■設計的事項に阻害事由は認められない/冷却システム/平成21年(行ケ)第10273号審決取消請求事件


平成22年4月27日判決言渡
原告: 古河電気工業株式会社
被告: 鴻海精密工業股份有限公司
特許: 特許第2995176号
請求項1: バーリング加工孔を複数個設けたフィンからなるフィン群と,上記フィン群のバーリング加工孔を貫通してプレス挿入された複数の実棒と,上記実棒の少なくとも一方の端部にプレス挿入した受熱プレートからなるヒートシンクを有する冷却システム。

コメント: 阻害事由の主張が認められなかった事例。無効審決維持。☆
「必須の要件だからこの構成を変えることには阻害事由がある」という主張をすると、「コスト等の関係で決められる設計的事項にすぎず、阻害事由は認められない」と判断される場合がある。

裁判所:

「ア  甲2の記載について甲2は,フィンと,そこに差し込まれたヒートパイプから構成されるヒートシンクに係る発明(請求項の数4)が記載されているが,いずれの請求項にも,フィンとヒートパイプを,溶接法,鑞接合,半田接合などで接合することの記載はない。そして,次のとおりの記載がある。

「【0009】フィンとヒートパイプの取り付け方法は,特に限定はないが,フィンにバーリング加工等によって孔を設け,その孔にヒートパイプを差し込む形態が実用的である。もちろんヒートパイプとフィンとの熱抵抗は小さいことが望ましいので,コスト面で許されれば,単に差し込むだけでなく,例えば溶接法を併用して,より熱抵抗を小さくさせることは有効である。溶接法の他,ろう接合,半田接合等もある。またフィンの取り付け強度を高める意味でヒートパイプの差し込み部を接着剤等で接着しても構わない。」

上記の甲2の記載によれば,フィンと,そこに差し込まれたヒートパイプから成るヒートシンクにおいて,フィンにバーリング加工等によって設けられた孔にヒートパイプを差し込んだ上,コスト面で許されれば,熱抵抗を小さくするために鑞接合をすることもあるが,コスト面で許されない場合は,フィンの孔にヒートパイプを差し込んだ状態で,フィンとヒートパイプの取り付けが完了することが認められる。そして,フィンにヒートパイプを差し込んで鑞接合するという上記の製造工程は,鑞材を塗布した放熱金属平板を加工してピンフィンと組み立て,熱処理して鑞付けする工程,すなわち引用発明の,放熱金属平板にピンフィンを嵌合して接合するという製造工程を,その一態様として含むものと認められる。そうすると,引用発明において,鑞接合を省略し,放熱金属平板への鑞材の塗布と熱処理を行わずに,フィンのバーリング壁に実棒の位置が固定されている状態,すなわち本件発明1の「プレス挿入された」状態とし,相違点1に係る本件発明1の構成(実棒がフィン群に「プレス挿入された」ものであること)を実現することは,容易に想到することができたものと認められる。

したがって,審決が,引用発明において,コスト面を考慮して,鑞材塗布と鑞付けによる接合を省略すること,すなわち相違点1を解消することは,甲1,2の記載から当業者が容易に想到することができたとした判断に誤りはない。

  原告の主張に対し

 

 

(ウ)原告は,引用発明は,鑞材塗布と鑞付けによる接合が必須の要件であるから,このことは,鑞材塗布と鑞付けによる接合を省略することに対し,阻害事由となると主張する。

しかし,前記1(1)イ(イ)のとおり,甲1の特許請求の範囲の請求項2と実施例には,嵌合されて接合されたヒートシンクが記載されているものの,甲1の記載により,嵌合された後で接合される前の状態は明確に認めることができる。そして,甲2の【0009】の記載によれば,鑞付け等による接合の有無は,コストと熱抵抗との関係で決められる設計的事項にすぎないものと認められるから,引用発明は,鑞材塗布と鑞付けによる接合を省略することに対し,阻害事由とはならないものと認められ,原告の上記主張は,採用することができない。」



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平成22年4月27日判決言渡
平成21年(行ケ)第10273号審決取消請求事件
平成22年3月11日口頭弁論終結
判決
原告古河電気工業株式会社
訴訟代理人弁理士松下亮
同水野浩司
被告鴻海精密工業股份有限公司
(審決上の表示鴻海精密工業股▲フン▼有限公司)
訴訟代理人弁理士志賀正武
同渡邊隆
同村山靖彦
訴訟復代理人弁理士増本要子
同黒田晋平

◆主文
  原告の請求を棄却する。
  訴訟費用は原告の負担とする。


事実及び理由
◆第1  請求特許庁が無効2008-800275号事件について平成21年8月4日にした審決を取り消す。

◆第2  争いのない事実

▼1  特許庁における手続の経緯
ダイヤモンド電機株式会社は,平成10年5月28日,発明の名称を「冷却システム」とする発明について特許出願をし(特願平成10-166296号),平成11年10月22日,設定登録を受けた(特許第2995176号。以下,

