■ジェネリック

■Pay-for-delayに関する米国最高裁の判決(ブランド薬メーカーを反トラスト法で当局が訴訟することを承認)


医薬ニュースを紹介します。


最近のトレンドとして、ジェネリック医薬販売会社がブランド医薬の特許無効を訴えた場合、ブランド医薬販売会社がブランド品の販売延長をするために、ジェネリック医薬販売会社に逆に補償金を払うというプラクティスがありました(pay-for-delay, or reverse payments)。しかし、これは患者と保険機構が高価なブランド品を購入・支払することを意味します。

今回の米国最高裁の判決では、5対3(棄権1)で、当局がブランド医薬販売会社を反トラスト法違反で訴訟することを容認するという判断を示しました。これにより、ジェネリック医薬の市場投入が促進され、価格競争が激しくなることが予想されます。(提供:SKIP 宍戸知行弁理士)

New York Times (June 17, 2013)
http://www.nytimes.com/2013/06/18/business/supreme-court-says-drug-makers-can-be-sued-over-pay-for-delay-deals.html?hp&_r=0

■アクトスの併用: 平成23年(行ケ)第10146号、同第10147号審決取消請求事件


<判決紹介>

平成24年4月11日判決言渡 知的財産高等裁判所
原告: 沢井製薬株式会社
被告: 武田薬品工業株式会社
請求項1: ピオグリタゾンまたはその薬理学的に許容しうる塩と,ビグアナイド剤とを組み合わせてなる,糖尿病または糖尿病性合併症の予防・治療用医薬。
請求項7: 0.05~5mg/kg 体重の用量のピオグリタゾンまたはその薬理学的に許容しうる塩と,グリメピリドとを組み合わせてなる,糖尿病または糖尿病性合併症の予防・治療用医薬。

コメント: アクトス(一般名:ピオグリタゾン塩酸塩)とビグアナイド剤との併用、又はアクトスとグリメピリドとの併用に関する判決。 実施可能要件・サポート要件あり、進歩性なし。 審決取消。
なお平成23年(行ケ)第10148号審決取消請求事件では、アクトスとα-グルコシダーゼ阻害剤の併用について、同じような内容で新規性/進歩性なしと判断されている。

▼①実施可能要件(本件発明1~9)
併用に用いる薬剤の製法が明細書に記載されていなかったが、技術常識で製造できるので、実施可能要件を満たすと判断された。

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裁判所: 「そして,本件各発明が実施可能であるというためには,本件明細書の発明の詳細な説明に本件各発明を構成する各薬剤等を製造する方法についての具体的な記載があるか,あるいはそのような記載がなくても,本件明細書の記載及び本件出願日当時の技術常識に基づき当業者が本件各化合物を製造することができる必要があるというべきであるところ,前記1(1)に記載のとおり,本件明細書には,ピオグリタゾン,ビグアナイド剤及びグリメピリドの製造方法については記載がないものの,前記1(4)に認定のとおり,NIDDMに対する薬剤としてピオグリタゾン,ビグアナイド剤及びグリメピリドが存在し,かつ,ビグアナイド剤にはフェンホルミン,メトホルミン又はブホルミンが存在することは,本件出願日当時の当業者の技術常識であったから,これらの各薬剤や,ピオグリタゾンの薬理学的に許容し得る塩は,いずれもその当時,NIDDMに対する薬剤として既に製造可能となっていたことが明らかである。 したがって,本件明細書は,本件発明1,2,3及び7について,実施可能要件を満たすものであることが明らかである。
…。 他方,本件審決は,本件発明1ないし6について本件明細書に実施可能要件の違反があると結論付けているが,その理由と目される部分は,専ら後記のサポート要件の適否を説示したものであって,実施可能要件について説示したものとは思われない。
よって,本件発明1ないし6について本件明細書が法36条4項に違反するとした本件審決の判断は,その理由を形式的にも実質的にも欠くものとして到底是認することができず,被告の取消事由3の主張のうち,この点に関する本件審決の判断の誤りをいう部分は理由がある。」
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▼②サポート要件(本件発明1~9)
併用の実施例がなかったが、技術常識により当業者が本件各発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるととして、サポート要件を満たすと判断された。

