間隔は2週間以上とする。」とする医薬品の製造販売承認である。そして,同処分に基づいて延長期間を423日とする特許権の存続期間の延長登録がされた(甲1314,乙1)。本件処分は,本件先行処分において承認された用法及び用量に,「他の抗悪性腫瘍剤との併用において,通常,成人にはベバシズマブとして17.5mg/kg(体重)を点滴静脈内注射する。投与間隔は3週間以上とする。」を追加することを主な変更内容とする,同条9項に基づく,医薬品製造販売承認事項一部変更承認である。
 
本件先行処分では,「他の抗悪性腫瘍剤との併用において,通常,成人にはベバシズマブとして17.5mg/kg(体重)を点滴静脈内注射する。投与間隔は3週間以上とする。」との用法・用量によって特定される使用方法による本件医薬品の使用行為,及び上記使用方法で使用されることを前提とした本件医薬品の製造販売等の行為の禁止は解除されておらず,本件処分によってこれが解除されたのであるから,本件処分については,延長登録出願を拒絶するための前記の選択的要件のうち,「政令で定める処分を受けたことによっては,禁止が解除されたとはいえないこと」との要件(前記第1要件)を充足していないことは,明らかである。
 
また,本件処分により禁止が解除された,上記用法・用量によって特定される使用方法による本件医薬品の使用行為,及び上記使用方法で使用されることを前提とした本件医薬品の製造販売等の行為が本件特許発明の実施行為に該当することは,当事者間に争いはなく,本件処分については,延長登録出願を拒絶するための前記の選択的要件のうち,「『政令で定める処分を受けたことによって禁止が解除された行為』が『その特許発明の実施に該当する行為』には含まれないこと」との要件(前記第2要件)を充足していないことも,明らかである。
  
以上のとおりであり,本件においては,「本件処分を受けたことによって本件特許発明の実施行為の禁止が解除されたとはいえない」とはいえず,特許法67条の311号の定める,拒絶要件があるとはいえない。

・・・。

2
特許法68条の2に基づく延長された特許権の効力の及ぶ範囲について
  
本件出願が特許法67条の311号に該当するとした審決の判断には誤りがあり,その余の点を判断するまでもなく,審決は違法であることになる。また,同法68条の2に基づく延長された特許権の効力の及ぶ範囲については,本来,特許権侵害訴訟において判断されるべき論点であるが,念のため,以下のとおり検討を加える。
・・・。

(
) 以上のとおり,特許権の延長登録制度及び特許権侵害訴訟の趣旨に照らすならば,医薬品の成分を対象とする特許発明の場合,特許法68条の2によって存続期間が延長された特許権は,「物」に係るものとして,「成分(有効成分に限らない。)」によって特定され,かつ,「用途」に係るものとして,「効能,効果」及び「用法,用量」によって特定された当該特許発明の実施の範囲で,効力が及ぶものと解するのが相当である(もとより,その均等物や実質的に同一と評価される物が含まれることは,延長登録制度の立法趣旨に照らして,当然であるといえる。)。

  
エ 上記のように解した場合,政令で定める処分を受けることによって禁止が解除される特許発明の実施の範囲と,特許権の存続期間が延長された場合の当該特許権の効力が及ぶ特許発明の実施の範囲とは,常に一致するわけではない。しかし,先行処分を理由として存続期間が延長された特許権の効力がどの範囲まで及ぶかという点は,特許発明の実施に政令で定める処分を受けることが必要であったか否かとの点と,直接的に関係するものでない以上,それぞれの範囲が一致しないことに,不合理な点はないというべきである。なお,政令で定める処分を受けることによって禁止が解除された特許発明の実施が,先行処分に基づき存続期間が延長された当該特許権の効力が及ぶ特許発明の実施の範囲に含まれるような場合は,重複して延長の効果が生じ得ることとなる。後行処分による延長期間が先行処分による延長期間より長い場合には,これに対応する期間,当該特許権の存続期間が延長されるが,当該期間については,当該特許発明の実施が禁止されていた部分があることに照らすと,上記のように解することに何ら不合理な点はない。



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徳重大輔


Author: 徳重大輔

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