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この特許,特許権を「本件特許」,「本件特許権」といい,その設定登録時の明細書を図面とともに「本件明細書」という。設定登録時の請求項の数は3であった。甲10)。
ダイヤモンド電機株式会社は,原告に対して本件特許権を譲渡し,平成13年12月14日,その旨の移転登録がされた(甲12)。
被告は,平成20年12月5日,本件特許について無効審判を請求した(無効2008-800275号事件。甲11)。これに対し,原告は,平成21年2月20日,答弁書とともに訂正請求書を提出し,特許請求の範囲の請求項1,2の訂正を請求したが(以下「本件訂正」という。),特許庁は,同年3月3日,訂正拒絶理由通知をした。そこで,原告は,平成21年4月3日,意見書とともに,訂正請求書を補正する旨の補正書を提出した(以下「本件補正」という。)。
特許庁は,平成21年8月4日,「特許第2995176号の請求項1~3に係る発明についての特許を無効とする。」との審決をし,その謄本は,同月14日,原告に送達された。

▼2  特許請求の範囲
本件明細書の特許請求の範囲の請求項の記載は,次のとおりである。
(1)  請求項1バーリング加工孔を複数個設けたフィンからなるフィン群と,上記フィン群のバーリング加工孔を貫通してプレス挿入された複数の実棒と,上記実棒の少なくとも一方の端部にプレス挿入した受熱プレートからなるヒートシンクを有する冷却システム。(以下「本件発明1」という。)
(2)  請求項2バーリング加工孔を複数個設けたフィンからなるフィン群と,上記フィン群のバーリング加工孔を貫通してプレス挿入された複数の実棒をアッセンブリした後,上記実棒の少なくとも一方の端部に受熱プレートをプレス挿入する加工方法のヒートシンクを用いた冷却システム。(以下「本件発明2」とい

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う。)
(3)  請求項3受熱プレートの一部にヒートパイプを接合した請求項1に記載の冷却システム。(以下「本件発明3」といい,本件発明1ないし3を包括して「本件発明」という。)

▼3  審決の理由
(1)  別紙審決書写しのとおりである。要するに,本件補正,本件訂正はいずれも認容できないとした上で,本件発明1,2は,いずれも下記の甲1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり,本件発明3は,甲1ないし3に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,同法123条1項2号に該当し,無効であるとするものである。
記甲1    特開平10-32288号公報甲2    特開平10-107192号公報甲3    特開平9-186275号公報
(2)  審決が,本件発明に進歩性がないとの結論を導く過程において認定した甲1記載の引用発明,本件発明1と引用発明の一致点,相違点は,次のとおりである。
  引用発明金属基板の片面に複数のピンフィンを備えたヒートシンクにおいて,金属基板のピンフィンが設けられた面と対面し,かつその面と平行でピンフィンが貫通した1枚以上の放熱金属平板を備え,放熱金属平板は金属基板と所定の間隔をおいて設けられており,放熱金属平板に設けた円筒状の側壁を有する貫通孔にピンフィンが嵌合されて接合されていることを特徴と

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する放熱性能に優れたヒートシンク。
  本件発明1と引用発明の一致点「バーリング加工孔を複数個設けたフィンからなるフィン群と,上記フィン群のバーリング加工孔を貫通して挿入された複数の実棒と,受熱プレートからなるヒートシンクを有する冷却システム。」である点。
  本件発明1と引用発明の相違点
(ア)  相違点1本件発明1では,実棒がフィン群に「プレス挿入された」ものであるのに対し,引用発明では,ピンフィンが放熱金属平板に「嵌合されて接合された」ものである点。
(イ)  相違点2本件発明1では,受熱プレートが「実棒の少なくとも一方の端部にプレス挿入した」ものであるのに対し,引用発明では,金属基板が「片面に複数のピンフィンを備えた」ものである点。

◆第3  取消事由に関する原告の主張審決は,相違点1に関する容易想到性の判断の前提として行った本件発明1及び引用発明の認定の誤り(取消事由1),相違点1に関する容易想到性の判断の誤り(取消事由2)があるから,違法として取り消されるべきである。

▼1  本件発明1及び引用発明の認定の誤り(取消事由1)
審決は,本件発明1における「プレス挿入された」とは,フィンのバーリング壁に実棒の位置が固定されている状態を意味すると認定し,他方,引用発明において「嵌合されて」とは,鑞材を塗布した放熱金属平板を加工してピンフィンと組み立てた状態を意味すると認定し,これらの認定を前提として,引用発明における「嵌合されて」と本件発明1における「プレス挿入された」とは実質的に同意になるとした上で,相違点1に関する容易想到性を判断した。しかし,審決による本件発明1及び引用発明の上記認定には誤りがある。その理