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裁判所: 「本件明細書は,前記1(1)エに記載のとおり,ピオグリタゾンと併用すべきビグアナイド剤としてフェンホルミン,メトホルミン又はブホルミンを明記しているものの,前記1(2)に認定のとおり,ピオグリタゾンとビグアナイド剤との併用実験に関する記載はなく,その記載のみからは,直ちに本件発明1ないし3が本件各発明の前記課題を解決できると認識できるとは限らない。
・・・。 作用機序が異なる薬剤を併用する場合,通常は,薬剤同士が拮抗するとは考えにくいから,併用する薬剤がそれぞれの機序によって作用し,それぞれの効果が個々に発揮されると考えられるところ,糖尿病患者に対してインスリン感受性増強剤とビグアナイド剤とを併用投与した場合に限って両者が拮抗し,あるいは血糖値の降下が発生しなくなる場合があることを示す証拠は見当たらない。
・・・。 以上によれば,当業者は,インスリン感受性増強剤であるピオグリタゾン又はその薬理学的に許容し得る塩の投与により血糖値の降下を発生させる場合に,併せてこれとは異なる作用機序で血糖値を降下させるビグアナイド剤であるフェンホルミン,メトホルミン又はブホルミンも投与すれば,ピオグリタゾンとは別個の作用機序で,やはり血糖値の降下を発生させることができ,もって本件各発明の課題である糖尿病に対する効果が得られることを当然想定できるものというべきである。
(ウ)したがって,本件明細書の記載は,本件出願日当時の技術常識に照らすと当業者が本件各発明の前記課題を解決できると認識できる範囲内のものであるから,本件発明1ないし3は,本件明細書に記載されたものであるということができる。」
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▼③進歩性(本件発明7~9)
下記の点が考慮された上で、進歩性なしと判断された。
 ・審決の引例3の認定に誤りがある(引例3には併用が書いてある)。
 ・作用機序が異なる薬剤を併用する場合、通常は、薬剤同士が拮抗するとは考えにくい。引用例1ないし4及び乙17(甲22)の記載によれば、少なくともいわゆる相加的効果が得られるであろうことまでは当然に想定するものと認められる。
 ・本願明細書に本件発明7~9の併用(ピオグリタゾンとグリメピリド(SU剤))の作用効果の記載はない。
 ・SU剤であるグリベンクラミドとの併用投与による作用効果についても、相加的効果にとどまり、相乗効果はない。

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裁判所: 「以上のとおり,引用例3の図3には,「ピオグリタゾン又はその薬理学的に許容し得る塩と,グリメピリドとを組み合わせてなる,糖尿病又は糖尿病性合併症の予防・治療薬」という発明が記載されているものと認められ,その結果,本件審決が認定した本件発明7との相違点1は存在しないものというべきである。
…。 ア  被告は,本件優先権主張日当時,糖尿病の薬物治療においては,異なる作用機序の薬剤を併用して用いれば例外なく,相加的又は相乗的な効果が必ずもたらされ るとは認識されていなかったところ,引用例1ないし4には,ピオグリタゾンと他の薬剤との併用により効果の高い治療が可能となるかもしれないという期待が 記載されているにとどまり,乙17(甲22)の記載からも明らかなとおり特許性を論じる場合に必要とされる「併用効果」の記載がない一方で,本件明細書に は,ピオグリタゾンとSU剤であるグリベンクラミドとの併用投与が単独投与よりも優れているという当該「併用効果」の記載があるし,乙25及び26はこれ を裏付けるものである旨を主張する。
しかしながら,前記(1)ア(ウ)に認定のとおり,作用機序が異なる薬剤を併用する場合,通常は,薬剤同士が拮抗するとは考えにくいから,併用する薬剤が それぞれの機序によって作用し,それぞれの効果が個々に発揮されると考えられる。そのため,併用投与によりいわゆる相乗的効果が発生するか否かについての 予測は困難であるといえるものの,前記(1)イ(ア)に認定のとおり,引用例1ないし4及び乙17(甲22)の記載によれば,本件優先権主張日当時の当業 者は,これらの作用機序が異なる糖尿病治療薬の併用投与により,少なくともいわゆる相加的効果が得られるであろうことまでは当然に想定するものと認められ る。したがって,被告の前記主張は,その前提に誤りがある。
…。 さらに,前記(1)イ(イ)に認定のとおり,本件明細書は,ピオグリタゾンとグリメピリドとの併用投与による作用効果についての記載がないばかりか,塩酸ピオグリタゾンとSU剤であるグリベンクラミドとの併用投与による作用効果についても,当業者が想定するであろういわゆる相加的効果を明らかにするにとどまり,当業者の予測を超える顕著な作用効果(いわゆる相乗的効果)や,あるいは原告の主張に係る「併用効果」なるものを立証するに足りるものではない。したがって,本件明細書には,本件発明7の作用効果の顕著性を判断するに当たり,被告が援用する乙25及び26(被告所属の技術者が作成した実験成績証明書)の記載を参酌すべき基礎がないというほかない。」
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