■クレームの「測定」を狭く解釈した上で、被告方法は技術的範囲に含まれないと判断した事例


<判決紹介>
・平成29()28884  特許権侵害差止等請求事件
・平成301128日判決言渡
・東京地方裁判所民事第29部 山田真紀 伊藤清隆 西山芳樹
・原告:ベー・エル・アー・ハー・エム・エス・ゲーエムベーハー
・被告:ラジオメーター株式会社
・特許5215250
・発明の名称:敗血症及び敗血症様全身性感染の検出のための方法及び物質


コメント
敗血症の検出方法に関する特許の侵害訴訟をご紹介します。
本件特許の請求項1は以下の通りです。

「【請求項1】 患者の血清中でプロカルシトニン3-116を測定することを含む,敗血症及び敗血症様全身性感染を検出するための方法。」


請求項1には「プロカルシトニン3-116を測定すること」との記載があります。
一方で、被告の方法は、「全血及び血漿検体中のプロカルシトニン3-116とプロカルシトニン1-116が区別されることなく測定」されています。

この場合の被告方法が、請求項1の技術的範囲に含まれるかが争点になりました。

裁判所は、請求項1の「測定」を狭く解釈した上で、被告方法は技術的範囲に含まれない、と判断しました。

裁判所の判断は以下の通りです。


判決----------------------------------------------------------------------------------------
4 当裁判所の判断
本件発明について
・・・
  本件発明の概要
前記第22⑵イ認定の本件特許の特許請求の範囲,前記⑴認定の本件明細書の発明の詳細な説明及び図面に照らせば,本件発明の概要は次のとおりであると認められる。
 
  本件発明は,敗血症等において,プロカルシトニン又はその部分ペプチドの発生に関係する診断及び治療の可能性に関する(【0001】)。
  従来技術として,敗血症の危険を有する患者及び敗血症の典型的な症候が見られる患者の血清又は血漿中のプロカルシトニン及びそこから得られる部分ペプチドの測定が,早期検出にとって有益な診断手段であることが知られていたが,敗血症のケースで形成されるプロカルシトニンが甲状腺のC細胞において形成されるプロカルシトニン1-116と異なるかどうかは明らかでなかった(【0002】,【0006】,【0008】)。
  本件発明は,敗血症等の患者の血清中に比較的高濃度で検出可能なプロカルシトニンが,プロカルシトニン1-116ではなく,プロカルシトニン3-116であることが実験的に確認されたことを踏まえ,そこから導かれる新規な敗血症等の検出方法を提供することを目的とするものである(【0001】,【0009】,【0010】)。

争点1(被告方法は本件発明の技術的範囲に属するか)について     「プロカルシトニン3-116を測定すること」の意義
  構成要件Aは「患者の血清中でプロカルシトニン3-116を測定することを含む」というものであるところ,一般に,「測定」に,長さ,重さ,速さといった種々の量を器具や装置を用いてはかるという字義があることからすると,「プロカルシトニン3-116を測定すること」は,プロカルシトニン3-116の濃度等の量を明らかにすることを意味すると解するのが文言上自然である。
また,前記1⑵認定のとおり,本件発明は,敗血症等の患者の血清中に比較的高濃度で検出可能なプロカルシトニンがプロカルシトニン1-116ではなく,プロカルシトニン3-116であることが確認されたことを踏まえて新規な敗血症等の検出方法を提供することを目的とするものであり,このような本件発明の目的に照らせば,本件発明は,患者の血清中においてプロカルシトニン3-116が比較的高濃度で検出されるか否かを見ることを可能とすることが求められているということができる。
以上から,構成要件Aの「プロカルシトニン3-116を測定すること」は,プロカルシトニン3-116の濃度等の量を明らかにすることを意味すると解するのが相当である。

  この点につき,原告は,「プロカルシトニン3-116を測定すること」は,プロカルシトニン3-116を敗血症等の検出に必要な精度で測定ないし検出することができれば,プロカルシトニン3-116だけを特異的,選択的に測定することに限られず,プロカルシトニン3-116とプロカルシトニン1-116及びその他のプロカルシトニン由来の部分ペプチドとを区別することなく測定することも含むと主張しており,その意味するところは明確でないが,血清中のプロカルシトニン3-116を検出しさえすれば足りるものである旨の主張であるとすれば,それはプロカルシトニン3-116の存在を明らかにすることで足り,その量を明らかにすることは必要ではないことをいうものであって,前記アでみた「測定」の文言の解釈に反するものであり,採用することができない。
また,血清中のプロカルシトニン3-116とプロカルシトニン1-116等とを区別することなく測定することがプロカルシトニン3-116を測定することに該当すると主張するものであると解しても,そのような測定方法では,血清中にプロカルシトニン3-116が存在するかも明らかにならず,もとより,血清中のプロカルシトニン3-116の量も確認できないから,これを「プロカルシトニン3-116を測定すること」に該当するというのは文言上困難である。

  被告方法
前記第22⑸ア認定のとおり,被告装置及び被告キットを使用すると,患者の検体中において,プロカルシトニン3-116とプロカルシトニン1-116とを区別することなく,いずれをも含み得るプロカルシトニンの濃度を測定することができ,その測定結果に基づき敗血症の鑑別診断等が行われていると認められるものの,本件全証拠によっても,被告装置及び被告キットを使用して敗血症等を検出する過程で,プロカルシトニン3-116の量が明らかにされているとは認められず,更にいえば,プロカルシトニン3-116の存在自体も明らかになっているとはいえない。
したがって,被告方法は,構成要件Aの「プロカルシトニン3-116を測定する」を充足するとはいえない。

  小括
よって,被告方法は,本件発明の技術的範囲に属するとはいえない。

結論
以上によれば,その余の争点について判断するまでもなく,原告の請求はいずれも理由がないから,これらを棄却することとして,主文のとおり判決する。
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