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由は,以下のとおりである。
(1)  本件発明1の「プレス挿入された」の意味について甲1,2には,実棒(ヒートパイプ)と放熱金属平板(フィン)のバーリング孔を固定する際に鑞付けや金属接合等を行うことが記載されており,本件特許出願時には,鑞付けや金属接合等を行うことは技術常識であった。しかし,本件明細書には,鑞付けや金属接合等を行うことを窺わせるような記載や示唆はなく,むしろ,本件明細書の【0009】や【0032】には,「殆どプレス工法のみで組立可能なヒートシンクが構築できる」ことが記載されている。そのため,本件発明1の「プレス挿入された」とは,単に実棒の位置が固定されている状態をいうものではなく,実棒とフィン群を「ロウ付けや溶接をせずに」,実棒の位置が固定された状態をいう。そうすると,本件発明1の「プレス挿入された」とは,単にフィンのバーリング壁に実棒の位置が固定されている状態を意味するとした審決の認定は誤りである。
(2)  引用発明の認定について甲1に記載された引用発明は,甲1の【0019】に記載されているように,通風抵抗が小さく,かつ放熱性能に優れたピンフィン型ヒートシンクを提供することを目的としている。そして,甲1の請求項1には,「・・・ピンフィンの貫通部においてピンフィン周面と放熱金属平板とが接合されている・・・」と記載されており,甲1の【0032】には,「ピンフィンから放熱金属平板への熱伝導をよくする必要があり,両者は鑞付け等により接合されていなければならない」と記載されており,放熱性能に優れたヒートシンクを構築するとの課題解決のために鑞付け等をすることが必須であると記載されている。また,甲1の【0036】には,中実状の部材であるピンフィン2と放熱金属平板3との接合部の接触熱抵抗の低減が,引用発明の放熱フィンの性能向上には必要不可欠であることが指摘されており,そのため,両者は金属接合により一体化しておくのが望ましいが,工業的な生産性も考慮

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して,鑞付けすることが記載されている。このように,引用発明の「接合」は,熱処理して鑞付けされた状態(なお,熱処理により金属接合された状態も「接合」に含まれる。)を意味し,これは,甲1記載の引用発明の課題を解決するための必須の要件である。
さらに,引用発明の内容は,その課題を考慮するならば,「ピンフィンと放熱金属平板が鑞付けされ接合された」という製造工程における最終形態に基づいて認定されるべきであり,その前段階の「ピンフィンに鑞材が塗布されて放熱金属平板の孔に嵌合された」という製造工程における中間形態(製品化前の状態)によって認定されるべきではない。
そうすると,引用発明は,ピンフィンと放熱金属平板の貫通孔が嵌合されて接合されたものと認定すべきであり,「嵌合されて接合された」との構成から,「接合された」との構成を除いて,鑞材を塗布した放熱金属平板を加工してピンフィンと組み立てた状態,すなわち嵌合された状態とした審決の認定は誤りである。
なお,仮に,甲1に記載された引用発明を,製造工程における中間形態である嵌合されたものとして把握するとしても,そこにいう「嵌合されて」とは,「鑞材を塗布した放熱金属平板を加工してピンフィンと組み立てた状態」を意味するから,鑞材の有無の点で本件発明1の「プレス挿入された」とは異なる。

▼2  相違点1に関する容易想到性の判断の誤り(取消事由2)
審決は,甲2に,「ヒートパイプを使ったヒートシンクについて,フィンにバーリング加工等によって孔を設け,その孔にヒートパイプを差し込む形態が実用的であることに加え,コスト面で許されれば,熱抵抗を小さくするため,鑞接合する」旨が記載されていることから,「引用発明において,コスト面を考慮して,鑞材塗布と鑞付けによる接合を省略すること,すなわち相違点1を解消することは,甲1,2の記載から当業者が容易に想到することができた」と判

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断した。しかし,審決の上記判断には誤りがある。その理由は,以下のとおりである。
甲2の【0009】には,コスト面で許されれば,熱抵抗を小さくするため鑞接合することを推奨する旨記載されているから,この記載からすると,鑞接合しない状態では,パイプをフィンに差し込んだのみで,熱抵抗が大きい状態であり,本件発明1のようなプレス挿入した状態とは異なる。そのため,甲2の【0009】の記載に基づいて,金属接合や鑞付け等を排除して引用発明が認定されることはない。
また,仮に,甲2の【0009】の記載に基づいて,金属接合や鑞付け等を排除した状態における引用発明を認定したとしても,それは,嵌合された状態にとどまり,本件発明1のプレス挿入された状態とは異なる。
引用発明は,鑞材塗布と鑞付けによる接合が必須の要件であるから,このことは,鑞材塗布と鑞付けによる接合を省略することに対し,阻害事由となる。
甲2記載の発明においてフィンに形成された孔に挿入されるのは,実棒ではなくパイプであり,パイプは,変形の度合いが大きいから,単にフィンに形成されたバーリング加工孔に差し込むだけでも,熱抵抗の低減を図ることができる。これに対し,実棒は,パイプと比較すると剛性が高く撓みにくいため,各フィンのバーリング加工孔に位置ずれがあると,径方向への変形が困難であり,バーリング孔との空隙が生じやすくなり,空隙が生じると熱抵抗が高くなるため,接合することが必要とされた。そのため,甲2において,パイプについて接合が不要であるとしても,そのことから直ちに,実棒についても接合が不要であるということはできず,フィンのバーリング加工孔に実棒をプレス挿入するという本件発明1の構成を着想することは困難であった。

◆第4  被告の反論審決の認定,判断に誤りはなく,原告主張の取消事由は,いずれも理由がない。


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  本件発明1及び引用発明の認定の誤り(取消事由1)に対し審決は,本件発明1における「プレス挿入された」とは,フィンのバーリング壁に実棒の位置が固定されている状態を意味すると認定し,他方,引用発明において「嵌合されて」とは,鑞材を塗布した放熱金属平板を加工してピンフィンと組み立てた状態を意味すると認定し,これらの認定を前提として,引用発明における「嵌合されて」と本件発明1における「プレス挿入された」とは実質的に同意になるとした上で,相違点1に関する容易想到性を判断したものであり,審決による本件発明1及び引用発明の上記認定に誤りはない。その理由は,以下のとおりである。
(1)  本件発明1の「プレス挿入された」の意味について本件発明1は,実棒がフィンにプレス挿入されたヒートシンクを有する発明であるから,実棒とフィンは何らかの状態で固定される必要がある。本件発明1は,「プレス挿入された実棒」との記載により,「プレス挿入された」という製法によって限定されているが,本件明細書の【0013】の記載によれば,同限定は,「フィンのバーリング壁に実棒の位置が固定された状態」を特定したものと解される。そして,「プレス」とは,一般的に「押すこと。
押し付けること。」との意味であり,「プレス加工」とは,「金型の間に工作材料を置き,てこ・ねじ・水圧などを用いて強圧成型する加工技術。」との意味であることからしても,「プレス挿入された」との文言からは,「ロウ付けや溶接をせずに」という条件を導き出すことはできない。製造方法によって生産物を特定しようとする記載がある場合は,その記載は最終的に得られた生産物自体を意味していると解されるから,その点からしても審決の解釈に誤りはない。
また,ヒートシンクを製作する技術分野において,鑞付けや金属接合等を必要に応じて採用することは,当業者にとって周知慣用技術であるから,本件明細書に鑞付けや金属接合等について記載がないとしても,それらを行わ

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ない旨の積極的な記載があるわけではないから,本件発明1が,フィンのバーリング壁に実棒の位置が固定されている状態のものであるとしても,その後に鑞付けや金属接合等を行わないものであるとはいえない。
(2)  引用発明の認定について甲1の記載によれば,ピンフィンと放熱金属平板とは,嵌合によって組み立てられた状態で,放熱金属平板がピンフィンに位置決めされ,放熱金属平板の側壁部にピンフィンの位置が固定されており,このように組み立てられた中途製造物は,組み立て後に加熱炉に入れられて加熱され,鑞を溶融してピンフィンと放熱金属平板を貫通孔周囲で接合して最終製造物となるものであり,中途製造物の段階で,物として明確に認識することができる。審決は,甲1に「嵌合されて接合された」構成が開示されていることを認定した上,本件発明1の「プレス挿入」との対比において,甲1の「嵌合されて」を「フィンのバーリング壁に実棒の位置が固定されている状態を特定したもの」と認定したのであるから,引用発明に関する審決の認定に誤りはない。

▼2  相違点1に関する容易想到性の判断の誤り(取消事由2)に対し
審決が,甲2に,「ヒートパイプを使ったヒートシンクについて,フィンにバーリング加工等によって孔を設け,その孔にヒートパイプを差し込む形態が実用的であることに加え,コスト面で許されれば,熱抵抗を小さくするため,鑞接合する」旨が記載されていることから,「引用発明において,コスト面を考慮して,鑞材塗布と鑞付けによる接合を省略すること,すなわち相違点1を解消することは,甲1,2の記載から当業者が容易に想到することができた」とした判断に誤りはない。
すなわち,甲2の【0009】の記載によれば,コスト面で許されない場合や,熱抵抗を小さくする必要がない場合には,ヒートパイプを単に差し込むだけでよいことを導き出すことができる。ヒートパイプをフィンに単に差し込むことの技術的意義は,甲2の【0013】に記載されているように,甲1の「嵌

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合され」た状態と同様に,「組み立てた状態で,フィン3がヒートパイプ1に位置決めされ,フィン3のバーリング加工孔5にヒートパイプ3の位置が固定されている」ことである。

◆第5  当裁判所の判断

▼1  本件発明1及び引用発明の認定の誤り(取消事由1)について
(1) 当裁判所は,審決が,本件発明1における「プレス挿入された」とは,フィンのバーリング壁に実棒の位置が固定されている状態を意味すると認定し,他方,引用発明において「嵌合されて」とは,鑞材を塗布した放熱金属平板を加工してピンフィンと組み立てた状態を意味すると認定した点に誤りはないと判断する。その理由は,以下のとおりである。
  本件発明1の「プレス挿入された」の意味について
(ア)  本件明細書の記載の参酌本件発明1の「プレス挿入された」とは,文言どおりには,「プレス工法により挿入された」の意味であり,挿入する際の製法を限定するものと解されるが,本件発明1は物の発明であるから,それが示す物の構成を明らかにする必要がある。そこで,本件明細書の特許請求の範囲の記載を参照すると,請求項1には,「フィン群のバーリング加工孔を貫通してプレス挿入された複数の実棒」との記載があり,それによれば,「プレス挿入された」とは,フィンのバーリング加工孔を実棒が貫通しているときの状態を意味すると解されるが,それのみでは,物の構成は必ずしも明らかではないので,更に本件明細書の発明の詳細な説明の記載を参照すると,発明の詳細な説明には,次のとおりの記載がある。
「【0012】・・・本発明の第1の実施例では,バーリング加工孔10を複数個設けた・・・フィン12からなるフィン群と,上記フィン群を貫通してバーリング加工孔10にプレス挿入された・・・伝熱実棒20と,上記実棒20の一方の端部を挿入する・・・受熱プレート14から

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なるヒートシンクにより冷却システムを構成している。
【0013】この組立工法は,実棒20を径方向に自由度を持たせて治具にセットした後,フィン12の最初の一枚をプレス挿入することにより,フィンのバーリング壁に支えられ実棒20の径方向の位置と軸方向の位置が固定される。
【0014】次に順次フィン群を一枚毎または複数枚を順次プレス挿入することにより,図3のフィン群と実棒20のアッセンブリが出来上がるが,・・・【0015】工程の最後は,フィン12と同様の位置関係で開孔したバーリング加工孔10を有する受熱プレート14を,上記フィン群を貫通接合した実棒20の先端部にプレス挿入してヒートシンクは出来上がる。」特許請求の範囲の請求項1の記載に,上記の発明の詳細な説明の記載も併せ考えると,本件発明1における「プレス挿入された」とは,フィンのバーリング壁に実棒の位置が固定されている状態を指すと解される。
したがって,審決の本件発明の認定に誤りはない。
もっとも,審決は,「ただし,下記『7.』において述べるように,本件発明1~3において,実棒とフィン群がロウ付けや溶接をせずに固定されていることは,本件特許明細書の記載から自明なものと解される。」(4頁15行目ないし18行目)との記載があるが,そのような記載があるからといって,審決の他の部分の記載,すなわち,「本件発明1において,『プレス挿入された』との製法限定は,フィンのバーリング壁に実棒の位置が固定されている状態を特定したものと認められる。」(審決10頁5行目ないし7行目)と述べている点を参酌するならば,審決は,本件発明1を,最後まで鑞付けや溶接をしないものに限定したと解することはできない。


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(イ)  原告の主張に対し原告は,本件発明1の「プレス挿入された」とは,単に実棒の位置が固定されている状態をいうものではなく,実棒とフィン群を「ロウ付けや溶接をせずに」,実棒の位置が固定された状態をいうと主張する。しかし,その主張は,以下の理由により,採用することができない。
確かに,甲1,2には,熱抵抗を小さくするため,実棒(ヒートパイプ)と放熱金属平板(フィン)のバーリング孔を固定する際に鑞付けや金属接合等を行うことが記載されており,本件特許出願時には,ヒートシンクの製作に当たって鑞付けや金属接合等を行う場合のあることは技術常識であったものと認められる。そして,本件明細書の特許請求の範囲の請求項1及び発明の詳細な説明の「課題を解決するための手段」の項(【0010】)には,実棒とフィンのバーリング孔との鑞付けや金属接合についての記載はない。しかし他方で,本件明細書には,本件発明1が,実棒とフィンのバーリング孔との鑞付けや金属接合を排除するものであるとの記載もない。
本件明細書には,従来の技術,発明が解決しようとする課題について,次のとおりの記載がある。
「【0005】従来のヒートシンクの形状は,図11に示す様な櫛歯状型枠からの押し出しフィン90や,図12に示されるようなダイキャストや鍛造工法で造られるピンフィン92から成るヒートシンク,また,図13に示される構造のヒートシンク,すなわち前記図11のフィン・ピッチを広く取り,このフィンの間にコルゲートフィン94を挿入溶接した構造のヒートシンクがある。
【0006】【発明が解決しようとする課題】従来,大型でも許容出来た冷却システムでは,ファン容量を増加することにより対応してきたが,オフイス内

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の端末の増加と,AVなど音声を扱う情報増加などからファンの騒音対策が必要に成って来ていると同時に,省エネルギー観点からも望ましくない。
【0007】上述した従来のヒートシンクの形状,特に図11や図12に示されるようヒートシンクでは,何れも材料の伸びの制約からフィンのピッチを広く取る必要が有ると同時に,ファン流の通風抵抗が高く乱流発生によりファン騒音が高かった。
【0008】フィンの通風抵抗小さい高効率のフィン構造として,図13に示される構造のヒートシンクがあるが,隙間管理や溶接工程を経るなどの必要から極めて高価なもので有った。
【0009】この発明は,殆どプレス工法のみで組立可能な汎用性が高く安価な熱交換効率の良いヒートシンクを用いて,ファン騒音を低減出来る小型軽量の冷却システムを提供するものである。」上記の本件明細書の記載によれば,従来技術であった櫛歯状型枠からの押し出しフィン90からなるヒートシンク(図11)及びダイキャストや鍛造工法で造られるピンフィン92から成るヒートシンク(図12)には,フィンのピッチを広く取る必要があると同時にファン流の通風抵抗が高くファン騒音が高いとの問題点があり,フィンの間にコルゲートフィン94を挿入溶接した構造のヒートシンク(図13)には,隙間管理や溶接工程を経る必要から極めて高価であるとの問題点があったことから,これらの問題点を解決するため,本件発明は,ヒートシンクの組立方法について,上記のような従来技術の方法ではなく,殆どプレス工法のみで組立可能としたものと認められる。そして,鑞付けを行うに当たって,例えば,フィンに予め鑞材を塗布しておき,実棒との組み立て後,熱処理するなどの方法によって鑞付けを行うのであれば,製作費用はそれ程高くなることはないと解される。そうすると,プレス工

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法により製作したヒートシンクに更に鑞付けを行うことは,必ずしも,「フィンのピッチを広く取る必要がある」,「高価になる」など従来技術が有していた問題点を生じさせることはなく,むしろ,熱交換効率の高いヒートシンクを提供するという本件発明の目的の実現に資するものである。
このように,本件特許出願時には,ヒートシンクの製作に当たって鑞付けや金属接合等を行う場合のあることは技術常識であったこと,本件明細書に,鑞付けや金属接合等を排除する旨の記載はないこと,鑞付けを行うことは,本件発明の目的の実現に資するものであることからすると,本件発明は,その実施に当たって少なくとも鑞付けを排除するものではないものと認められる。
本件明細書の【0009】,【0032】には,本件発明によれば,「殆どプレス工法のみで」組み立てることができるヒートシンクを提供できることが記載されているところ,「殆どプレス工法のみで」との文言からしても,本件発明は,プレス工法の他に付加的な工作が加えられることを許容しているものと認められ,鑞付けや金属接合等を排除するものではないことが認められる。
したがって,本件発明1の「プレス挿入された」とは,実棒とフィン群を「ロウ付けや溶接をせずに」,実棒の位置が固定された状態をいうとの原告の主張は,採用することができない。
  引用発明の認定について
(ア)  甲1の記載の参酌甲1には,引用発明のとおり,放熱金属平板の貫通孔にピンフィンが嵌合されて接合されているヒートシンクが記載されている。そして,引用発明の実施例を記載した甲1の【0036】には,次のとおり記載されている。


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「【0036】なお,側壁部を有する孔17の加工は,プレス加工等で簡単に加工できる。さらに,ピンフィン2と放熱金属平板3との接合部の接触熱抵抗の低減が,本発明の放熱フィンの性能向上には必要不可欠である。この部分に空気の層ができると,その部分の熱抵抗が大きくなり,全体の放熱性能が低下する。そのために,この間は一体化していることが望ましい。最も確実なのは金属接合であるが,工業的に生産することを考えると現実的ではない。鑞付であれば組み立てた後ある一定の温度で処理すればよく,予め鑞材を塗布した金属板を加工して組み立てれば作業工程の省略ができる。」甲1の上記記載によれば,引用発明における「嵌合されて」とは,鑞材を塗布した放熱金属平板を加工してピンフィンと組み立てた状態を意味し,「接合された」とは,熱処理して鑞付された状態をそれぞれ意味するものと認められる。そして,「鑞付であれば組み立てた後ある一定の温度で処理すればよい」とされ,組み立てた後に熱処理するだけで鑞付されることからすると,「嵌合されて」との状態,すなわち鑞材を塗布した放熱金属平板を加工してピンフィンと組み立てた状態において,放熱金属平板はピンフィンに位置決めされ,放熱金属平板の側壁部にピンフィンの位置が固定されているものと認められる。したがって,引用発明における「嵌合されて」とは,鑞材を塗布した放熱金属平板を加工してピンフィンと組み立てた状態を意味し,これは,本件発明1における「プレス挿入された」との状態,すなわち,フィンのバーリング壁に実棒の位置が固定されている状態と,実質的に同じ意味であると認められるから,同旨の審決の認定に誤りはない。
(イ)  原告の主張に対しa  原告は,審決が,引用発明について,「嵌合されて接合した」との構成から「接合された」との構成を除いて,嵌合された状態であると認

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定したことは誤りであると主張する。
確かに,甲1の特許請求の範囲の請求項2には,「嵌合されて接合されていることを特徴とする」ヒートシンクの発明が記載されており,甲1の実施例にも,嵌合され接合されたヒートシンクが記載されている。しかし,前記(ア)のとおり,甲1の記載から,嵌合された後で接合される前の状態を明確に認めることができるから,そのような状態を,本件発明1における「プレス挿入された」との状態と対比することは不合理とはいえない。また,甲1の「嵌合されて接合されていることを特徴とする」との記載は,引用発明を上記のような状態のものと認定した上で本件発明1と対比することの妨げにはならないというべきである。したがって,原告の上記主張は,採用することはできない。
  また,原告は,仮に,甲1に記載された引用発明を,製造工程における中間形態である嵌合されたものとして把握するとしても,そこにいう「嵌合されて」とは,「鑞材を塗布した放熱金属平板を加工してピンフィンと組み立てた状態」を意味するから,引用発明と本件発明1とは,鑞材の有無の点において相違すると主張する。
しかし,鑞付けをする場合に放熱金属平板に鑞材を予め塗布し,鑞付けをしない場合に鑞材を省略することは,自明のことであり,熱処理前の段階において,鑞材の塗布の有無は,放熱金属平板(フィン)
とピンフィン(実棒)の位置関係及び固定状況に影響を与えることはない。熱処理前の段階における,鑞材を塗布した放熱金属平板を加工してピンフィンと組み立てた状態(引用発明における「嵌合されて」)
と,フィンのバーリング壁に実棒の位置が固定されている状態(本件発明1における「プレス挿入された」)とでは,放熱金属平板(フィン)
とピンフィン(実棒)の位置関係及び固定状況において相違はないか

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ら,引用発明における「嵌合されて」と本件発明1における「プレス挿入された」は,実質的に同意になるとした審決の判断に誤りはなく,原告の上記主張は,採用することができない。
(2)  以上によれば,審決が,本件発明1における「プレス挿入された」とは,フィンのバーリング壁に実棒の位置が固定されている状態を意味するとし,他方,引用発明において「嵌合されて」とは,鑞材を塗布した放熱金属平板を加工してピンフィンと組み立てた状態を意味するとした認定に誤りはなく,これらの認定を前提として,引用発明における「嵌合されて」と本件発明1における「プレス挿入された」とは実質的に同意になるとした判断に誤りはないものと認められる。

▼2  相違点1に関する容易想到性の判断の誤り(取消事由2)について
(1)  当裁判所は,審決が,甲2に,「ヒートパイプを使ったヒートシンクについて,フィンにバーリング加工等によって孔を設け,その孔にヒートパイプを差し込む形態が実用的であることに加え,コスト面で許されれば,熱抵抗を小さくするため,鑞接合する」旨が記載されていることから,「引用発明において,コスト面を考慮して,鑞材塗布と鑞付けによる接合を省略すること,すなわち相違点1を解消することは,甲1,2の記載から当業者が容易に想到することができた」とした点に誤りはないと判断する。その理由は,以下のとおりである。
  甲2の記載について甲2は,フィンと,そこに差し込まれたヒートパイプから構成されるヒートシンクに係る発明(請求項の数4)が記載されているが,いずれの請求項にも,フィンとヒートパイプを,溶接法,鑞接合,半田接合などで接合することの記載はない。そして,次のとおりの記載がある。
「【0009】フィンとヒートパイプの取り付け方法は,特に限定はないが,フィンにバーリング加工等によって孔を設け,その孔にヒートパイプ

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を差し込む形態が実用的である。もちろんヒートパイプとフィンとの熱抵抗は小さいことが望ましいので,コスト面で許されれば,単に差し込むだけでなく,例えば溶接法を併用して,より熱抵抗を小さくさせることは有効である。溶接法の他,ろう接合,半田接合等もある。またフィンの取り付け強度を高める意味でヒートパイプの差し込み部を接着剤等で接着しても構わない。」上記の甲2の記載によれば,フィンと,そこに差し込まれたヒートパイプから成るヒートシンクにおいて,フィンにバーリング加工等によって設けられた孔にヒートパイプを差し込んだ上,コスト面で許されれば,熱抵抗を小さくするために鑞接合をすることもあるが,コスト面で許されない場合は,フィンの孔にヒートパイプを差し込んだ状態で,フィンとヒートパイプの取り付けが完了することが認められる。そして,フィンにヒートパイプを差し込んで鑞接合するという上記の製造工程は,鑞材を塗布した放熱金属平板を加工してピンフィンと組み立て,熱処理して鑞付けする工程,すなわち引用発明の,放熱金属平板にピンフィンを嵌合して接合するという製造工程を,その一態様として含むものと認められる。そうすると,引用発明において,鑞接合を省略し,放熱金属平板への鑞材の塗布と熱処理を行わずに,フィンのバーリング壁に実棒の位置が固定されている状態,すなわち本件発明1の「プレス挿入された」状態とし,相違点1に係る本件発明1の構成(実棒がフィン群に「プレス挿入された」ものであること)
を実現することは,容易に想到することができたものと認められる。
したがって,審決が,引用発明において,コスト面を考慮して,鑞材塗布と鑞付けによる接合を省略すること,すなわち相違点1を解消することは,甲1,2の記載から当業者が容易に想到することができたとした判断に誤りはない。
  原告の主張に対し

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(ア)  原告は,甲2の【0009】の記載からすると,鑞接合しない状態では,パイプをフィンに差し込んだのみで,熱抵抗が大きい状態であり,本件発明1のようなプレス挿入した状態とは異なるため,甲2の【0009】の記載に基づいて,金属接合や鑞付け等を排除して引用発明が認定されることはないと主張する。
しかし,甲2の【0009】の記載によれば,コスト面で許されない場合は,フィンの孔にヒートパイプを差し込んだ状態で,フィンとヒートパイプの取り付けが完了することが認められるから,そのような状態では,溶接法,ろう接合,半田接合等による接合を用いるときほど熱抵抗が小さくならないとしても,ヒートシンクとして用いることができる程度に熱抵抗が小さくなるものと認められ,原告の上記主張は,採用することができない。
(イ)  また,原告は,仮に,甲2の【0009】の記載に基づいて,金属接合や鑞付け等を排除した状態における引用発明を認定したとしても,それは,嵌合された状態にとどまり,本件発明1のプレス挿入された状態とは異なると主張する。
しかし,前記1(2)のとおり,引用発明における「嵌合されて」と本件発明1における「プレス挿入された」とは実質的に同意になるとした審決の判断に誤りはないものと認められるから,原告の上記主張は,採用することができない。
(ウ)  原告は,引用発明は,鑞材塗布と鑞付けによる接合が必須の要件であるから,このことは,鑞材塗布と鑞付けによる接合を省略することに対し,阻害事由となると主張する。
しかし,前記1(1)イ(イ)のとおり,甲1の特許請求の範囲の請求項2と実施例には,嵌合されて接合されたヒートシンクが記載されているものの,甲1の記載により,嵌合された後で接合される前の状態は

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明確に認めることができる。そして,甲2の【0009】の記載によれば,鑞付け等による接合の有無は,コストと熱抵抗との関係で決められる設計的事項にすぎないものと認められるから,引用発明は,鑞材塗布と鑞付けによる接合を省略することに対し,阻害事由とはならないものと認められ,原告の上記主張は,採用することができない。
(エ)  さらに,原告は,①甲2記載の発明においてフィンに形成された孔に挿入されるのは,実棒ではなくパイプであり,パイプは,変形の度合いが大きいから,単にフィンに形成されたバーリング加工孔に差し込むだけでも,熱抵抗の低減を図ることができること,②これに対し,実棒は,パイプと比較すると剛性が高く撓みにくいため,各フィンのバーリング孔に位置ずれがあると,径方向への変形が困難であり,バーリング加工孔との空隙が生じやすくなり,空隙が生じると熱抵抗が高くなるため,接合することが必要とされたこと,③そのため,甲2において,パイプについて接合が不要であるとしても,そのことから直ちに,実棒についても接合が不要であるということはできず,フィンのバーリング加工孔に実棒をプレス挿入するという本件発明1の構成を着想することは困難であったことを主張する。
しかし,パイプの方が実棒よりも形状追随性に優れているとしても,挿入物とフィンの密着性が高まりそれによって熱抵抗が低減するか否かは,挿入物の形状追随性だけではなく,バーリング加工孔の大きさ・形状,孔側面の態様,挿入物の断面形状,フィンと挿入物の材質等様々な要因により左右されるものと考えられ,一概に,実棒の方がパイプに比べてバーリング加工孔との空隙が生じやすく,熱抵抗が高くなるともいい切れない。そのため,パイプでなく実棒であることは,鑞接合を省くことについて阻害事由とならないと解される。そうすると,甲2において,フィンにヒートパイプを差し込むヒートシンクについて,コストが

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許されない場合に鑞接合しないものが記載されていることから,フィンに実棒を差し込むヒートシンクについて鑞接合しないことも,容易に想到することができたものと認められ,原告の上記主張は,採用することができない。
(2)  以上によれば,審決が,甲2に,「ヒートパイプを使ったヒートシンクについて,フィンにバーリング加工等によって孔を設け,その孔にヒートパイプを差し込む形態が実用的であることに加え,コスト面で許されれば,熱抵抗を小さくするため,鑞接合する」旨が記載されていることから,「引用発明において,コスト面を考慮して,鑞材塗布と鑞付けによる接合を省略すること,すなわち相違点1を解消することは,甲1,2の記載から当業者が容易に想到することができた」と判断した点に誤りはないものと認められる。

▼3  結論
以上のとおり,原告主張の取消事由はいずれも理由がない。原告は,その他縷々主張するが,審決にこれを取り消すべきその他の違法もない。
よって,原告の本訴請求を棄却することとし,主文のとおり判決する。


知的財産高等裁判所第3部裁判長裁判官
飯村敏明

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裁判官
中平健裁判官上田洋幸は,転補のため,署名押印することができない。
裁判長裁判官
飯村敏明


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